消えたデータ~7通目の手紙

神様へ

 この間から録っていた盗聴のデータが消えてしまいました。犯人に見つかって、消されちゃったのかな?


 あの後、みんなに事情を話した。


 僕たちが、お姉さんに連れられて本屋にいた時だった。

 愛のお父さんが、何か気になる事があったら話して欲しいと、みんなに聞きに来た。


「愛のお父さん警察だし、あのデータ見せたら解決してくれるんじゃない?」

 芽依がそう言うと、みんながうなずいた。


「いや、僕はそうは思わない。今、犯人が見つかった訳でもないし。誰が犯人かわからないなら、まだ隠しておいた方がいいと思う」

 湊斗だけがそんな意見だった。


「私のお父さんが犯人の可能性もあるって事?」

「いや、そういう訳じゃない。でも、言うべきではないと思う」

「その言い方だと愛が言うように、湊斗は愛のお父さんが犯人って言ってる様にしか聞こえない」

「でも、湊斗の言っている様に、これを見せた事で誤解が生まれたらどうしよう」

 確かに、湊斗の言っている事も、芽依の言っている事も正しかった。


 結局、多数決で言う事になった。


 その次の日の放課後、愛がお父さんを本屋に連れて来て、データを見せる予定になっていた。


 でも、学校が終わって本屋に着いた時、データが消えていた。


 僕たちは、一気に顔が青ざめた。


「何か気になる事はあった?」

 そこに、愛のお父さんがやって来た。

 僕たちは怖くて固まってしまった。みんなも何も言えなかった。

「気になる事って例えばどんな事ですか? いまいちどういう事なのかわからなくて」

 湊斗が、僕たちが話せなくなったのを見て話してくれた。

「確かに、そう聞いてもわかりにくかったね。申し訳ない。うーん。例えば、誰かがいつもしない事をしているとかかな」

「なるほど。今の所何もないです」

「まあ、そう言う事じゃなくても、不安な事があったり聞きたい事があったらいつでも言って」

 そう言って、愛のお父さんが出て行った。


「レコーダーって勝手に消える事あるの?」

 そう彰が口を開いた。

「誰かが消したんでしょ?」

 芽依が周りを見渡して言った。でも、みんな一緒に来たのに、そんな事が出来たのだろうか。


「いや、その可能性はないと思う。みんな集団行動だったし、誰か一人が消せるとは思えない」

「じゃあ、何人かでやったって事?」

「湊斗、芽依。その話はやめよう。キリがないよ」

「じゃあ、他に何を言えるの?」

「そもそも、芽依はもっと後の事を考えた方がいいと思う。誰が消したかがわかっても意味がない」

「もうやめようって!」

 僕は、湊斗と芽依の仲に入って止めた。

「犯人に消されちゃったとかかな?」

「いや違うでしょ。これって元々本屋さんのなんだよね? 勝手に使ってた事がバレて消されちゃったんじゃないの?」

「でも、何も言ってなかったよ?」


 僕は、この間の事を思い出した。

 

 いつも、本屋の奥にあった台で手紙を書いていた。

 だけど、出す前の手紙をなくした時があった。もう戻ってこないと思ってたけど、本屋に行ったらいつもの台に置いてあって手紙は後から出せた。

 多分、本屋さんが見つけて置いたんだろうけど、その時も何も言ってこなかった。

 あの人は、あまり話さないし、何か隠しているようで不気味だ。


「本屋さんが犯人なんじゃないの?」

 その言葉を聞いて、僕は鳥肌が立った。

 もし、中身を見られていたら、僕が探っているのがバレているかもしれない。

「確かに。データは初めの数時間は何も入ってなかったから、間違えて録画していたと思って消した可能性が高そうだ」


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