第3話『クラフト機能』
「クラフトの出番?」
〔はい。人間というのはいかなる者も食事が必要となります。そこで、そちらに転がっているクマの亡骸を『素材』とし、食べられる状態へと『クラフト』いたします〕
「便利すぎるだろお前」
〔それこそ私、最強タブレット端末のアフエラです〕
アフエラ曰く、先ほど葬ったクマを肉として食べられるようにしてくれるようだ。
それを褒めると誇らしげにする。
人間の脳を真似た知識を作り上げる技術がAIだったか? 質問の受け答えだけかと思っていたが、自慢やら冗談やらも言えるのか。
「じゃあ、そこのクマの肉を使って何か作ってみてくれないか? 食べられれば何でもいいからさ」
〔材料を『デグルベアの肉』とし、可食となるようにクラフトいたします〕
そう言うと俺の手から離れて『浮き上がり』、カメラレンズの辺りから光を出して読み取るような動作をする。その先ではクマの亡骸が骨と謎の宝石一つだけとなり、肉は消えていた。
「おまっ!? 浮けるのかよ!? 本当にそれ小物機能か!?」
〔なぞなぞの機能に比べれば些細な機能です。……出来上がりました。処理済みのデグルベアの肉です〕
そう言って出してきたものは生肉のままだった。
「えっ……」
〔食中毒になる可能性がある物質の除去をしております。生でも食べることができると言うことです〕
「……嘘だろ?」
〔冗談でもなぞなぞでもありません〕
なぞなぞはもういいって。
そんなことより、この肉を食べるか否かだ。
確かに食えば腹は満たされるだろうし、アフエラもこう言っているのだ。腹を下すことはないのだろう。しかし、しかしだ。生は流石に美味くはないだろう。
結局食った。なんか気持ち悪さを感じたが、コイツも生きていたと考えると悪感は罰当たりだと思い、感謝を込めて頂いた。
「……結構大きかったな」
〔私のインベントリにはあと十回分の肉があります。必要な時に仰ってください〕
「なぞなぞより便利だろそれ!?」
〔なぞなぞの方が凄いです〕
アフエラはなぜかなぞなぞ推しだ。絶対使わないからな。
そうこうしている間に日が暮れ、辺りが暗くなった。
「やばくねぇか?」
〔マスターの計画性の無さを学習いたしました。私はこれより徹底的なサポートをいたします〕
「失礼だな。今はまだ現実を把握できずにパンクしてるだけで、冷静な判断ができてないだけだ」
〔ではマスターがポンコツの間は私が道標となります。当分の間は私の指示に従った方がよろしいかと〕
「わ、わかった。まずどうしようか」
アフエラの言うことをまとめると、
1、集落を探す・洞窟など雨風が凌げる場所を探す
2、魔獣と推定されるデグルベアのような敵対生物への対抗手段の確保
3、なぞなぞを解く
最後に関しては省く予定だが、最もな話だ。
人間が集団で生きるのが当たり前だし、もし無理そうなら最低限家として機能する場所は必要だ。
そして二つ目に関してだが、最低限ナイフは欲しいところだ。
ここは仮想世界では無いため、敵対生物の行動がパターン化されていない。ある程度の武力は持っておくべきではあるだろう。
〔しかし、本日はすでに歩き回るには暗すぎます。対抗手段の確保、またはなぞなぞをお勧めします〕
俺は迷わずクラフトレシピを開いた。
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