第20話 『無茶振り』
瞬間、ドク博士は口元に、助手くんはまるで万歳するみたいにものすごい勢いで両手を上げ、手にしていた『イーの次元理論』ノートを真後ろに放り投げると、ほぼ同時に悲鳴を上げてしまいます。
放り投げられたノートは、何処か、ふたりを憐れむようにふわりと宙を舞うと、イーの最後の言葉が入った音声再生機器が置かれた長方形のテーブルの上に、軟着陸を見せました。
「な、何でじゃあ!? 何で、導火線に火がついておるのじゃあ!?」
「そうイエバ、さっき博士ガ自分で導火線に点火サセましたヨネ!?」
タイムマシンの前を助手くんと慌てふためきながら右往左往していたドク博士は、時を止められた様にぴたりと止まり、ゆっくりと助手くんの方に身体を振り向かせると、右手で自分の事を指差し、こう訪ねました。
「儂が……点火した?」
「点火シましタ」
その驚愕で残念な真実に、ドク博士と助手くんは一コマほどの間、お互いの顔を見合います。直後、ドク博士は左手で握り拳を作ると、右手の平をぽん、と叩き「あ~」と、声を漏らしました。
「うん。儂、確かに点火したわ」
何を思ったのか、ドク博士は急に腕組みをし、非常に冷静な態度で『うんうん』と頷きながら導火線を点火した事を認めました。
「何でソんなに、冷静にいられるんですか」
何故か助手くんも、ドク博士に合わせる様に右腕で突っ込みの動作をし、冷静に対処してしまいます。
「これは……あれじゃな」
ドク博士は頷くのを止め、真面目な顔になると、タイムマシンに向かって指を差すなり、こう言ったのです。
「さあ、助手くん! 急いでこのタイムマシンに搭乗するのじゃ!!」
「ええエエぇぇェェええエエぇぇ!?」
あまりの無茶苦茶な言い分に、助手くんの顔にはギャグ的な縦線が数本入り、上下に伸び縮みしてしまいます。
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