第41話 ナリアナをお迎えに行くと決めた

 僕の住んでいる町の外、宿暮らしを住むと言えるのならだけど、南に30分行った辺りにダンジョンがある。このダンジョンは出現から半年が経過するも、未だに主が発見されていない。魔物の出現数が少ないのもあり冒険者には人気がない。


 北西同様、今となっては時折魔物の間引き依頼を出して魔物を駆除しない限り、誰も魔物の駆除をしようとしない。


 だけど、僕たちにとってこのダンジョンは、ミンディーとメリッサの奴隷期間を短縮するための恩赦を得る絶好の機会だ。

 彼女たちにこの計画を話すと、ありがとうと、僕がいる場所を【居場所】と呼んでくれた。


 僕が真剣な顔で青臭いことを言うものだから、ゾーイさんが絡んできた。


「おいおいおい!偽善でうぜーぞ!手を出さずに奴隷解放したら裸で逆立ちし、3回回ってワンってしてやんぜ!」


 ゾーイさんやい、裸はいらないよ!いやいや、見たくない!でもね、ゾーイさんに恨みはないけど、逆立ちしてワンと言ってもらうぞ!

 裸はいらないけど!大事なことなので2度言います。


 でも、ルセリアさんはそんな僕の手をしっかり握ってくれた。


「君の歳で自制をもって決断するだなんて立派なことだ!ゾーイも見習うのだな」


 その言葉にミンディーとメリッサは、僕の本気を見たのか涙を流していた。それは彼女たちとの絆がさらに深まった瞬間であり、大きな進歩だった。


 まあ、ゾーイさんが空気を読まないのはいつものことだけど、ゾーイさんなりに空気を読んで場の空気を軽くしようとしているのを僕は知っている。


 結構シャイで真っ当なことをしてお礼を言われたりするのが苦手で、このような言質になっているのだとベッカルさんが言っていたんだ。


 そんなゾーイさんを僕は尊敬しものすごく感謝しているんだ。間違いなく僕1人なら娼館に足を運ぶこともなかった。そうなるとメリッサを救い出せず、今頃死にたいと思うほどの悲惨な状況にいたと思う。本当は優しく面倒見が良いゾーイさんだけど、かっこ良く「俺について来い」と言うのが苦手だから、照れ隠しで無神経な発言をしてしまうのだ。


「本当にこれでいいの?」


 ミンディーが僕の手を握りながら尋ねた。


「もちろんだよ。ここからが本当のスタート地点だから」


 僕は答えるとその手にメリッサが手を重ね、頷いた。


 しかし、僕にはもう一つ果たすべき大切な任務がある。それは僕が育った町の孤児院を訪れ、僕の妹分であるナリアナの安否を確認することだ。彼女は今月14歳になるはずだ。もうそろそろ孤児院を出る頃だ。以前は経済的な余裕がなく、彼女を迎えに行くことが叶わなかったけど、今は状況が変わった。お金はある!


 ダンジョンの隠し部屋のボスを撃破した時に手に入れた剣をシンディーさんが買ってくれたおかげで、ミンディーとメリッサを助けるお金を工面できたのだけど、まだそのお金はかなり残っている。この機会を利用して、ナリアナがどうしているのか、彼女が大丈夫かどうか確認しに行くことに決めた。


『ナリアナ、ずっと迎えに行けなくてごめんね。でも、もうすぐ会いに行くから』


 僕は心の中で呟いた。


「2人とも、本当は早急にダンジョンを潰したいけど、1つやりたいことがあるんだ。付き合ってくれないかな?」


 ミンディーとメリッサにナリアナの安否を確かめに行きたいと話すと、予想外の反応が返ってきた。


「なんだよバン。水くせぇじゃないか!そんなことで悩んでたのか?行くぞ、俺についてこい!で良いんだぜ!」


 ミンディーは力強く言い、メリッサも負けじと言葉を続けた。


「バン様がどちらへ行かれようとも、私は共に参りますわ。私の居場所は常にあなた様のお側でございますの。是非とも、ナリアナ様を迎えに参りましょう!」


 メリッサの言質は彼女が元貴族令嬢であることを思い出させるものだった。僕たちの冒険はこれからも続く。新たなダンジョンの探索、チームメンバーの増員、そしてナリアナの安全の確認。

 これら全てが僕たちの前にある大きな課題だ。


 しかし、ミンディー、メリッサ、そしてこれから加わるであろう新しい仲間たちと一緒なら、どんな困難も乗り越えられると信じている。僕たちの絆はこれからもさらに強くなっていくだろう。僕たちの物語は終わりなき旅の中で、新たな章を刻み続けるのだ。

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