第30話 花人


「行くぞ!アキ」

「おう!」

 扉に魔力を込めると開き元の世界に帰る。

「た、タカ様!」

「悪いなルメラ、力を貸してくれ」

「は、はい!なんなりと!」

「アキ、お前はエリサに言ってこい!じゃないと後悔するかもしれないぞ?」

「あぁ、早まるなよ?」

「分かってる」

 と5人に集まってもらいこれまでの話をした。

「じゃあ最初から勇者は2人だったのですか?」

「まぁ、結果的にそうなるな」

 そうなんだよな、最初からそっちの世界に呼んでくれても良かったのにな。

「私達も連れて行ってください!」

「そうです!」

「多いほうがいいですしね!」

「みんな…ありがとう」

 チャイムがなりアキが来たようだ。

「タカ!行こうか!」

「アキをよろしく頼みますね」

「あぁ、エリサもありがとう」

「って、やっぱタカなんだね!びっくりしたよ!何その変わりようは?」

「いきなりかよ」

「あはは!私は信じてるからアキをよろしくね」

「任せろ!」

「そうだ!サイラスも呼ぼうぜ!」

「サイラス?」

「いいから早く」

 扉を異世界に繋げると、宿の2階の踊り場に出る。

「行くぞ!」

「あ、あぁ」

 走ってサイラスのところへ行く。


「なに!そんなこと聞くなよ!行くに決まってるだろ!」

「な!」

「ありがとう」

「あはは、タカっぽくないじゃないか!まぁ見た目も変わったけどな!」

「笑い事じゃないぞ?人種まで変えられたんだから」

「あはは!相変わらずタカはすごいな!」

「よっしゃ!これで人間に魔族、エルフ、獣人、ドワーフまで揃ったぞ!神も無視できないだろ!」

 とアキは笑っている。

「ハハッ、あぁ、俺らを無視できるわけがないだろ!」

「よし行くぞ!」


 扉を現代にそしてガーベラのいる世界に繋げる。


「ただいま」

「お、おかえりなさい、こんなに沢山の?」

「俺の仲間だ」

「そうですか、よろしくお願いします」

「あぁ!花の勇者とその仲間が助けてやる!」

「やめろバカ!花の勇者ってカッコ悪いだろ!」

「えー、かっこいいと思いますよ?」

「嫌だ!」

「あはは!んじゃとりあえず馬車でも調達するか!」

 とガーベラに手を振り外に出ると、まずは馬車屋だな。


 大通りのようなところに馬車屋があったのでそこで買いたいと言うと、

「馬車に馬二頭で50ルピーだ」

「あ、こっちの金がないな!これじゃダメか?」

「ん?金貨か、まぁいいだろう、これで交換だ」

「良かった」

 なんとか馬車を買った俺たちは村を出る。

そのまま一直線に向かう。何故かって?大樹ユグドラシルはこんな遠くからでもわかるくらいでかい樹木だからだ。

「ありゃ相当でかいぞ?」

「だな、あれの中に入って行くんだろ?」

「でもダンジョンならいけますよ!」

「そうだな!」

 途中で魔物を狩っていき、村のギルドに卸す。金を得るためだ。

「たまには宿に泊まらないとな!」

「だな!」

「でも花人を見ないが大丈夫なのか?」

「奴隷にされると言っていたからどこかに隠れ里でもあるんだろうな?」


 と次の街でも魔物をギルドに卸すと、

「お!花人じゃねえか!いい金になるぜ!」

「あ?お前が俺に触れるな!」

「あんだこいつ!花人のくせに!」

 剣で腕を斬り落とす。

「ウギャアァァァァァ」

「五月蝿い!ヒール」

 腕はないまま治してやる。

「お、お前ら花人なんてもう希少価値しかないんだぞ?」

「それがどうした?」

「くっ!覚えとけよ!」

「うっせぇ!!」

 と蹴り飛ばし、宿に戻る。


 宿の下、みんなで酒を飲んでいると、

「おう!ここに花人が!いた!クセェ匂いだぜ!おう!買ってやるよ!こいつはいくらだ?」

「あ?人の仲間に値段つくか馬鹿野郎!」

 サイラスがぶん殴るとそいつは壁にぶち当たる。

「グゥッ!クソッ!やっちまえお前ら!」

「死ぬ覚悟ができたやつから来い!」

「クッ!こ、こいつ本気ですよ!」

「いいからいけ!」

「ウオオォォ!」

「なんてな!サンダークラッシュ!」

「アガバババ」

 まぁ、生きてるだろうな?

「ほら、早く来いよ?来ないならこっちから行くぞ?サンダーショック」

「アビパパパパッ!」

「に、にげろ!」

「く、花人のくせに魔法なんて使いやがって」

 と逃げて行くバカどもはほっとくと、また飲み直しゆっくり寝る。


 次の日も快調に飛ばして行く。見えてるが遠いなぁ。中心に向かうほど栄えている。

 街や村が多くなってくると魔物も増えるな。


「おい、なんだこりゃ?」

「はぁ、ひどいな」

「うそ、私達よりも」

 そこには奴隷にされ連れて行かれた花人の死体があちらこちらにあった。

「おい!肥料はまだあるか?」

「こっちにも分けてくれ」

 肥料と呼ばれるのは花人の死体だった。


「胸糞悪いんだが!」

「あぁ!これはどういうことだ?」

「おっ!花人があるじゃないか!それ売ってくれ!」

 悪びれない男達は肥料だと思っているのだろう。

「おい!殺すぞ!」

「な、なんだよ!悪かったよ!お前らの花人はいいや、あっちで買ってくるさ」

 あっちで買ってくる?

「見に行くぞ」

「あぁ!」


 そこには花人の死体が山のように積んであった。

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