第13話 ダンジョンオリエンテーションVIP


「すまないな。助かった。感謝してもしきれまい」


 負傷した生徒をリペアを掛けて全快させると渋い言葉使いの女生徒がこちらに礼を言って来た。

 よく見るとこの人は入学式で登壇していた生徒会長だ。

 確か名前は七海だったか。


「いや、そんなに気にしなくてもいいですよ。自分が嫌な思いしたくないからしただけなんで」


「君は命をかけて我々の窮地を救ってくれたんだ。こちらは気にせざるを得ないさ。この借りは必ず返すよ」


 こっちとしては割と苦労せずに助けられたので、あまり感謝されるとコンビニでお釣りを余分に貰ってしまった時のような気分になってしまう。


「すげえぞ、お前!」


「天野くん、かっこ良かったで」


「ハリウッド映画みたいだったにゃ!」


「や、やるじゃない! 流石に実力を認めざるを得ないわね!」


「す、すごいよ! 天野くん!」


 生徒会長とやり取りをしていると、背後からシラメさんたちの声が聞こえた。


「見てたんですか」


「流石に後輩1人置いて行けないにゃ」


「まあ1人引き戻すくらいならできねえでもなさそうだからな」


「ウチは先に行って欲しいと言われるとその場に残りたくなるタイプやから。ごめんね」


「あ、あんたが逃げようと思う前に倒しちゃったのよ!」


「皆動かないし……。天野くんなら、もしかして……と思って」


 色々と心配させたりして振り回してたみたいだな。


「すいません。心配させてみたいで」


「謝る必要なんてないにゃ。不甲斐ない私たちに代わって体を張ってくれて生徒を助けてくれたからにゃ」


「俺たちもクソみたいな思いせずに済んだからな。天野には感謝してるくらいだ」


「ウチもスッキリしたし、いつでも力貸すことにするわ」


 できた先輩たちだな。

 他人事なのにここまで感謝してくれるなんて。

 割と大切な縁ができたかもしれない。


「天野くんか。私も君の名前は覚えたぞ。ここまで入学初日で先輩から認められた生徒は学園史でもいないだろう。ビッグルーキーが来たな」


「ふん、偉そうにしちゃって。モンスターにやられてたくせに」


 あ、バカ……。


「お前!」


 稲葉のノンデリ発言を聞いて、生徒会長のパーティーらしい男子生徒がキレた。


「な、何よ……!?」


「会長は先にモンスターハウスの中に入った生徒を助けるために同じように中に入ったんだぞ! 途中までは善戦してたところをゴブリンナイトが人質をとって不意を突かれただけで本当なら勝ってもおかしくはなかった!」


「やめてくれ郷田。同じ条件で天野くんは勝ってる。分不相応にでしゃばった私の失態だ。批判は受けるべきだろう」


「会長……」


「にゃにゃにゃ♪ 皆助かったから結果オーライにゃん♪ 皆お疲れみたいだし早く地上に行くにゃ♪」


 一瞬空気が死にかけたが、シラメさんのフォローのおかげ持ち直した。

 丸く収まってよかった。

 やっぱシャムにゃんしか勝たねえわ。


   ────


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