第44話 アレクシアとラファエル

 翌日、2人は前夜の誤解を笑い話にしながら、この小さな冒険を次の段階へと進めることにしたようだ。

 昨日の反省から今度は乗り合い馬車での移動を選択した。

 しかし、都合の良い乗合馬車が見つからず、結局チャーターすることになった。


 目的地は主要街道から外れる旧街を通るので、定期便がなかったんだ。


 あるにはあるけど、昼過ぎの出発。


 なんだかなぁと思いつつ、馬車を扱っている店に向かう。

 馬車屋の主人は、足の早い4人乗りの馬車を勧めて来た。

 僕たちは装備している物以外荷物もほとんどないため、2頭立ての馬車であれば夕方までには目的の町に着くだろうと説明してくれた。


 ただし、その代金として金貨6枚が必要だという。

 高い出費に2人は少し躊躇したようだ。ただ、この街に戻ってこなければならず、基本的に往復分のお金になる。


「ここはケチるところではないよ。お金には困っていないし、速度重視で行きたいんだ」


 僕の意見にミンディー、メリッサも賛同した。そして、申し訳なさそうにする2人をなだめつつ、馬車に乗り込んだ。


 町を出発して間もなく、ミンディーの心は興奮でいっぱいになった。初めて訪れる場所への旅は、彼女にとって子どものようなはしゃぎをもたらした。一方、メリッサはミンディーのその純粋な喜びを見て、心がほっこりと温まるのを感じたようで、生暖かい目で見ていた。

ミンディーがメリッサがに「あれは何?」と何度も聞いていたが、嫌な顔をせず1つ1つ丁寧に答えていた。


 道中僕も窓から見える美しい風景に感動し、時には草原で見かける野生の動物にちょっと興奮した。


徒歩だとそんな余裕はないけど、馬車だと景色を見るしかないのもあるけど、景色が目に入ってくる。


 馬車が揺れる度に2人の笑い声が響き渡り、旅の楽しさが倍増した。

 何だかんだと2人は仲が良い。

 真逆のタイプなので最初は心配したんだけど、キャラが被らないからかな?心配は杞憂だったようだ。


 夕方には予定どおり今日予定していた町に到着。

 宿を探して部屋を借りるとそのまま部屋に向かい、荷物を置いたら食事にしようか?となった。


 その夜3人で今日1日の出来事を振り返りながら、これから訪れるであろう冒険について語り合うことになるとこの時は思っていた。


 この日の経験は、僕もそうだけど、ミンディーとメリッサにとって忘れられない思い出となり、2人の絆をさらに深めるものになるはずだったけど、まだ濃い続きがあったんだ。


 部屋に向かって階段を登ったところで、突然数部屋先のドアが開いた。  


「きゃー!」


 驚いたことに若い女性が悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、壁に激突したんだ。


「ふざけんな!」


 彼女の服は乱れ、その後下着姿の男が叫びながら出てきた。


 僕は一瞬固まってしまい、女の人がレイプされていると、これはまずいと思い助けに行こうとした。


 その瞬間、背後から騎士風の人物が間に割って入った。

 くう!かっけー!って出遅れた。いや、何故か行かなきゃ!と本能が告げなかったからか、少し出遅れた。


 その代わりに僕たちは、吹き飛ばされた人のところに駆け寄る。ミンディーが服の開けた彼女に外套をかけ、メリッサが抱き起こす。


「打ち身だけですわ」


 メリッサが告げると、その男が叫んだ。


「なんだてめえら!ちっ!こいつが欲しけりゃあ、くれてやるぜ!せっかく女とやれると思ったのに、バカにしやがって!てむぇは次に見たら殺してやるからな!」


 そうと息巻いて部屋に戻ると、多分彼女のと思う武器やら荷物を扉の外に放り出し、乱暴に扉を閉めた。


 とりあえずき飛ばされた人を介抱すべく、ミンディーとメリッサが僕たちの部屋に連れて行く。


 まだ呼吸が乱れており会話ができそうにない。背中を打ち付けたから、まだ苦しそうだ。


「あのう、よかったら貴方の部屋で少し話しませんか?彼女たちが服をなんとかすると思うので」


その人は頷くと手振りで案内してくれた。


服が乱れていたのもあり、ここではなんだからと僕はハスキーボイスの騎士風の人の部屋に移動することになったんだ  


 部屋に入ると彼はフードを外し自己紹介を始めた。その人は、嫌味なくらいの爽やかさを持つ、やや細身のイケメンでした。


「とんだ現場に居合わせたね。僕はラフェ・・・エル。ソロで冒険者をしている」


「あっはい。僕はバンスロットです。皆からはバンって呼ばれ、彼女たちと3人でパーティーを組んでいます」


 その場の緊張感が少し和らいだところで、メリッサが部屋に来た。


「とりあえず大丈夫ですわ。まだ少し背中が痛むそうなので、今は寝かせていますの。来てもらっても大丈夫ですわ」


 そう言うので、騎士風のラファエルさんともども僕の泊まる部屋に向かった。


「さっきは恥ずかしいところを見せちゃったわね。アタシはアレクスが本名だけど、アレクシアって呼んでね」


 吹き飛ばされたのはアレックス改め、アレクシアさんと言った。この人もハスキーボイスだな。


 僕たちはアレクシアさんとラファエルさんの2人、ともに面識はなく、共に14歳で冒険者登録をして1年経過しているらしい。2人とも基本的にソロ活動をしていた。


 アレクシアさんが話したところによると、さっきの男に臨時のパーティーに誘われ、今日は近くの森でゴブリンを狩った。1週間のお試しだが一緒の部屋に泊まることになり、部屋に入るやいなや押し倒され、犯そうと服を剥ぎ取り始めたところで男が豹変したと話した。

 そんなトラブルが多く、中々パーティーに入れないと言い、僕はハハハと乾いた笑みを浮かべるしかなかった。


「次は私の番だな」


 ラファエルさんは、ちょっとした事情からソロで活動していたけど、限界を感じており、どこか良さげなパーティーを探そうとしていた。


 2人とも15歳だと判明した。


 部屋で話を続ける中で、僕たちはお互いの状況を理解し、協力することが大切だと感じた。こうして、新たな仲間と共に、僕たちの冒険はさらに深まろうとした。


 吹き飛ばされたアレクシアさんが自分の状況を説明し始めた時には驚いた。彼はスカート姿で、髪型も女性らしかったが、実は男。名前はアレックスと言い、アレクシアと呼んで欲しいと言って上の服をまくるも、パッド?が落ちてきた。実際そ胸は男のそれだった。


 因みに筋骨隆々な男が好きで、僕はタイプじゃないから、襲ったりしないから心配しないでと言われた・・・

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