第18話 ダンジョン封印されて草


「このダンジョンは規格外すぎる。一層でA級ボスクラス、死人が出てないのが奇跡だ。攻略は中止だ」


 ・芹沢ニキ心折れてて草

 ・流石に即死コンボくらいかけたからしゃあない

 ・5分で配信終了はあかんでしょ


 巨大ゴブリン戦後、破壊された壁の向こうに階段があることを発見すると芹沢さんがそう口にした。

 俺はデバガメにしに来たので、これだけ面子揃えたのにもう終わりなのかと思うが、実際先ほど危うい場面に遭遇して大惨事になりかけたのでしょうがないだろう。


「仕方ありませんね。この決着は後日」


「ふん! 小娘がいけしゃあしゃあと!」


 まだ喧嘩していたのか、デスマRとみなぽんが互いに悪態をつきつつ来た道を戻っていく。


「なんだこれ進めねえ!」


 俺もついていくかと思うと、先頭を行く一団が声を上げた。

 見ると透明な何かに遮られているようで、立ち往生していた。


「バリアか何かか?」


 芹沢さんが先頭に来て、大剣を振り下ろすも障壁に干渉できずに地面に抉るだけだった。


「攻撃が通用しない!?」


『攻撃無効と外界の遮断の二つの特徴より封印と断定します』


 芹沢さんがおどいた声を上げると、不可解な障壁の正体をバビロンが特定した。


「封印? 解除するにはどうしたらいい?」


『形成術式の解除か。封印を起こす媒体の破壊または封印解除に設定された目標の達成が必要になります。なお形成術式の解除には4日要します」


 解除に4日か。

 飲まず食わずだとしたらぎりぎり飢え死にしそうだ。

 引き返して外に出る転移門まで行くか、封印を起こす媒体を破壊しに行くしかないか。


「転移門まで進めって言うのか、このダンジョンを……」


 スキルで隠し扉を探し当てた桐原さんが絶望したようにそう呟く。


「休日に様子見に来たやつばっかでろくな装備もねえのに無謀すぎるだろ。さっき派手に暴れた天野の気力も魔力もいつまでも続くものじゃねえし」


 それから攻略隊トップの芹沢さんが放った言葉によって空気が完全にお通夜になった。


 攻略する前にこれはまずいだろ。

 見る側からしたらトップ攻略者集団と有名配信者が死んだ顔で攻略をするのなど見たくないだろう。

 俺も休日にそんな大惨事をリアルタイムで見たくないし。


「気力と魔力なら大丈夫ですよ。やるしかないのに弱音吐いたってしょうがないじゃないすか。俺、状態異常効かないし、防御力高いんで先頭行きますね。芹沢さんたちは俺の後から来てください」


「お前……!」


 一応理屈は通したつもりだが、トップとしてのプライドがあるのか、こちらを睨むように見上げてきた。

 モニター越しだけど圧がすごいな。


「チ。本当みたいだな。勝手にしろ。天野の後から行くぞ」


 大丈夫これと思うと芹沢さんが俺の内心を察したのか視線を外して、指示を飛ばした。

 指示をもとに攻略隊が動き出し、リスナーに状況を説明していた配信者たちも続いて動き始める。

 若干投げやりだがやる気になってくれたようで良かった。

 ノリノリで攻略する様子が見たいので、あわよくば危なげなく攻略するところを見せてテンションを上げてくれればいいが。


 ───


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