隕石が落ちるまで

えんぺら

隕石が落ちるまで

世界に隕石が落ちていくそれを一人の男が眺めている。そこはどこか見覚えのある景色だった。

そんなことを思っている私にその男は背中を向けたままこう言った。

「この光景は今から10日後に起こる現実だ。止める方法は君の右手に刻まれた数字がゼロになる前にこの僕を見つけて出して殺すこと。あははっこれは僕と君が世界をかけて遊ぶ楽しいゲームだ!」

男は背を向けたまま腕を広げ、楽しそうに笑う。

「ここで、攻略に役立つ情報を君にあげるからよく聞いてね。右手に刻まれた数字の数は僕が夢を見せる人数を示していて僕はその人たちに夢の中で最善の行動を教える。そしてこの人たちのなかで目覚めてから24時間以内に最善の行動を取らなかった人の数だけその数字が減るって仕組みになってる。後は選ばれる人は君が暮らしてる街の人からにしてあるよ。今言ったことは大事なことだからよく覚えておいてね。じゃあそろそろ始めようか!」

男はそう言って手をパンッと叩いた。


「世界が滅ぶってなに!」

夢を見ていた本人ことエリーはガバッとベッドから起き上がった。

「今のは夢?はぁ~っよかったぁ夢か~。」

それからエリーはベッドから降り、部屋のドアを開けるためにドアノブに手を掛けたところで凍りついた。

「えっ嘘…。」

ドアノブに掛けられている右手の甲には淡く光る数字が刻まれていた。

「レイア様~。私の手にこんなものが~。」

エリーは自室から出るとリビングにいる鱗で覆われた尻尾の生えた女性にそう言いながら突撃する。

「あわわっちょっちょっと待ってください!ふぐっ!」

レイアと呼ばれた女性はあたふたした後、エリーの突撃を正面から受け止める。

「見てください!私の手にこんな数字が~!どうやらこの数字がゼロになる前にある人物を見つけ出さないといけないらしいんです!それとこの数字はこの街の人が夢で教えられた行動をしないと減るみたいです!」

エリーは夢で見たことを一気に話す。

「ちょっと情報量が多いですよ~。えっ世界滅ぶんですか!」

「あと10日後以内に見つけられなくても滅びます。滅ぶときはレイア様には私に熱い抱擁しながらでお願いします。」

「いっいやですよ。というか滅ばないようになんとかしましょうよ!」

レイアは胸の中にいるエリーを引き剥がすとエリーの目を見て言う。

「私はレイア様の胸の中で世界の終わりを迎えるならそれも良いと思ってますよ!」

それなら悔いはないと言わんばかりの笑顔で答える。

「良くないですよ~エリーは一応聖女なんですから世界救いましょ!あと重いです!」

レイアは首を横にふりながら恐ろしいことを言っているエリーの説得を試みる。

「え~!そんな~!重いですか?」

「え~じゃないです!あとしっかり重いです!」

「そうですか…はあレイア様に重いと思われるのは嫌ですし、しょうがないから世界救いますか。」

少し悲しそうにうつむいたあとため息をついたエリーは世界を救う決意をする。

「そうですよ!私も手伝いますから一緒に頑張りましょう!」

レイアも拳を握って胸の前に持ってくると決意を口にした。

その後、二人で朝食を済ませる。

「レイア~。頼まれてたやつできたぞ~!」

二人が食器を片付けていると玄関から男の声がした。

その声を聞いたエリーは食器を置くと玄関のほうへ全力疾走していった。

「レイア様でしょうがこのバカ!様をつけなさいあの方はこの国の守護竜よ。」

「おおっそんなに怒るなよ、でもレイアが呼び捨てでいいって言ってくれたんだよ。」

「それでもつけなさいよ、この引きこもり居候鍛冶師!」

エリーは男を指差してそんなことを言い放つ。

「なんだとって言いたいところだけど全部事実なんだよなぁ。」

男は頬をかきながら苦笑いを浮かべる。

「しかもあなた、あんまり使ってなかったとはいえ、うちの教会の倉庫を勝手に改造して住んだことも許してないんだからね。こんな失礼な人、幼なじみじゃなかったら今頃追い出してるところよ!」

