第19話 決意


 ――主人公。それはあらゆる作品において重要な役割を果たす人物。


 ディアボロス・クエストにおいては勇者であり、世界を救う鍵となる者だ。


 俺は今まで主人公とその周りの関係者と、関わりを持つのを避けていた。それは本来のゲームのストーリーを大きく変えてしまうからだ。


 世界の部外者である俺にとって、それはやってはいけないことだと考えている。


 モブ悪役である俺が主役になってはいけないとブレーキをかけていた。


 だがそれにも限度があるし、自分が死ぬとなれば話は別だ。生き残るためにはブレーキを踏み切って壊す必要がある。


 ではどうするか。簡単だ、やられる前にやればいい。つまり魔王を俺が殺せばいい。


「スレイン! とうとう決めたんだね!」


 クラエリアが俺の腕に抱き着いてくる。彼女も俺の決意を理解してくれているようだ。


「ああ。出来れば主人公には関わりたくなかったがこうなれば仕方ない。俺はやるぞ! 生き残るためにはもはや手段を選んではいられない!」


 主人公陣営やストーリーに大きく関わる人物を味方にすれば、とれる選択肢は大きく広がる。


 天才を多く雇えることで戦力増強になるからな。まだ本編開始前なので成長しきってなくてもその力は間違いなく強い。


 そこに地球のアイテムを使えるのだから、大幅な戦力強化になるだろう。


「ゲーム世界に戻ったら勇者たちを仲間にするぞ! もうゲームのストーリーは考えない! 魔王軍が攻めてきたら返り討ちにして、そのまま魔王を討ち取ってやる!」

「面白くなってきたね!」

「よ、よくわかりませんが私もお手伝いします!」


 クラエリアは楽しそうに笑って、ミアレスちゃんは真剣な顔で俺を見てくる。


「じゃあさっそくゲーム世界に戻るの?」


 腕に抱き着きながら首をかしげてくるクラエリア。


「いや、まずはこの世界でやることがある。俺の死因についてや王都に攻めて来る魔王軍について、少しでも情報を集めたい。それこそ誰に殺されるか分かれば対策もとりやすい」

「情報を集めるってどうやるの?」

「もちろんゲームをプレイするのさ。幸いにもこの世界でいくら過ごしても、ゲーム世界では時間が進まないからな」


 俺は手に持ったゲームを見せつける。せっかく未来が分かるアイテムがあるのだから使わない手はないだろう。


 ただ俺のゲーム知識はもはや完全にアテにはできないので、最初から始めて全クリしないとダメそうだが。


「じゃあ俺はしばらくゲームするけど二人はどうする?」

「ボクはスレインがやってるのを隣で見るー。面白そうだし」

「わ、私もいいですか?」


 ということで俺のゲームプレイを、クラエリアとミアレスちゃんが観戦することになった。と言ってもターン制RPGは操作テクとかないし、スーパープレイとかできないけどな。


 そうして俺はゲームをプレイし続ける。


「えっ!? 四天王を倒す順番が変わってるんだけど!?」

「どう変わってるの?」

「死蟲イビルバグが最後に倒す四天王だったのに、最初になってる……逆に水粘スラベインは最初に倒すはずだったのに最後に格上げされてる」

「倒す順番ってそんなに大事なの?」

「当然だ。ボスの強さ自体が変わるからな」


 さらにゲームを進めていって四天王を倒し終えた。そして最終決戦前に世界中を回れるようになったので、色々と移動して情報を集めると俺の話がたまに出てくる。


『スレイン・ラグナロク? 彼は英雄だよ。彼の頑張りでアーレーン国の民は無事に逃げられたんだ』

『彼の仲間が魔王に手傷を負わせて、侵攻をしばらく止めたのよ』


 などと話すNPCがいたので俺は犬死はしなかったらしい。ただ結局死んでいてはダメなのだが。


 ゲームの中とは言えども褒められるのは気分がいい。もっと褒めて。


 今度は魔王軍を裏切った魔物と会話してみると、


『知ってるか? 魔王軍は王都でから揚げとコロッケが流行したせいで、侵攻を早めたんだぜ? 油が量産され始めたのを軍備増強と勘違いしてな』


 などと意味不明なことを供述していたが聞かなかったことにした。


 このゲームでは油は強力な炎魔法強化アイテムだ。それを揃えたら確かに勘違いされるかもしれない。


 ま、まあ遅かれ早かれ攻められたことに変わりはないし……いやすみません。俺のせいで侵攻早まってたわ。


 そうして二十時間ほどゲームをプレイして、魔王を無事倒した俺はゲーム機を机に置いた。


「ふー……いや思ったよりストーリー変わってるな!? まさかミアレスちゃんが死にかけた主人公を回復させるとは……」


 ミアレスちゃんは元のストーリーではちょい役だったのに、今では準ヒロインみたいな扱いだ。パーティーの仲間にはならないけど大活躍するし。


「わ、私ほんとうに大教皇になるんですか……!? しかもスレイン様の商会も継いでいて油の聖女って……」


 ご本人が一番ショックを受けている。


 ちなみに油の聖女は誉め言葉として使われている。彼女が油を安定供給することで魔法使いの炎魔法が強化されて、魔王軍に抵抗する力となっているからだ。


 ちなみに死蟲イビルバグが四天王で一番最初に倒されるのも、それが原因だったりする。虫は炎に弱いから油の流通が増えることで相対的に弱体化したと。


 逆に炎耐性のある水粘スラベインは一番最後と、油が世界を変えているのだ……。


 なんか色々とツッコミたいところはあるが、これでゲームのストーリーはなんとなくつかめた。


「よし。じゃあゲーム世界に戻って主人公パーティーを仲間に引き入れるぞ!」

「わーい! 誰を仲間にするの? 双斧のマティアス? それとも色仕掛けのメルル?」


 クラエリアが言った二人も勇者パーティーの一員だ。片や斧を二刀流とかいうロマンの塊で、片や敵を悩殺するエロ担当。


「もちろん両方だ! 他にも毒殺のボズルとかも……というか主人公パーティー全員勧誘してやるぞ!」

「やったー!」


 俺は英雄となって死にたくないのだ。どんな手段を使っても必ず生き残ってやる!


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