イケメンに生まれ変わったので、諦めていた幼馴染ヒロインとの最高のラブコメを実現したいと思います

白玉ぜんざい

プロローグ


 ――おぎゃあ、おぎゃあ。


 ふと目を覚ますと、眼前には黒髪ロングの美女がこちらを覗き込んでいた。


 ――おぎゃあ、おぎゃあ。


 母性溢れる、慈愛のこもった笑みを見せる。まるで自分の子供に微笑みかけているようだ。

 

「あなたの名前は颯斗よ」


 そっと涙を拭うような優しい声色で、美女はそんなことを言った。


 ――おぎゃあ、おぎゃあ。


 ところで。


 ここはどこだ。

 それに体が思うように動かない。まるでVR主観のアダルトビデオを観ているようだ。


 どうしてこんなことをしているのか分からない。

 よくよく考えてみると、いろんな記憶が曖昧だった。なんだか頭の中が霧にまみれているよう。


 ――おぎゃあ、おぎゃあ。


「俺達のもとへ生まれてきてくれてありがとう。颯斗」


 俺を抱きかかえていた美女は、隣にいたイケメンの男に俺を渡した。なんだ『俺を渡した』って。俺はモノか。自分で自分にツッコんでしまう。


 いやいやちょっと待て。

 このイケメン男はさっきなんて言った?


 生まれてきてくれてありがとう?


 その言葉は確実に俺に向けられていた。

 だとすると、俺が今生まれてきたみたいじゃないか。こんなにも意識がはっきりしているのに。


 これはあれか?

 やっぱりゲームか?


 ――おぎゃあ、おぎゃあ。


 よくできた、人生やり直し系のVRゲームかな。だとしたら、よくできている。グラフィックとか綺麗すぎる。まるで現実だ。


 いやこれ現実ですね。


 ――おぎゃあ、おぎゃあ。


 さっきからずっと聞こえているこの耳障りな泣き声は俺のものですね。どうやら赤ん坊になってしまっているらしい。


 目が覚めたばかりだからか、記憶が曖昧でほとんどのことは覚えていないけれど、何となく今の自分の状況がどういうものかは不思議と理解できた。


 つまり、あれだ。


 転生ってやつだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る