追放が妥当な男 -「まぁ、追い出されてもいっか」-

ようび

1. ゴトという男

「はい?今、なんて…」

俺は今、父上の言葉が信じられず、言葉を詰まらせている。


「聞こえなかったのか?私との縁を切る。すぐにこの家から出て行け」


「聞こえなかった訳じゃなくてですね。お…私が父上との縁を切る様な事をしましたか?」


「…」

「…」









「…何人のメイドに手を出した?」


「え?…何人だったっけなぁ~」

「4人だ。何回ものを壊した?」


「…そんなに壊してないと思いますけど…」

「473回、直したり買い直したりするのに使ったかねは金貨400枚を超える」


「後は婚約候補だったアドニアス嬢に消えない傷を負わせた。それにより婚約の話はなくなった。学園では魔法ができることをいことに平民に対してやりたい放題、貴族からは何もなかったが学園からは苦情の嵐。王都内では勝手に魔法を使う事が禁止されているはずなのに使い、迷惑をかける。言い出したらきりが無いぐらいには追い出す訳がある」

「えぇ、と」

「お前の反論は聞かない。縁を切るのは決定したことだ。荷物をまとめて今日中に王都から出て行け。さもなくば…」

「さもなくば?」

「王宮に罪を言って奴隷にするか殺す」


そうして俺はこの家、スラルランド家を追い出された。


====


この国はリーマルド王国。それなりに大きな王都を持っている国だ。


「う〜ん。どうしようかなぁ〜」

俺は大きめの袋1つに入るだけの荷物を持って王都の町の中にいた。他にも荷物は俺の部屋にあったが、なんとなく持ってこなかった。ちなみに学園も辞めさせられた。


「まぁ、冒険者にならなきゃかねは稼げないからギルドに行くか」


王都の中にあるギルドの扉を開けると


ここにあるだけか。しょうがないだろ、あいつ強いんだよ。

チッ、しょっぺぇ報酬だなぁ。


とギルドにいる人たちの声が聞こえる。なんとなくその声に聞き耳を立てる為に遅く歩きながら受付に行くと、ちょうど綺麗なお姉さんの受付が開いた。

「初めての方ですね。依頼ですか?冒険者の登録ですか?」

「登録で。それとこの後どう?ご飯でも」

「まずは登録が先です。名前は?」

「ゴト」

「ゴトさんですね。しばらくお待ちください」

しばらく待つと裏に行っていたお姉さんが戻ってきた。

「手を出してください」

と言われたので手を出すと、魔力を抜き取られたのを感じた。

「はい。こちらが冒険者の証です。ギルドに出せば依頼を受ける事ができます」

「で、ご飯は?」

「そうですね。ちょうどこの後に他の人に受付が変わりますから大丈夫ですよ。ただお金はすべて払ってもらいますよ」

「よし!」

ということでお姉さんの好きなところに食べに行った。


====


食べ終わった後、ギルドにお姉さんを送りに行くと…

ギィィ ガタン

ギルドの扉を開けきった時、扉が取れて地面に倒れた。

「は?」


「あぁ!直ってなかったかぁぁ」

「どうしたんですか?グリフスさん?」

と後ろにいたお姉さんが、扉が地面に倒れた音を聞いて飛び出して来た男に声をかけた。

「ついさっきギルドの中で冒険者が暴れて、もう中がしっちゃかめっちゃか!だから直しに来たんだよ」

扉を見ているグリフスさんが答えた。

「ギルドは…」

「やっているよ。ただ受付の人が巻き込まれてねぇ。いま治癒魔法をかけてもらっていると思うよ」


その言葉を聞いてお姉さんは急いでギルドの中に入る。その後に続いて俺も中に入った。


ギルドの中はずぶ濡れの床、焦げた壁、壊れて元々何かわからない木材。しっちゃかめっちゃかだった。そんなこともあり冒険者であろう人がかなり少ない。


お姉さんは壊れてない受付に行き

「ギルド長!大丈夫でしたか?」

「ユアちゃん、僕は大丈夫。だけどね変わってくれない?騎士団のところに行かないと行けなくなったから」

「分かりました。ちなみにイノンさんは…」

「まぁ、今日の仕事は無理だね。休むように言ってあるから心配だったら気にかけてあげて」

「分かりました」

といってユアさんは受付につき、ギルド長は奥に行ってしまった。


「う~ん。少ないなぁ」

壁に張り出された依頼を見ているが、どれも報酬が少ないものか俺が受けられないものしかなかった。


しばらく悩み

「…マシなこれにするか」

と魔物狩りの依頼を取ると

「ねぇ?」

と俺の後ろから誰かが声をかけてきた。

「なんだ?今から依頼に行こうとしているんだけど」

「私もいれて」

と女の子が話しかけてきた。


は?

「なんで?」

「2人の方が楽になる」

「でも、俺の報酬減るじゃん」

「私は1割でいい。なんなら依頼の報酬は全部あげる」

確かに俺に得しかないが…

「何が目的?」

「ランク」

冒険者はランクで受けられる依頼が変わる。ランクを上げるには依頼をこなさなきゃならない。

「そういうことね。俺9割でいいよ。じゃあ、行こうか」

と女の子を背にして受付に向かって歩き出す。なんとなく

「そういえば、武器は何?」ブォン

と振り向きながら言った。

「…これだけ」

と振り向いたときにはすでに持っていた短剣を見ながら女の子は言った。

「へぇ、短剣ねぇ。俺は魔法だから」

「そういえばスキルは何?私のスキルは気配を消せるやつ」

この世の常識として、1人1つ必ずスキルを持つ。俺のスキルは…


「[第六感]だ。何が起こるのか知らないけど…」

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