魔導推究
第37話
「ようやく街から出てきたわね!」
げっ!
首都クレイピアから出て、ホン皇国へ向かっていた。
突然、森の中から姿を現したのは、リードマン姉妹。
「人を置き去りにした上、指名手配にするなんて、絶対に許さないわよ」
ゲイドル火山からの帰り道に姉妹に襲われたから、手配したまで。
「私たちが反王国派ですって? どこに証拠があるのよ!」
これは困った。
証拠を出しようがない。
「サオン君、誰アルか?」
「えーと、このふたりは……」
反王国派として、以前、指名手配するよう働きかけたことを伝えた。
「だから証拠はあるのかって聞いてんの!」
それは無い。
だから困っている。
このままでは自分の勘違いでしたと指名手配を取り下げるよう求めてきそう。
「それなら簡単アルよ?」
「なによ、まさか
かつて、悪人騒動という悪意を感知した者すべて処刑するという行為が横行した。
でも結局、
実際は、悪意を持たない人間なのに仕掛けのある魔法で悪意有りだと貶めるもの。
真実が明るみになるまで、多くの人が犠牲になったと聞いている。
悪意感知を使っただけで重罪となるので、今では誰も使える者はいない。
「違うアル、この真実の首輪で調べるネ!」
真っ黒な首輪。
よく見ると、凝った意匠の模様と読めない文字が刻まれている。
これを首にして、嘘をつくと首輪の文字が光るそうだ。
「そんなことをする必要なんてない。私たちは無実よ!」
それは、断るだろう。
だって嘘をついているから……。
「ほう、では後ろめたいことがあると認めるアルか?」
「だから、しないって言ってるでしょ!」
「これは黒確定アルね!」
「姉さん、私がやるわ!」
メイメイの挑発にまんまと乗っかっているポメラ。
見かねて妹のセレが名乗りをあげた。
「セレ!?」
「いいわね、姉さん」
これは……。
視線を交わす姉妹。
なんとなく分かってしまった。
自分もまたさりげなく行動に移す。
「……では質問するネ、あなた達姉妹は反王国派アルか?」
「いいえ!」
メイメイが少し間を置いて質問し、セレが答える。
すると首輪が淡く光り出した。
「
「全員、動くなアル!?」
セレがポメラの前に手を広げ立ち塞がると同時にポメラが詠唱を始めた。
でも、ポメラが魔法の詠唱を始めるのは知っていた。
だから、セレが邪魔にならない場所へあらかじめ移動していた。
ここから短剣を投げたらポメラを倒せる。
振りかぶっているところで、メイメイが全員へ警告した。
「まずその首輪はけっして外れないアル」
「──なっ!」
「術者……メイが死んだら、首輪が自動で爆発するアル」
後は特定の言葉を口にすると遠隔でも爆発するそう。
「姉さん、私に構わず魔法を!」
「ダメ……あなたを見捨てることは私にできない……」
「姉さん……」
ポメラが杖を前に放り出した。
その杖をリャムが拾い、メイメイに渡す。
それからリャムが、ポメラの首にセレと同じ首輪をつけた。
「ちなみに嘘をついているかはその首輪でわからないアルネ」
「なっ!? じゃあこの首輪は……」
「でも、それ以外は本当アルネ」
「くそっなんて卑怯な」
魔力が一定量あるものがつけると30秒後に光るようにできているそう。
嘘を見抜きつつ、相手を拘束する……かなりの詭弁師のようだ。
首輪をつけてしまえばこちらのもの。
でも、これでよかったかも。
彼女たちをこの手で始末しなくて済んだのだから……。
先ほどメイメイの制止した声には自分も含まれていた。
制止があと少しでも遅れていたら、ポメラに短剣が突き刺さっていただろう。
「私たちをどうするつもり!?」
「はて? どうするつもりもないアル」
危害を加えてこようとしたから、対応しただけ、とメイメイは説明する。
「正直、反王国派であろうとなかろうとメイには関係のない話アル」
たしかに。
ホン皇国の学者には他国の揉め事なんて、あずかり知るところではない。
「まあ、連れて帰るネ!」
また、実験と言いそうになって研究と言い改めるメイメイ。
研究のために魔法使いと聖職者を連れて帰ることに決めたようだ。
「サオン君もいいアルか?」
彼女たちの目的は恐らく自分へ近づいて、再びカルテア王女の近くへ行くこと。
もしくはレッドテラ国との戦いに従軍するつもり……。
キサ王国軍へ潜り込んで、戦争に紛れて致命的な打撃を王国軍に与えるつもりかも。
ということは、ジューヴォ共和国へ連れて行かなければ済む話。
すぐにどうこうする必要がなければ特に反対する理由はない。
ところでメイメイは、どうしてサオン
いちおう
でも、それを口にすると「器が小さいアル」とか言われそうで怖い。
他にも21歳のリャムが師匠と呼んでいるのも謎。
色々と謎だらけだが、ひとつだけハッキリしていることがある。
研究狂……真理に辿りつくためなら道を外すことでも平気でやってしまいそう。
なので絶対に剣の秘密と
バレたら、解剖されてしまう気がする……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます