第10話 体の構造を理解せよ


「ふむふむ。人の身体は多くの骨があって、血管には酸素が……」


 ミアレスちゃんはパソコンで動画を見たり、本を読んだりで人体の知識を深めている。


 現代医学的な知識は、きっと回復魔法にいい影響をもたらすはずだ。


 そんなこと考えてたらクラエリアが俺の近くに駆け寄って来る


「スレインー、メロンソーダ欲しいなー。それとアイスクリーム!」

「ほう。その二つを組み合わせるというなら面白いモノを作ってやろうか」

「面白いモノ! 作って作ってー!」


 俺は台所の冷蔵庫からメロンソーダのペットボトルとカップバニラアイスを取り出す。そしてコップにメロンソーダを注いだ後、カップアイスをスプーンですくって投入した。


「はいメロンクリームソーダ」

「メロンクリームソーダ!?!? そんな黄金とダイヤ揃えましたみたいなのいいの!?」

「もちろん。さあ飲んでみろ、いや食べてみろか? ほら」


 メロンクリームソーダを渡すと、クラエリアは即座にアイスをすくって食べ始める。


「甘い! バニラにメロンソーダの味が混ざって美味しい! それにメロンソーダにもバニラが溶けて味が変わってる! わかった! これが日本で最も高級な飲み物でしょ!」

「喫茶店に行けばだいたいどこでも出て来るぞ」

「すごいね喫茶店! お貴族様御用達の店がそんなにあるなんて!」

「なぜメロンクリームソーダが安いという発想にたどり着かない」


 メロンクリームソーダ。それは甘いに甘いを掛け合わせて美味しいという、暴力的な甘みで相手を殴るような代物。


 メロンソーダもバニラアイスも気に入ったクラエリアだ。メロンクリームソーダのトリコになるのも当然だろう。

 

 さらに二つほどメロンクリームソーダを作って、ミアレスちゃんのところに持っていく。


 食い入るように動画や本を見て勉強しているので、少し甘いものを取った方がいいだろうし。糖分大事。


「ミアレスちゃん。メロンクリームソーダはいかが?」

「な、なんですか!? その白いのと緑のは!?」


 おっとそういえばメロンソーダはなかなかの色合いだった。クラエリアは面白いの一言で済ませてたが、こちらの方が普通の反応かもな。


「飲み物に氷菓子をのっけたものだよ。甘くて美味しいからどう?」

「こ、こんな綺麗な色の飲み物があるんですねぇ……」

「いらないならボクが飲むよ!」

「い、いえ飲みます」


 ミアレスちゃんはスプーンを持って、バニラアイスを口にすると蕩けたような顔になる。


「ふわあ……美味しいです……」

「それで勉強の方はどう? 捗ってる?」

「スレイン様! この国の医学はすごいです! 人の身体の構造や症状などをかなり分析しています! 私たちがよくわからずに魔法で癒してるところも、しっかりと理論的に解析されていて、これを魔法に応用したらすごいことになりますよ!」


 ミアレスちゃんは興奮しているようで、ぶつかりそうなくらい顔を近づけてくる。


「それはよかった」

「出来れば一度、人が解剖されるのも見てみたいです! そうすればなにか掴めそうな気がして!」


 それ掴んだらダメなものだったりしない? 


 するとミアレスちゃんは小さく俯いた。


「ただ医療器具の実物が見れないのが残念です。サポーターとか包帯とか、本物をつけることができたら、より理解できそうなんですが……」

「じゃあ買いに行くかい?」

「い、いいんですか!? ってきゃあっ!?」


 ミアレスちゃんは何もないところでつまづいて、彼女の頭突きが俺の頭に直撃した。い、痛い……。


 あ、危なかった。HPを全快していなかったら、致命傷だったかもしれない。


「す、スアレス様!? も、申し訳ありません! いま回復魔法を!」

「いや大丈夫だから。ははは、大丈夫だよ大丈夫大丈夫」

「んー。ミアレスっち、スレインに回復魔法かけておいて。絶対大丈夫じゃないから」


 俺は回復魔法をかけられてだいぶ楽になった。


「じゃあ外に出ようか! クラエリアも行くぞ!」

「はいはい」


 クラエリアは何故か微妙に不機嫌そうだ。メロンクリームソーダを飲んだというのに、いったいなにが不満だと言うのか。


「あ、ミアレスちゃん。ここは他国だからあまり他の人とは話さないでね。それと魔法もよほどのことがないと使わないでね」

「わかりました」


 そうして俺たちはサポーターやら医療器具やらを見るために外に出た。今から向かうのはスポーツショップだ。病院の場合は勝手に見学するの難しいし、迷惑かけてもダメだからな。後でドラッグストアにも向かうつもりだが。


