ハードモード貞操逆転世界で傾国の美男になる(らしいですよ)
ぬこぬっくぬこ
プロローグ
第1話
オレが転生した貞操観念逆転世界は少しだけ変わった世界であった。
まず、男性より女性の方が性欲が強く、襲われる方はもっぱら男性の方だ。
そして、男女比率についても数十対一、というほどは離れていないが、圧倒的に男性が少ない。
さらに、農作業から力仕事、モンスター退治に至るまで、ほとんどの産業は女性が中心になって行われる。
ここまではまあ、ごくありふれた、貞操観念逆転世界である。
だが、そこに至るまでの理由が異なっていた。
まず、力仕事を女性が担う事になっている理由だ。
素の腕力に付いては女性よりも男性の方が強い。
だが、女性は身体強化の魔法が使える。
そう、この世界には魔法がある。
だが、魔法が使えるのは女性だけなのだった。
身体強化の魔法を使えば、一抱えほどある岩も軽々と持ち上げられる。
水生成の魔法を使えば、川に水くみに行く必要もない。
魔法の使えない男性では、火を一つ点ける事すらできやしない。
火打石などの道具はどこにも存在しない、なにせ、指パッチン一つで女性は火を起こすことができるのだから。
そしてこれが男性が少ない理由にもつながる。
あらゆる産業において、男性は役に立たない。
都心部などであればまだしも、ギリギリの生活で成り立っている農村地域では――――役に立たない存在は間引かれるのだ。
生まれてすぐに、濡れたタオルを顔にかぶされたオレが言うのだから間違いはない。
前世の日本でも、口減らしのために子供を間引いていた、特に力仕事ができない女の子は。
その上、この世界には凶悪なモンスターが跋扈している。
魔法が使えない男など足手纏い以外の何物でもない。
この世界の男性はいつも、女性の顔色を覗って生きていかなければならない。
男性に人権など存在しない。
個人で財産を持つことも許されていないし、村から出る事も禁止されている。
女性に依存しない限り、生きていけない仕組みになっていて、男性には非常に生きづらい世界である。
ただしイケメンは別だ。
女性たちが取り合って、まるで王様の様な暮らしをしている。
オレが生まれた村も、見た目が良い男を共同で飼って子孫を作っている状況であった。
数が少ないからこそ選別され、共有される。
人をモノに例えるのは良くないが、結局のところ、見てくれの悪いモノなど誰だって手にしないのだ。
希少であればあるほど、良い物が求められる。
同じ宝石であっても、不純物が混じっていれば、誰も手に取らないだろう。
さらにシェアできる環境があれば、濁った色の宝石などゴミでしかない。
だから、見てくれの悪い男ほど悲惨な状況だ。
ボロ雑巾の様に絞り尽くされ、ただ、女たちの快楽を満たすためだけに存在する。
そんなボロ雑巾のうちの一人が、オレの父親だったらしい。
母親も、そんなボロ雑巾の様に扱われるようになるのなら今のうちに、と思って濡れたタオルをかぶせた様だ。
ああ、神様。
転生させてくれたのには感謝しますが、こんなハードモードな世界は止めて欲しかったです。
何度が濡れタオルをかぶされそうになるも、オレは必死で抵抗した。
生まれたばかりの赤ん坊が、バッタの様に跳ねながら必死に抵抗する様を見て、皆様、恐怖の表情でこっちを見てくる。
その気持ちは分からない事はないが、こっちゃ命が懸かっているんだよ、必死にもなる。
数人がかりで抑え込まれた時はもう駄目かと思ったよ。
そのうちの一人の手に、オラ、ヤるなら道連れにスンぞ、という気迫でしがみつく。
それが功を奏したのか、その場はなんとか生き延びる事に成功する。
その後も、食事を与えられなかったり、暴力を振るわれたりした事もあったが、かじろうて生き延びる事に成功する。
赤ん坊の時は、同じ赤子の傍から離れず、おこぼれをもらい。
立って歩けるようになると、大人たちの手伝いを率先して行い、少しでも役に立つところを見せる。
たまたま、同じ日に生まれた子供が村長さんの娘さんであったので、必死に取り入っておこぼれをもらう。
散々いじめられもしたが、なんとか食いつなげられた。
なあに、いじめと言っても子供がやる事だ。
体は子供、精神は大人。
前世の大人のいじめに比べたらかわいいもんだ。
だがある日、その娘さんと取り巻きの女の子たちが、とある作戦を立てているのに気づく。
どうやらオレが居るせいで、イケメンの男の子を買ってもらえないそうで、オレを排除する作戦を考えていたのだった。
そう、この世界、地方の農村では男は売買される事がある。
人身売買ですよ旦那。
まあ、値札を付けられて奴隷の様に連れ回される訳ではないが、どこどこの誰々をいくらで身受けしよう、なんて言う話は良くあるようだ。
ほんと、男に厳しい世界ですよ。
まあ、いつかはそんな日も来るだろうとは思っていた。
いつまでもこの村に居ついていてもお先は真っ暗だ。
そう思ったオレは、行商人をしている男性に必至で懇願する。
オレを街まで連れて行ってくれないかと。
相手は同じ男性だ、同情もひける。
そして、村に来るたびに商いの手伝いをしているので、オレの頭が良い事を知っている。
そらもう必死で懇願したさ。
命が懸かっているのだもん。
大っぴらには連れ出せないが、と言われて、こっそりと村から脱出する事に成功した。
その当時のオレは8歳。
たとえ女性であっても独り立ちには、かなり早いお年頃。
だが、今しかない。
今、この村を出ていなかければ、来年には土の下で骨になっているかもしれない。
行商の男性も、いつまでこの村に来てくれるか分かったものではない。
それに、あまり成長して男らしさが出てくると、外を出歩く度に貞操の危機を迎えかねない。
いや、良いんですよ、それ自体は。
こちとら貞操観念逆転世界からやって来た男だぜ。
性欲だけならこっちの世界の女性に負けはしねえ。
ヤれるものならヤっちまいてえ。
だが、問題はですね……
衛生環境が決して良くないのですよ。
さらに彼女らは、少々の毒でも魔法でなんとかされます。
病気とか、気にもされないのですよ。
しかしね、うつされる男性にとっては死活問題。
その上、人の命もかる~いの。
ヤった後に、口封じとばかりバッサリなんてのも日常茶飯事。
ああ、神様。
せめて、もう少し優しい世界に転生させてほしかったであります。
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