第23話 『搭乗場所』

 タイムマシン起動までに、若干の猶予があったためか、ドク博士と助手くんは、心に余裕をもってしまいます。

 ですが、時間があるからといって、起動そのものを止める事は出来ません。

 その事に気づいたドク博士と助手くんは、再び慌てだし、きゃんきゃん言い合いを始めてしまいます。



「何をやっておる、助手くん! 早くタイムマシンに搭乗せんか!」

「博士コソ、取り消しコードを拒否するプログラムを取り消すプログラムを、開発シタラどうなんデスか!?」



 せっかく残された時間も、収拾のつかない言葉の応酬で少しずつ浪費されてしまいます。

 とうとう痺れを切らしたドク博士は、決して素早いとは言えない動作で助手くんの背中側に回り込むと、その身体を爆弾型のタイムマシンに向かって無理やり押し付けます。



「博士!? 何ヲするノデスか!?」

「さっさと、タイムマシンに乗るのじゃ〜っっ!!」



 それでも、助手くんはタイムマシンの表面に両手をつき、背中を押して来るドク博士に抵抗します。



「ヤメてクダさい、博士! 大体、サッキから搭乗と言ってマスガ、このタイムマシン、乗るところが無いジャナイですか!?」

「乗るところはちゃんとあるわい! このタイムマシンのてっぺん、頂上じゃ!」



 瞬間、助手くんは絶句してしまいます。

 タイムマシンの大きさは、ドク博士の約2,5倍。今、目の前に見えるのは某国の城壁のようにそびえ立つ、タイムマシンの表面。助手くんはそこから静かに視線を頂上へ移動させるように首を持ち上げます。



「エ……と」



 ドク博士が「乗れ」と言った部分は、助手くんのいる位置からでは、全体を確認する事は難がありました。が、それでも、操縦席らしい部屋や、身体を固定するための椅子は確認出来無いことは見て取れました。


 その事を知った助手くんは、背後からは今もなお、弱々しい力でドク博士に背中を押されているにも関わらず、突如、タイムマシンから両手を離し、肩から力が抜けたかのように、両腕をだらりとさせます。


 それを見たドク博士も、うっかり背中を押すのを止め、顔色をうかがうように話しかけてしまいます。



「お……? どうしたのじゃ、助手くん? やっと搭乗する気になってくれたのかの?」



 その声に助手くんは無反応で振返ると、右腕を右関節辺りで『くにっ』と曲げて、ドク博士にこう問いかけました。



「博士――頂上には、何も付イテイ無いみタイですけド、どうヤッテ乗るンデスか?」

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