第28話 蕾、そして


 一年があっという間に過ぎた。

「タカ様、ご飯できましたよ!」

「おう!今行く」

 アーシェが呼びに来てくれたから下に行くと、ルメラが今日は飯を作ってくれたみたいだな。

「美味いな!」

「えへへ、ありがとうございます」

「ところでリズは?」

「またあの子は…呼んできますね」

「いやいいよ、何か作ってる最中なんだろ?後でおにぎりでも持って行ってくれ」

「ふぅ、そうします」

 リズが本格的に鍛治をできるように隣の家を買い取って鍛冶場を作り、家を増築した。


 あれからアキは結婚して一児のパパだ。

『でさ、エリサが』

「お前何回同じ話してんだよ?切るぞ?」

『だぁ!ちょっとまって、あのさ、またダンジョン行かないか?』

「あのな?お前はもうパパなんだろ?危ないことはよせって」

『いや、依頼がたくさん来ててな』

「それは他の冒険者に回してやれ」

『俺もたまには』

「俺がエリサに怒られるわ!」

 と言って電話を切る。


 本当にあいつは、他にやることあるだろ。

 

 異世界の方はまだサイラスが勉強中だが、簡単な自転車擬きが走っているのは驚いた。

 商業ギルドのギルド長に頼まれて三ヶ月に一回くらいで卸しに行っているが、それも多分なくなるだろう。

 サイラスが凄い勢いで勉強してるのでシャンプーなんかは自作するのは簡単だろうな。


 あれからはダンジョンに潜ることはないが、直人が出したBlu-rayは今や冒険者の必須アイテムになっている。

 あいつもうまいことやったから億万長者だな。


 という感じだ。

 未だ才能の種がなんなのかわからないが、俺はこの5人と日本で慎ましく暮らして行く。たまにダンジョンに潜ったり、アキと遊んだり、サイラスに会いに行くのもいいな。


 と思っていたある日、

 …体が動かない?

 突然の出来事で何が起きたかわからない。

体から魔力が抜かれていき殻に籠るように目の前が暗くなって行く。

 意識が遠のいて行く…これは死か?

 とここで俺の意識は途絶えてしまった。



 次に目覚めた時はまだ暗い中どこにいるのかもわからないが多分あれから眠っていたのだろう。

 怖い…何故こんなことになったかもわからない。

 ステータス、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 伊能 忠隆イノウ タダタカ 36歳

 レベル 134

 職業 バッド(蕾)

 スキル 剣術 体術 槍術 二刀流 索敵 全魔法 魔力循環 気配探知 危機察知 帯電 収納 料理 剛力 瞬歩 鑑定 速読 錬金術 古代魔法 

 ユニーク 才能の蕾 限界突破 幸運

 守護 カイロスの加護

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 …蕾?

 俺は蕾になったのか?

 わからないがステータスには蕾と出ているのでこれ以上のことはわからない。

 魔法を使おうとすると吸われて行くのがわかる。

 まだなのか?

 

 腹も減らなければ尿意なんかもなく、ただ暗闇で過ごす日々が長いような短いような感覚すらもわからない。

 

 ようやく花開くのか魔力がガンガン吸われて行く。


 倒れるようにその花びらの中に倒れ込むと、ルメラやアーシェの声が聞こえた。

 が魔力を目一杯抜かれた後でとても眠たく、そのまま寝てしまった。


「タカ様!タカ様!」

 遠くで聞こえているようで近くなのかもしれないな。

「あぁ、もう少し…寝させてくれ」

「分かりました!」

「イライザ!2階のベッドに」

「任せろ!」


…ここはベッドか、

「はぁ、はあぁ、っ…と、う…ふはぁ!」

 ようやく起きれたな。

「タカ様!よ、ようやくお目覚めに!」

「あぁ、おはよう!なんか清々しいな!」

「タカ様、だいぶおかわりになられたようですが」

「ん?そうか?」

「全体的にシャープになったと言いますか、中性的な神々しさすら感じます」

「??そうなのか?俺にはまだわからないが声は少し高くなったのかな?」

「はい!」

 ん?ステータス、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 伊能 忠隆イノウ タダタカ 36歳

 レベル 134

 職業 花人

 スキル 剣術 体術 槍術 二刀流 索敵 全魔法 魔力循環 気配探知 危機察知 帯電 収納 料理 剛力 瞬歩 鑑定 速読 錬金術 古代魔法 

 ユニーク 限界突破 幸運 自由な心

 守護 カイロスの加護

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「は…なびと?」

 なんだなんだ??と上から順に見て行く。

 ユニークの才能の蕾がなくなっている。

 自由な心?

 なんだよこれ?人間辞めたのか俺?

「ルメラは花人って知ってるか?」

「いいえ、存じませんが?」


「だよなぁ」

 わからないのはしょうがないからシャワーでも浴びてスッキリするか。

「よし!わからん、シャワー浴びてくる」

「は、はい!」

 部屋から出てシャワーを浴びに行くと洗面所で自分の顔を見る。

「?だれだこれ?」

 俺の顔か?面影はあるがルメラが言ってたように中性的な顔になっているな。

 それに髪の毛も長いし真っ白だ。

「えー?なんだこれ?」

「タカ様ですね」

「いやそう言われればそうなんだが」

「髪は後で切りにいきましょう」

「んー、今から行くか、その後シャワーだな」

 と言って服を着替えるとブカブカになっているがしょうがない。

 近くの美容院に行って髪を切ってもらう。

 自然な感じにとお願いしたら長めのマッシュになってしまったな。

 家に帰ってシャワー浴びてみるとあそこの毛まで真っ白だ。というかまつ毛も眉毛も白いな。

 んー、いまはそこまで気にしないだろうがこれはあまり好きじゃないぞ?でもまつ毛なんか染め出したら大変だからこのままか。

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