第15話『決闘(下)』
未だ攻撃は喰らっていないし、距離は詰められているが、どうも近づきにくい。
ベイルの飛ばす真空の刃がかなり大きい。振った分だけの範囲に刃が飛んできて、大きく避けなければ直撃してしまう。
因みに、腰の拳銃は使う予定がない。と言うかそもそも使えば死人が出かねない。寸止めが決着の条件だ。
「くそっ! なぜ当たらないっ!」
「デカいだけで遅いからだ。ちまちま飛ばしてないで鍔迫り合いでもしようじゃないか?」
因みに俺の体力がだいぶ削られてきている。これでも地球では自転車通学だ。朝の三十分立ち漕ぎのおかげでもう少し耐えられる。もう真空斬ばかり飛ばしてくるのはやめてほしい。
「そんなナイフで僕の剣を受け止められるとでも……思ってるのですかっ!!」
真空斬を飛ばすのをやめ、地面を蹴って盾から突っ込んできた。
いい判断だ。前方を守りながらの突撃は基本中の基本だが、さらに姿勢も低く瞬発力を主に初速を出している。しかし、この方法は崩す方法が多々ある。
例えば、相手の慣性を利用して隙を作り出すには容易だ。相手の剣を持っていない方向、つまり相手の左手側に飛び出す。
もちろん、相手がブレーキをかけ、こちらの攻撃に備えて無理にでも盾を突き出してくるだろう。そんな甘い行動を狩るのが
今回は若干力技になるが、物の性能に頼る。
全体重を前方にかけたオリハルコン製のナイフを盾に向かって垂直に振るう。
基本、盾は正面で攻撃を受けてはいけない。相手の攻撃を滑らせ、威力を削ぐことが目的なのだ。
今の状況はその基本に反している。盾は鋭すぎるナイフによって綺麗な断面を作って壊れる。これをゲームで言えば武器クラッシュ。圧倒的な武器の性能差によって起こるものだ。
相手も素晴らしい反応速度を見せ、すぐにバックステップを踏みながら盾を手放して腰の杖を引き抜いて詠唱する。
「【フレアボム】!!」
火球が飛んでくるが、これを好機と見做し、腰から拳銃を引き抜く。
セーフティをかけてベイルに向かって投げる。と同時に火球に被弾。しかし『骸灰の衣』の特殊効果、防火や衝撃受け流しによって無効化された。
フレアボムは爆発によって煙幕となり、俺の行動を隠す。故にベイルからは見えないのだ。白い物体が放り出されたことを。
セーフティをかけていたので、暴発は防いだが、硬いグリップ部分を額に直撃したベイルは尻から地面に落ちる。
俺は着地硬直を見逃すゲーマーではない。それも尻餅落下となれば絶大なチャンスだ。
一気に詰め寄り、ナイフを首元に突きつける。
会場全体が静まり返り、俺とベイルの荒い呼吸だけが聞こえる。
「そこまで!! 勝者ミナセ!」
会場全体が信じられないと言った雰囲気に包まれる中、沈黙を破った声は、派手な横断幕の方向からだった。
「セトラさ〜ん! きゃあ〜!!」
はっっっっっず!?
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