「その件については申し訳ありません。ちょっと家で工作してたら爆発しまして…えっと住むところがなかったもので…追い出すのは勘弁してください。」

男は頭を下げる。

それを見たエリーはニヤリと笑うと男を見て言う。

「悪いと思ってるなら私の用事を手伝いなさい。」

「あんまり外に出たくないんですが…」

男はこの期に及んでボソッと反抗する。

「フフッ追い出すわよ」

エリーは笑顔だが目が笑っていない。

「はい…手伝います。」

それを見た男は背筋を伸ばして即答する。

「よろしい!」

「レイン!頼んでたものができたというのは本当ですか!」

二人がそんなやり取りをしていると食器を片付け終えたレイアがエリーの後ろからひょっこりと顔を出す。

「ああっできたぞレイア…様、これです。」

レインはいつもの調子で返そうとした、しかしエリーから殺気的ななにかが出ていることに気付き慌ててレイアと言った後に様をつけ加える。

「様はつけなくていいですよレイン。いつもの感じでもう一回やり直してください。」

それを聞いたレイアは頬を少しプクーっと膨らませるとやり直しを要求する。

「えーと…でっできたぞレイア。これだ。」

レインの言葉はエリーとレイアの無言の圧力に板挟みにされ少しぎこちない。

「おおっかっこいいですね!」

レインの渡してきた棒状のものを受け取ったレイアがキラキラした目でそれを見る。

「レイア様、それって剣ですか?」

「はい、そうですよ。刃のついてないレプリカですけどね。」

「好きなんですか?」

「はいっ!かっこいいので好きですよ。これもレインと何度も打合せして鞘のデザインまで決めて作ってもらったんです!レイン本当にありがとうございます。大事にしますね。」

レイアはレインに向けてとびっきりの笑顔でお礼を言うと鞘に収められた剣を宝物のようにぎゅっと抱く。

「俺も楽しかった、またいつでもやろうぜレイア!」

レイアの言葉にレインも笑顔で答える。

「ぐぬぬっ私だけなんか仲間はずれです。なんですか、私といるときはそんな顔したことないのに。もうこうなったらやってやります!」

レインとレイアのやり取りを聞いていたエリーは悔しがったと思えば悲しみ、そして悲しんだかと思えばやる気の炎に燃えるという流れを経た後、玄関の扉に手を掛けたまま振り向いて言う。

「レインあなたはこの街が一望できる山の場所を巡って怪しい人物を探しなさい。レイア様は戦闘能力ほぼ皆無の引きこもりのお守りをお願いします。私は街に行って皆さんに協力してもらえるように頼んできます。」

