ゲーム世界に転生した俺が、現実世界に戻れたら運命変わった件 ~ゲーム世界を現実の力で無双してたら、現実世界でも話題になってます~
純クロン
第1話 日本に転移
「ごほっ……ラグナロク騎士爵よ。本当に我が娘を救う手立てがあるのか!?」
「はい。ございます」
玉座の前で跪く俺に対して、王は驚きのあまりか大きな声で叫んできた。少し風邪気味なのかせき込んでいる。
「我が娘は病に侵されていて、どんな医者も諦めておるのだぞ!」
「存じております。ですが大賢者の作った伝説の薬があります。それを飲めば姫様も助かります」
「ほ、本当か!? 本当に我が娘は助かるのか!? ごほん……まるで救う手立てが見つからなかったのだぞ!?」
「我が家名にかけて約束いたしましょう」
俺は元大学生の日本人だったのだが、『ディアボロス・クエスト』というゲーム世界にとある少年キャラの姿で転生した。今の名前はファンタジーらしくスレイン・ラグナロクだ。
そんな俺はアーレーン国の王城玉座の間で謁見を行っている最中である。
このアーレーン王国は俺の領地の属する国で、『ディアボロス・クエスト』で魔王軍によって最初に滅亡させられる国だ。
だがこの世界はゲーム本編開始の直前なのでまだ残っている。そしてアーレーン王の娘、つまりアーレーン姫ももうすぐ病気で死ぬはずのキャラだった。
「ラグナロク騎士爵よ! ならば我が娘を救ってみせよ!」
「ははっ!」
「頼むぞ……んんっ」
王は最後に喉を鳴らした。少し調子が悪そうだな。
こうして王との謁見は終わって、俺は玉座の間から出ていく。そして与えられていた部屋に入って扉を閉めると。
「どうだった? うまくいったかな?」
彼女は俺の仲間のクラエリア・クラウンだ。エメラルドの色のショートヘアを肩まで伸ばして、シルクハットをつけている。さらに服はカラフルな上に色も左右非対称でと情報が多すぎる。
そんな情報過多なこの少女は俺の仲間である。
「ああ。姫様を治す許可を頂いたよ。これで邪魔されずに解呪できそうだ」
「それはおめでとう。せっかくスレインを慰める言葉を用意していたのに残念だねぇ」
「ちなみにどんな言葉を用意してたんだ?」
「失敗した? いえいえお気にせず! ああ! 哀れな姫様が運命の元にお亡くなりになるだけ。そう、スレインが失敗したせいで! アーレーン姫は哀れな石像になり、新たな悲劇が生まれるだけ!」
「慰める気ゼロだろ」
「ボクは道化だからね」
ケラケラと笑うクラエリア。
こんな彼女だが『ディアボロス・クエスト』における隠しボスだったりする。
ゲームでは絶対に仲間にならないキャラだが、俺はチートすら生ぬるい方法で彼女を手懐けたのだ。
クラエリアだけは俺が転生者であることや、この世界がゲームであることも知っている。教えることが仲間になる条件のひとつだったから。
「それでどうするのー? 本当に行くのー?」
「もちろん行くさ。この世界にアーレーン姫を救う手立てはないからな」
俺は『ディアボロス・クエスト』のことなら知り尽くしている。だからこそ断言できるのだが、この世界にアーレーン姫を救う方法はない。
だがこの世界の医療技術では彼女は治せず、彼女は死ぬ運命にある。回復魔法は身体の傷こそ治せるが病には大した効き目がない。
酷い話だ。アーレーン姫と俺は同じだ。世界に死ねと言われているに等しい存在。
つまり彼女は救えない、それがこの世界の摂理だ。
…………ならば、この世界でない力ならばどうだ?
この世界は魔法こそあるが、文明的には中世ヨーロッパレベルで、病気に対する医療はあまり発達していない。
つまり地球よりも明らかに医療技術は低いはずだ。世界史でも黒死病とか習ったけど、あれも今なら薬で治ると聞いた。
――じゃあ地球から風邪薬とか持って来れば死なないのでは?
俺はこの世界で魔法を学んで転移魔法を会得した。転移は自宅へワープできる魔法だ。
この魔法はどれだけ距離があっても、別次元の世界だろうとも転移できる。この世界では魔王の国が別次元の世界にあるから、転移魔法は別世界だろうと関係なく飛べるのだ。
そして俺は日本からの転生者だ。つまり日本にも家を持っていたわけで。
「クラエリア、俺の手に掴まれ。地球に飛ぶぞ」
「わーい。ボクはアイスクリームとやらが食べてみたいなー♪」
「身体に抱き着けとは言ってないんだが」
「固いこと言わないでよ。美少女に抱き着かれて嬉しいでしょ?」
「自分で美少女とか言うな。我が望みよ、空を翔けよ。テレポート」
俺は地球へ向けて転移魔法を使った。
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