才能の種
あに
第1話 才能の種
ここ何処なんだろうな…
俺はさっきから同じ道を歩いているみたいだ。
さっきからやたら種が落ちてるから拾ってるけどなんの種だ?
そろそろズボンにもポケットにも入らなくなって来たけど、どうしようかな?
もうポケットに入らなくなって手に持って歩いていると光が急に通り過ぎ、
「何処ここ?」
「勇者様の降臨だ!!」
と誰かが言ってガヤガヤとうるさくなる。
見た感じ石造りのドーム?のようなところだが?
「皆の者!鎮まれ!」
1人の若い男の子が叫ぶとシーンと静まり返る。
「えっと…」
「失礼しますがあなたは勇者様ですか?」
「は?いえいえ、私はしがないサラリーマンですが?」
と返す、誰が勇者だよ?
「…え?」
「え?」
「失礼、あの選定の儀を執り行っても?」
「え?は、はい」
あまりに真剣な顔につい、ハイと答えてしまった。
「ではこちらの水晶を触ってもらえますか?」
大きな水晶だなと思いながら触る。
「…はぁ、勇者召喚は失敗しましたね。えっ?」
「えっ?!」
こっちを向いて驚く男の子にびっくりして後ろを振り返ると、そこには俺に因縁をつけて来た男がこれまた「え?」と言う顔で入って来た。
「おぉ!其方の方だったか!」
「お?なに?」
戸惑ってる男。
「こちらに来てこの水晶を触ってくれ」
「ん?え?え?」
俺を見て水晶を見るので頷くと、
「ま、まあ」
と手をつく。
「やはりあなたが勇者でしたか!!これでこの国は救われる!」
「は?」
は?このヤンキーが勇者?
「この国は今魔王が攻め込んで来ていて、もう貴方に頼るしかないのです!」
「は、はい?いやいやわけわかんねーし!」
「いえ!よろしくお願いします」
「だからなんだっつーんだよ!おいオッサン!なんとか言えや!」
俺に突っかかって来ても困るし。
「いや、私も分からないんだよ。気付くとこんなとこにいたんだ」
「は?オッサンもかよ?んじゃお前、ここは何処だよ?」
「はい!ルーデンシア王国の南西に位置する転移の祠です」
「ルー?…転移?」
ルーデンシア王国?転移の祠?ゲームみたいだな。
「そ、それより家に帰りたいんだが?」
俺は無関係なんだから帰してくれるだろ。
「勝手に帰りなさい」
と冷たく言われる。
「は?」
「だから、貴方は私達の知らない人ですから勝手にしてください」
なんて勝手な言い分だ!
「なぁ。俺は帰れないのか?」
「いえ、貴方様は勇者ですのでこちらが住まいをご用意させていただきます」
「いや、元の場所にだよ」
「魔王を倒せば帰れますよ」
いかにも胡散臭いなぁ。
「胡散臭い…証拠を見せろ!」
「はぁ、これは真偽の鏡です。勇者が魔王を倒せば元の場所に帰れます」
『はい』
おーっと、鏡がしゃべった。
「貸せ、俺は女だ」
『いいえ』
「くっ!本物みたいだな」
そうみたいだな。それより、
「私も魔王が倒されたら帰れるのか?」
『はい』
勇者ヤンキーの前に顔を出して真偽の鏡に聞くと帰れるらしいのでちょっと安心した。
「オッサン!そりゃないだろ?俺だけで魔王ってやつを倒すのか?」
「いえ、聖女、賢者、あとは騎士団達が仲間です」
「お、…おう」
凄い過保護っぷりだな。
「わ、私は何をすれば?」
「は?そこらへんでくたばって構わないですよ?」
「アッハッハッハッ!」
「いや笑い事じゃない!こちらに呼んだのがあなた方なんですからなんとかしてください」
「はぁ、だから勝手にしろと言っている!それ以上言うと斬る」
「くっ!」
なんだよ斬るって!アホじゃないのかこの子供!
「オッサン!お疲れ!」
「は?いやいや私をこのまま置いて行く気ですか?」
「当たり前でしょ?能無しは要りません」
能無し?呼んどいて?あまりにも酷いじゃないですか!
「貴方ねぇ!グハッ」
き、斬られた!
「ガハッ、はぁ、はぁ、はぁ」
「おいおい、何も斬ることないだろ?」
「はぁ、わかりました、ヒール」
傷が癒えていくが服が切られたままだ。
「お前は勇者様の意思で生かされた!このまま私達が出るまでここにいてもらう!」
「は、はい」
怖くてもう逆らう気がなくなった。
「では勇者様、行きましょう」
「お、おう」
ヤンキーも簡単に人を斬るあいつが怖いようで後をついて行く。
私は後ろ姿を眺めることしかできなかった。
皆が出た後、俺は一人でどうしようかと考えていた。ゲームの世界であればステータスが、
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レベル1
職業 未定
スキル
ユニーク 才能の種
守護 カイロスの加護
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本当に何もないのか?才能の種ってなんだよ?
才能の種ってあれか?拾って来たやつか?そういえば無くなってる。
いや、それよりもここがゲーム寄りの世界だとして魔物がいるってことだよな?
俺には武器なんかないんだが?
どうやって生きろと?
「とりあえずはここを出てみるか」
ここはルーデンシア王国の南西と言っていたから北東に向かえばいいだけだ!
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