「あとレイア様、私が世界を救ったらいっぱい褒めてくださいね。」

「はい、任せてください!」

レイアはにっこり笑うとエリーの頼みを快諾する。

「ふふっ言質取りましたよ。ではいってきます!」

嬉しそうにそう言って扉を閉め、エリーは街のほうへと走っていった。

「行ってしまいましたね、レイン!私たちも自分のするべきことをやりに行きましょう。」

「そうだな、行こう。」

二人はお互いに頷くと山に行く準備を終えた後、出発する。


街中でエリーは街の人に頼んで回っていた。

店番中の女性に頼む。

「ありがとうございます。他の人にもできれば伝えてください。」

「わかりました。聖女様!なるべくたくさんの人に伝えておきます!」

公園で遊んでいる子供に頼む

「今日の夜見た夢、覚えてなかったら明日からでいいからやってくれるとお姉ちゃん嬉しいな!」

「わかった!今日のは忘れちゃったけど、お姉ちゃんから言われたとおり明日からやってみるね!」

「ありがと~!」

荷物を運んでいる男性に頼む。

「そういうわけで、夢で教えられた行動をできる限りその日のうちにやってもらうことってできますか?」

「任せといてくれ!聖女様!他のみんなにも伝えとくよ。」

「ありがとうございます!」


場面は変わって山の中。

レイアとレインは登山道を歩いていた。

「レイア、大丈夫か?きつくないか。」

レインが自分の後ろで山道を歩き続けるレイアに声をかける。

「大丈夫ですよ、私は竜なので人より頑丈ですから!」

レイアは自分の胸に手を当ててそう言う。

その姿はなんだか少しだけ得意げだった。

「そっか、ならよかった。というか街を見渡せる場所を順番に回ってるけど見つからないなぁ、実際に景色を見たエリーを連れてきた良かったんじゃないか。」

レイアの得意げな様子に頬を緩めた後、レインは地図を取りだしそれとにらめっこしながらそんなことを呟く。

「まあ数字が失くなるとダメらしいので今日の判断は良いと正解だと思いますよ。なにせ街の人を説得するのにあの子以上の適任はいませんから。」

「あーまあそれはそうだな。」

「さあ私たちも頑張りましょう。」

二人はその後も地図にマークした場所を丁寧に確認して回った。


5日目の昼の教会内

「見つからないなぁ。」

「見つからないですね。」

「見つからないわね。」

教会の椅子に座ってレイン、レイア、エリーの三人はぼやく。

「エリーのお陰で夢のほうはなんとかなってますけど場所がわかりませんね。」

レイアは隣に座っているエリーの手を見ながら言う。

「街の皆さんが協力してくれてるのでこっちはもう問題ないんですけど、場所のほうは範囲が広すぎるんですよね。このままのペースだと間に合わないです。もうレイン!あんたなんかないわけ!」

