五界大戦~五つの異世界”が”召喚された件~

水村ヨクト

第1話 不滅のプロローグ

 意識が朦朧としている。何が起こったのか、分からない。

 宰吾は揺れる視界の中、目の前の景色を何とか捉えようとしていた。

 会議室のような部屋。人が、ひぃふぅみぃ……三人。自分は、ベッドで横になっている……?


「目が覚めたか。不知宰吾しらずさいご


 真ん中に立つ、スーツの男が口を開く。年齢は……三十代か。いや、四十代? 貫禄があるようなないような、掴みどころのない容貌だ。


「……ここは?」


「詳細な場所は言えないが、安全だ」


 宰吾の問いに淡々と答える男。両隣の男と女は黙りこくっている。男の方は、還暦くらいだろうか。上品だがどこか嫌な空気を纏っている。いや、この人見たことあるぞ……?

 そこで宰吾は気づいた


「こ、国防長官!?」


 勢いよく飛び上がった宰吾は、反動で首を痛めそうになった。


「知ってくれているようだね。いかにも、私は国防長官を任されている、護国寺ごこくじ隆宗たかむねだ」


 ニュースでしか見たことのない存在を前に、宰吾の心臓は拍を早める。


「って……じゃああなたは何者……?」


 女性の方は見るからに護国寺長官の秘書である。では、この真ん中のスーツの男は……。


「私は、ロキとでも名乗ろうか」


「……は?」


 ……中二病?

 状況にそぐわぬ北欧神話の名前が飛び出してきて、宰吾は思わず間抜けな声を上げてしまった。


「まあ、無理もない……が、もう世間は突然現れた“神”の存在にてんやわんやしているだろう。これくらいは受け入れてもらいたい」


 爽やかな笑顔で言うロキ。

 なんだ? なんなんだ? 神? 一体どういうことだ?


「おや、記憶が曖昧かな。まだ意識がはっきりしていないようだね」


 顎に手を当て、首を傾けるロキの表情はやはり何とも掴みどころがない。


「まあいい、単刀直入に言う。不知くん」


 ロキはネクタイを締め直し、軽く咳払いをした。

 宰吾は喉が渇き切り、そのくせ額や脇は汗でびっしょりだった。


「キミに日本を救ってほしいんだ。突如現れた四つの異世界を又にかけて」


 は? 日本を……救う?

 四つの異世界……?

 待て待て待て待て。一旦落ち着こう。

 頭をぶんぶんと振ってみる。深呼吸をして、無機質な天井を見上げる。

 そうだ、思い出せ。ここに至った理由を。

 ただただ不滅なだけの平凡なヒーロー、不知宰吾がこんな状況に置かれているまでの、いきさつを。

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