彼女の想い人

 隠し通路の入り口は彼女の部屋にあった。青年が壁一面の本棚からある一冊を引き出すと、轟音と共に地下への入り口が現れた。

「ここから出て行ったんだ、あの下賤な水売りに会う為に」

 背後に控えていた部下は控えめに相槌を打った。地下へと続くその階段を迷わず降りて行くので慌てて追いかける。

「どうしてなんだ? 高貴な彼女にはこの僕こそが相応しいのに!」

 そういう所が嫌われるんですよ。思っても勿論、口に出す事は出来ない。

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