レイアの言葉に返事を返した後、エリーはレイアを挟んで向こう側に座っているレインに問いかける。

「言われなくても今考えてる。お前もなんか考えろよ。」

「言われなくても考えてるわよ!」

「うーん、なにか良い解決策ありますかね~。」

こんな調子で三人は今日は朝から頭を悩ませていた。

それから時間が経ち、外が真っ暗になった頃

「あ~!そうだあいつならわかるかも!」

突然レインが大声で呼ぶ。

他二人がビクッとした。

「びっくりしたぁ…ちょっとレイン!いきなり何よ!」

「レインなにか思いついたんですか!?」

エリーはレインに文句を言い、レイアは問題の解決を期待してレインの肩を両手で掴み、前後にぶんぶんと揺さぶる。

「ちょっ揺すらないでくれレイア!説明するから!」

「ごめんなさい。」

レイアは肩から手を離し、レインを揺さぶりから解放する。

「じゃあよく聞いてくれ。場所がわかるかは置いといて範囲自体は絞れるかもしれない。」

「それでもだいぶ楽になりますよ!」

「そうですね、だいぶ楽になります。今までは範囲さえ絞れていないので。それでレインどうするの?」

エリーがレインに説明しろと話を促す。

「行動を起こす前にエリー1つ聞いてもいいか?エリーは夢の景色を覚えてるか?」

レインは人差し指を立てて1つというジェスチャーを作るとエリーに問いかける。

「ええ覚えているわ。夢だと信じられないくらい鮮明にね。」

質問に対してエリーは即答する。

「ならいけるかもしれない。二人とも俺について来てくれ。」

レインはいたづらを仕掛ける子供のようにニヤッと笑うと立ち上がる。

「でももう夜ですよ。」

「ああ大丈夫、今から行くところは日が落ちてからのが都合が良いから。」

「それならさっそく行きましょう。レイン案内しなさい。」

「任せろ!」

そんなこんなで三人は教会を出ていく。


レインが二人を連れてきたのは街中にある民家の1つだった。

「ついた。おーいジン!いるか~。」

コンコンとドアをノックしながら家の中にいる人物を呼ぶ。

「誰だよ、もう夜だぞ。」

「夜だぞってお前、朝は全然起きないし昼過ぎは起きてすぐどっか行って夜まで帰って来ないからお前と会うならこの時間帯しかないだろ。」

玄関から出てきたジンとレインが挨拶がてら言葉を交わす。

「おーレインじゃないか、半年間見かけなかったけどどこにいたんだよ!」

「まあいろいろあってな。今はそんなことよりお前に頼みたいことがある。」

「頼みたいこと?なるほどそれが訪ねてきた理由か、それじゃあ話は中で聞こうか。そちらの聖女様とお姉さんもどうぞ。」

ジンはそう言ってレイン、エリー、レイアの三人を家に招く。

「ありがとうございます。」

「お邪魔します。」

三人はジンの家に入る。

「それで僕に頼みたいことって?」

「頼みたいことはエリーにお前の風景写真のコレクションを見せてほしい。できれば山から街を撮ったもので頼む。」

「なるほど、それなら僕に任せてくれ。」

ジンは笑顔でレインの頼みを了承すると部屋にある本棚から写真のまとめられた冊子を取り出しそれをエリーに渡す。

「聖女様、これが山から街を撮ったものです。」

「ありがとうございます。」

冊子を受け取るとエリーはさっそく開いて写真に目を通し始める。

「あ~!ここ、ここよ!」

しばらくしてエリーは冊子から顔を上げて言う。

「ジン、この写真撮った場所わかるか。」

「何番の写真?」

「えっと1203番ですね。」

「えーと…1203番は…ここか。ちょっと待ってて。」

ジンはポケットから手帳を取り出すとパラパラとめくりあるページで手を止めると三人に待つように言った後、隣の部屋に引っ込み数分後に出てきた。それからエリーに1枚の紙を渡す。

「これあげますよ聖女様、その写真の撮った場所をこの地図にマークしたものです。」

「ジンさん、本当にありがとうございます。」

エリーはお辞儀をしてお礼を言う。

「どういたしまして、僕も聖女様のお役に立てて嬉しいですよ。」

「ありがとうございます!ジンさん!」

レイアもエリーに続きお礼を言う。

「俺からもお礼を言わせてくれ。ありがとうなジン!」

「うーんお前からのお礼はくすぐったいからやめてくれよ。その代わり今度なんかおごってくれ」

ジンはいらないいらないと手を振ってやめてくれと言う。

「了解!」

それから三人はジンと別れて帰宅する。

場所の捜索は明日の朝からということになった。


翌日の朝、さっそく三人はジン教えてもらった場所に向かう。

「ここか?」

「ここみたいですね。」

「うん、夢で見た景色はここっぽい。」

レインとレイアは地図を確認し、エリーは夢で見た景色を思い出しながら回りを眺める。

そしてどうやら夢の場所はここで間違いなさそうだった。

その証拠に隅のほうにある岩になにかが腰かけてそれを眺めていた。

「やあエリー、思ったより早かったね。どうやら君は僕が思っていたより優秀のようだ。」

岩に腰かけていた人物は飛び降りると振り返ってニコリと笑う。

「さて、見つけるという条件と数字の条件は見事達成、残る条件は僕を殺すことだね。」

「ちょっと待て、そこの不気味なやつ。こんなことしてお前は何がしたいんだよ。」

「ああ君はエリーの友達か、何がしたいってうーん僕から教えて上げても良いけど、僕から聞くよりそこの守護竜に聞いたほうが早いと思うよ。久しぶりだねレイア!」

男はレイアを指差して楽しそうに嗤った。

「くっ…できればあなたとはもう会いたくなかったですよ。異世界から来た侵略者。」

侵略者と呼ばれた男を見るレイアの表情は苦虫を噛み潰したようだった。

「ははっ僕にはテロスってちゃんとした名前があるんだけどなあ。」

「うるさいですね、侵略者の名前なんてどうでも良いんですよ。エリー!竜化してその男を排除します。私の枷を外してください!」

レイアはエリーに向かって叫ぶ。

「わかりました!」

エリーはポケットから手のひらサイズのケースを出すとそこから針を1本取り出し、それを自分の左手の親指に刺す。

針をしまうとそれから首から下げているペンダントの赤い宝石部分を右手に持って支え、そこに血のにじみ出る左手の親指を押し付け叫ぶ。

「聖女たる私がここに命じます!守護竜よ世界にの敵を討ち滅ぼしなさい!」

エリーの持っているペンダントのは待っている赤い宝石が光輝くと同時にレイアが光に包まれる。

レイアを包む光源がだんだんと大きくなるにつれて赤い宝石の輝きを増していく、一際明るく輝いたあと光は次第に弱くなりレイアのシルエットを浮かび上がらせ、そしてレイアの姿がはっきりと見えるようになる。