 それともちろんクラエリアの幻覚魔法で、日本っぽい服装になっている。


 だが道行く人々からチラチラとみられている。クラエリアとミアレスちゃんの見た目が可愛いからだろうな。


 どちらもアイドル顔負けの見た目だ。そんな二人が並んだらそりゃ目立つ。


「ひゃうっ!?」


 そんなミアレスちゃんだがたまに俺に抱き着いてくる。具体的には自動車が横を通り過ぎるたびにだ。


 どうやら高速で走る自動車が怖いらしい。日本で生活していれば慣れてしまっているが、鉄の塊が高速で走るのおかしいよな。


「ミアレスちゃん、大丈夫だよ。自動車は人に突っ込んできたりしないから」

「ほ、本当ですか……? でもあんな鉄の塊に突撃されたら、死んでしまうのではと。ドラゴンの一撃より強そうです……」

「自動車を操るには資格が必要でね。人を轢いたりすると、状況によっては重罪人として捕まるくらいなんだ。車を武器に使うのは厳しく禁じられてるから」

「そ、そうなんですか。それなら少し安心です」


 ふと気になったので走ってる自動車のステータスを鑑定してみる。


 ディアボロス・クエストには竜騎士というクラスがあって、ドラゴンが装備アイテム化される。


 そのドラゴンを装備した時に上がる攻撃力と防御力よりも、自動車装備したほうが能力上昇が高いっぽい。これはドラゴンが弱いとみるか、自動車が凄いと思うべきか。


「きゃー。犬だー」


 そんなことを考えていると、今度はクラエリアが俺の腕に抱き着いてくる。


「いや犬は元の世界にもいるだろうが。お前そんな怖がるキャラじゃないだろ」

「てへっ♪」


 そんなこんなでスポーツショップにつくと、


「と、扉が勝手に開きましたよ!?」

「それもうボクがやったよ」

「え、えっと……?」


 などというやり取りのあと、サポーターなどが置いてあるコーナーに入る。


 スポーツショップだけあって、包帯や冷却スプレーなども置いてあった。


「これがサポーターですか……なるほど、確かに柔らかいですね。これで身体を保護することで……」


 ミアレスちゃんはお試し品で展示されたサポーターを見て、真剣な顔でブツブツと呟いていた。


「ねえスレイン。ボク、この金属バットが欲しい」


 するとクラエリアが金属バットを手に持っていた


「野球したいのか? それならボールやグラブもいるんじゃないか?」

「野球? よくわからないけどこれ軽くて硬いから、振り回しやすそうかなって」

「それ武器じゃないぞ」


 確かにそこらのこん棒よりも使いやすそうだし、日本における一般人のメインウェポンではあるけどさあ。


 などと考えていると、ミアレスちゃんが誰かと話している。随分と大柄な男だな、身長百八十センチくらいありそう。


 おっといけない。なにか変なこと話さないようにさせ……。


「アサハラ様。貴方に不幸な未来が見えます……数年後に自ら命を絶つ、そんな未来が」


 手遅れだった。


「え、えっと。自ら命を絶つって……!?」

「貴方は肩を痛めていますね? その怪我はこのままですと治りません。ですが私なら治せま……」

「ミアレスちゃん、ストップ! すみません! ちょっとうちの妹、中二病でして!?」


 ミアレスちゃんがこれ以上ヤバイこと言う前に、なんとか二人の間に入り込む。


 彼女からすれば未来が見える神官として、不幸な人を救おうとしているのだろう。だが地球においてそれは悪徳商法にしか聞こえない!


 いやこれはミアレスちゃんは悪くない! 


「す、スレイン様!? 待ってください! あの人を救わないとっ……」

「すみません気にしないでください! ほら出るぞ!」


 急いでミアレスちゃんを引っ張って外に出たところ、見知らぬ男性は俺たちを追って来る。


 ヤバイ、悪徳商法まがいで警察のお世話になるのは御免だぞ!? かくなる上は謝り倒すしかない!


「すみません! 本当すみません! 気にしないで頂けると……!」

「スレイン様! あの人の肩を魔法で癒していいですよね!? このままだとあの人、近い将来死んでしまいます!」

「わかった! 使っていいから走って!?」

「ありがとうございます! 癒しの光よ、壊れし身体に再生を。ヒール・レジステーション!」


 俺たちは必死に逃げて、なんとか見知らぬ男性から逃げ切った。


 失敗した! ミアレスちゃんはいい子だから、変なこと言わないだろうと思って油断した! 


「も、申し訳ありません! 放っておくことが出来なくて……」

「いやうん。流石に命がかかってたら仕方ないね……でも次からはコッソリ魔法をかけようか」

 

 というかやはりこの世界のことを、他国と言ったのが間違いだったなあ……。面倒くさがらずにクラエリアと同じように説明すべきだった。


 そんな感じで俺たちはこの後に病院に出向いてから自宅に帰った。






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 その後しばらくしてとあるスレ。


『なんかプロ野球選手の浅原が、ヒール・レジステーションで肩が治ったとか呟いてる。ミアレスちゃんに魔法かけられたとか。本人も信じがたいけど、そうとしか思えないって』

『ネタやろ。オタク趣味ありますアピールか』

『ただ浅原って二軍で肩ぶっ壊したってニュースあったんだよな。下手すりゃ選手生命終わりの怪我な。そこから僅か数週間で一軍登板は意味不明過ぎる。魔法って言われた方が説得力ある』

『説得力の意味を辞書で調べてこいアホ』

『これディアボロス・クエストのスレで話す内容か?』

『実際のところ、なんで治ったんやろなあ』

『浅原のSNS覗いたら、リプでディアボロス・クエストの話題振られて困惑してたわ。自分でネタ振っといてアホちゃうか』

『意味不明で草』

『なんでや。浅原が本当にミアレスちゃんに治してもらった可能性あるやろ』

『お前の頭を治すのに魔法が必要そう』

『そういやミアレスってゲームでなにしたキャラだっけ(痴呆』

『回復魔法世界トップが明言されてる大教皇。死にかけた主人公を回復させてた。まだ十八くらいなのに未亡人疑惑ある謎キャラ』

『未亡人? 好きな人がいた匂わせ程度じゃね?』

『そういやそうだったわ。サンクス』



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Q.なんでミアレスは日本の文字とか読めるんですか?

A.ゲームの世界の住人だからです


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