銃横無尽を異世界で
k0sui
序章【プロローグ】
第0話『コックオフ』
茂みに隠れ、銃を構える。
ウィンチェスターM70。大体一メートルくらいのスナイパーライフルで、性能は素直。
——セトラさんってAIM練習どうしてるの?
——セトラさんちゃんと学校行ってる?www
「学校にはちゃんと行ってるぞー。あと……えーあいえむって何?」
数百メートル先、建物の窓から頭が飛び出した人間を撃ち抜く。風や高低差などを読んだ完璧な偏差撃ちは、吸い込まれるように対象へと弾丸を飛ばす。
——エイムって読むんですよwww
——FPSガチってる人でAIM知らんの草
「俺知ってるぞ。FPSって一秒間で何枚の画像が動くかってやつだろ? ……FPSガチってるってどう言うことだ?」
削りきれなかった分のダメージを与えるべく茂みから飛び出し素早く突撃を開始する。
——草
——嘘だろwww
——草
「笑ってねぇで教えてくれよ。俺が間違ってるのかコメが間違ってるのかわかんねぇよ」
建物内に侵入し、回復を挟もうとしている人物を発見。スコープを覗かずにウィンチェスターのトリガーを引く。
しっかりと構えずに撃つとあらぬ方向に飛んでしまうこともあるが、見事乱数を引き当て敵の腹に弾丸を撃ち込んだ。
——FPSって一人称視点でやるゲームだよ
——AIMは射撃精度……かな?
——さらっと魅せプしてんじゃねぇよw
——あとフィールド八人?
「ちょっと、いきなり詰め込ませるなよ。なるほどね。AIM練習はマッチング待機の場所のバルーン撃って遊んでたらそのうち良くなるんじゃないか? あと俺このゲームガチ勢ってほどやってないだろ?」
倒した敵からの戦利品でアイテム補充ができるのだが、彼はやり方を知らないのですぐ別の場所に移る。
——アイテム補充なしで表彰台乗るやつが良く言うわw
——この人実際に銃持ったらどうなっちゃうかなw
——世界の終わりやんね(?)
——ゲーム知識無いのにここまでやれるのすげぇよなぁ……
——セトラさんはVRゴーグルでやってみたりしないの?
「アイテム補充ってどうやるんだ? あと俺を殺人鬼呼ばわりはやめろ。……ブイアールゴーグルってあれか? ゴツいアイマスクみたいな」
一人、一人と死者を生み出す。雑談をするうちに残り一人。
——アイマスクw
——このゲームもVRで出来るようになってたよ
——VRもうまかったらマジでこの人に銃持たせちゃいかんよなぁw
「あと一人どこかな。これ勝ったらVRゴーグル買ってこようかな? いくらくらい?」
敵を目視した。森の中、葉と葉の間から一瞬、迷彩服が見えた。
——余裕の勝利宣言ワロタw
——一万円くらい?
——【5,000】期待してるので半額出します!
——【2,000】じゃあ俺も出すしか無いな
「待て待てお前ら。もう買うの強制じゃ無いか。期待に応えられるといいけど」
移動の予測に合わせてウィンチェスターをパナす。ヘッドショットの中でも高火力となる目に当たり一撃であっさりと殺す。
——VR下手だったとしても新鮮だしOKw
——てか試合終わってる!?w
——背景映像終わっちゃった
「いえーい勝ったー。んじゃあ電気屋さんで買ってくるかな。あーでも最初は中古でもいいかもな」
——セトラさんFPS以外もやってるしね
——コントローラーも揃えるとなると最初はね
——ハマったら新品買いなよ!
「そうするか。じゃあ配信終わるな。また明日、ゴーグルの設定とか終えたら配信するな」
配信を切り、パソコンの電源を落とす。座り続けて重くなった腰を上げ、中古ショップへ向かい、なるべく状態の良いセットを買った。はずだった。
翌日。
死亡事故が発生した。
——セトラさん? なんかすごい音したけど
——なんか踏んだ? VRはちゃんと周りをかたしておかなきゃだよ
——セトラさ〜ん?
ゴーグルの不良だった。バッテリーだったのか、それとも他に何か不良があったのか。頭、それも文字通り目の前につけていたものだから、簡単に脳へのダメージが入った。
マイナーなバトルロワイヤルゲームで無自覚にも最強だったプレイヤー『セトラ』は壊れかけのVRゴーグルを使用し、二度とこの世の配信に姿を現さなかった。
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