その姿は守護竜と呼ぶにふさわしい姿だった、大きな翼に全身を覆うローズクォーツのような薄紅色の鱗、そして戦意のみなぎる瞳。

レイアは息を吸い込むとテロスに向けて青色の炎を吐く。

「またそのトカゲの姿か~。つまらないなぁ。」

青い炎がテロスに届くという距離に迫った次の瞬間、見えない壁があるように炎が阻まれる。

「そんな炎は届かないよ、前にもやったじゃないか。本気で来てよ、もっと僕を半殺しにしたあのときみたいに!そうじゃなければつまらない!そのために僕はこのゲームに前とほぼ同じ条件を設定したんだから!」

そう言ってテロスは笑いながら前へと力強く地面を蹴ってレイアとの距離を一気に詰める。

「ぐはっ…げほげほ」

レイアは迎え撃とうと腕を振り下ろそうとするが、その前に懐に入られテロスに回し蹴りを喰らってしまい、レイアが苦しそうに顔を歪ませる。

「もうわかったでしょ。力が強いだけのその姿じゃ僕には勝てないんだ。いい加減抜きなよあの時みたいに人の姿であの剣をさ。」

テロスは少しいらだったようにレイアに告げる。

「あの剣はもう」

「レイアあるぜ!今エリーに協力してもらって準備ができた。ほら受けとれよ。」

あの剣はもう折れてしまったと言おうとしたレイアの言葉を遮ってレインが剣を差し出してくる。

「あるんですか!?どうして?」

「俺が打って、今エリーに最後の仕上げをしてもらった。だから早くそいつを止めてくれ。」

「ちょっと待ちなさいよ!そういう言葉はレイア様と愛しあっている私の台詞でしょ!さあレイア様、剣をどうぞ受け取って!」

剣を渡そうとしていたレインの腕からエリーが強引に奪い、それから今のレインの行動を完全に無視してレイアへと渡す。

渡されたのは、一日目にレインがレイアに渡した剣だった。

どうやらレプリカというのはレインのついた嘘らしい。

その剣からはエリーとの繋がりが感じられた、レイアはレインが本当に昔の愛剣と同じ効果のものを自分専用に作ってくれたんだと思い嬉しくなった。そして何よりエリーと繋がっているこの剣であればあの男に負けることがないと確信できた。

「別にこの状況でどっちが渡すとか関係ないだろ、状況を見ろよ。」

「別に良いでしょ。だってあれはニヤニヤ気持ち悪い笑みを浮かべて待ってるんだから。」

レインはエリーの行動に呆れながら注意するが、エリーはテロスを指差して言い訳を始める。

「二人共ありがとうございます。でもエリー今の言い訳は良くないと思います。」

レイアは人型に戻ると優しい笑みを浮かべながら二人にお礼を言う。

おまけでエリーは注意された。

「ううっレイア様、ごめんなさい。」

エリーはしゅんと肩を落とす。

「ふふっわかれば良いですよ。さて後は任せてください!」

そう言って剣を持ち、気持ち悪い笑みを浮かべて立っているテロスへと向き直る。

「そう!それだよ僕はそれを待っていたんだよ!やっとだあの時も君は聖女の期待を背に受けて僕を斬った!そのときの君は僕が出会ってきた誰よりも強かった!プレイヤーは今ここに揃ったんだ。さあ僕と殺し合おうかレイア!」

テロスは腕を広げて楽しそうに嗤ったあと身体中になにかの紋章が浮かび上がる。

「嫌ですよあなたみたいなのと殺し合うなんて、あと勘違いしないでください今から始めるのは殺し合いではなく殲滅です。」

レイアは淡々と言葉を発する。

「ははっいいね!そう来なくちゃ!」

「エリー、あなたの魔力を限界までもらいますが許してくださいね。」

レイアは申し訳なさそうにエリーへ確認を取る。

「はいっもう魔力だけでなく私の全てをもらってください!」

「ありがとうございますエリー、あなたの魔力使わせてもらいますね、あと重いです。」

エリーの少しどころかだいぶ重い返答を受け取るとレイアはお礼を言う。しっかりと重いことも付け加えておいた。

「ふふっそうですね重いですよ!」

だが当の本人にはこれっぽっちも効いていなかった。むしろ嬉しそうに頬が緩みまくっている。

「ちょっと僕を無視しないでくれるかなぁ、もうこっちから行くよ。」

さんざん置いてきぼりを食らっていたテロスは地面を蹴ってレイアに攻撃を仕掛けて来る。

レイアはそれに反応すると剣を振った、目の前に現れたテロスの右腕が斬り飛ばされる。

慌てて距離を取るために後ろに飛ぼうとしたテロスにあわせて前へ踏み込むと今度は左腕を斬り飛ばした。それから何度かテロスは攻撃を仕掛けるが、自分の身体だけ傷ついていくのを理解した後負けを認める。

「はあはあ…速いなぁ、前よりも。これはちょっと勝てそうにないなぁ、たぶん死んだな僕。」

「だから言ったでしょう、殺し合いではなく殲滅だと。」

レイアは剣の先を油断なくテロスに向ける。

「あの聖女とはよっぽど相性が良いみたいだね。やっぱり彼女をゲームに巻き込んで正解だった。」

「いいえ、聖女の魔力的な質では昔にあなたと戦ったときの彼女のが良かったですよ。」

「ははっそれは嘘だよ、今のレイアは前とは比べ物にならない。」

「嘘じゃありませんよ、私とエリーが特別に相性良いのではなくて、私達三人が相性良いだけです。レインが私の好みを反映させた剣を打ち、私のことを重すぎるくらいに愛してくれるエリーが応援してくれて二人の想いを受けて私が剣を振るう。どうですか完璧でしょ。」

「なるほど僕にはわからない感覚だ。」

「ええ、あなたにはわからないでしょうね、こちらも質問に答えたのですから私からも最後に一つ聞いて良いですか?」

「いいよ、僕が答えられることならね。」

「では、あなたって何者なんですか?」

「僕はこの世界へ来た侵略者だよ。厳密に言うと異世界にいる本体が作り出す侵略者するために作り出す道具の一個体と言った方がいいかな。テロスって名前は侵略者の種類を指す名前で僕という個体に名前はない。だから今後も僕ではない僕が侵略しに来ると思うよ。そのときはせいぜい抗ってみなよ。さて質問に答えるのはこのくらいでいいかな?じゃあ君の本気で僕という敗者を滅ぼしてくれ、そうしたら隕石は止まる。ああ一つ言っておくけど跡形もなく破壊してよ、残ってると僕は再生しちゃうから」

テロスは満足そうな笑みを浮かべていた。

「ええ、そのつもりです。私はこの世界の守護竜であなたは異世界から来た侵略者ですから。さようなら」

そう言ってレイアは剣をテロスに突き刺す。

「ははっ最後まで冷たいな、僕はこれでも君たちに感謝してるんだ、僕は本体の命令ではなく、君達と命のやり取りをするという自分自身の選択ができた!道具でなく僕として行動できたから僕は満足だよ。」

「感謝なんて伝えられたって受け取らないですよ、あなたが前回何人の人を殺したと思ってるんですか、私は絶対に許さない!」

そう言ったレイアの言葉には憎しみと怒りが籠っていた。その姿はエリーとレインの知っている温厚なレイアからは想像のつかないものだった。

「まあそうだね、許してほしいとは言わないよ、今のも僕が最後に言っておきたかっただけさ。」

レイアはテロスの言葉には返さず、深呼吸をするとエリーに確認を取る。

「エリー、今から魔力もらいますね。」

「はいっ!わかり…」

「おっと!大丈夫かエリー。」

「ありがとうレイン、なんとか大丈夫。」

魔力をギリギリまで持っていかれたエリーがバランスを崩したところをレインが支える。

それから二人はレイアとテロスの結末を見届けようと視線を移した。

二人の視線の先でレイアはテロスを滅ぼすための詩をゆっくりと詠い始める。

「私は守護竜、聖女と共にこの世界を維持し守る者、故に竜炎を以て世界の敵を焼き尽くす!竜炎よ目覚めなさい!」

レイアの美しい声が山の中に響き渡ると剣の刃から赤色の炎、青色の炎、緑色の炎が生まれた。それらはテロスを中心にして混ざりあうと真っ白な炎となり、刃を伝ってテロスの身体を焼き尽くした。

その瞬間、世界は滅びの運命から逃れた。

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隕石が落ちるまで えんぺら @Ennpera

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