第24話 いざxxへ
夜の帳が下り始めた街は、一見すると普通の街角と変わらないように見える。しかし、僕がゾーイさんに連れられ、知らず知らずのうちに足を踏み入れたこの場所は、まるで異世界のようだった。
街を歩く人々は、どこか華やかでありながらも、淫靡な雰囲気を漂わせている。厚化粧をした女性たちが、媚びを売るように身体をくねらせ、鼻の下を伸ばした男と腕を組んで歩いているのを見て、僕の心臓はドキドキと高鳴る。彼ら彼女らはまるでこの街の空気を操るように、自在に動き回っている。
「ここはなんなんだろう・・・?」
僕は不安と好奇心が入り混じった感情に襲われながらも、ゾーイさんについて行くしかない。街角では、色っぽい声で呼び込みをする人たちが、通行人を店内へ誘う。
「あらあら、可愛らしい坊やだこと。筆下ろしに来たのかしら?お姉さんと遊んでいかない?筆下ろしなら縁起が良いからお代はいらないわよ」
その声に驚き、僕は立ち止まってしまう。流石に何なのか分からないわけでもない。
「わりぃな、今日はそんなことしに来たわけじゃねぇんだ。」
ゾーイさんはその女性の豊かな胸の谷間に銀貨を挟むと、にこやかに手を振った。
「また今度来てくんな!」
そして、通りにある店の窓からは、少し開けた服を着た女性たちが見える。彼女たちの姿は、まるで夢の中にいるような、現実離れした美しさだ。しかし、そのすべてが新鮮であり、同時に圧倒されるほどの刺激だった。
僕はこの華やかで淫靡な街の空気に飲み込まれそうになり、オロオロしている。もちろん右足と右手が一緒に動く。この街のルールや、ここでの振る舞い方が分からず、ただただ、目の前の現実に驚くばかりだ。ゾーイさんの横顔をチラリと見るも、彼はこの街の雰囲気にすっかり溶け込んでいるように見える。腕を掴もうとする女性を優雅に身を躱し、声を掛けられても「また今度な」と自然に対処する。
僕は腕を引かれ、耳元にふうと息を吹きかけられ僕の心臓はまるで鳴り響く警鐘のように早鐘を打ち、不安と期待が奇妙な融合を成し遂げていた。ゾーイさんが直ぐに引き剥がしてくれたけど、多分さっきのは娼婦だよね?
息苦しさを覚えながらも、僕はついに疑問を口にした。
「ゾーイさん、こ、こ、こ、こ、ここ、こここ、ここって大人の店がある色街じゃないんですか?」
僕の声は思っていた以上に上ずり、自分でも認めたくないほどの緊張を隠せずにいた。まさに未知の世界・・・大人への一歩を踏み出す瞬間だった――心の準備など、もはや後の祭りだ。
「ああん?こまけぇことを気にすんな。股間を膨らませてるところ悪いが、それを使いに来たんじゃねぇぞ。金策だよ金策」
僕はホッとしつつ、必死にゾーイさんの後ろを歩く。
僕たちの目の前には、娼館が聳え立っていた。何と、ここが僕たちの目指す場所だった。しかし、僕たちがここに足を運んだ理由は、単純な好奇心や一時の欲望を満たすためではなかったのだけど、その雰囲気に僕は完全に飲まれていた。
ゾーイさんにとって、これは僕が厳しい現実を乗り越えるための金策の一つだったのだ。
店に入るなり彼は堂々と女将を呼び出し、交渉を始めた。あれを、交渉と呼ぶことができればだけど。
「金を払えば、こいつのギフトで体重を減らしてやる。痩せたい奴はいるか?」
一見すると奇妙なビジネスモデルを提案したのだ。しかし、最初の店では厳しい拒絶に遭う。
「よくも昨日の今日でノコノコと来やがるなんざ、何を考えているのさ!おととい行きやがれ」
怒鳴られ・・・・僕たちはその場から追い出された。
「ゾーイさん、いったい何をやったんですか?えらく怒っていましたよ」
僕がゾーイさんに彼女の言葉の意図を問うと、「まあな」という曖昧な返答しか返ってこなかった。
次の店でも同じ様に追い出された。
3軒目では女将が不在で、交渉の余地さえなかった。
そしてついにその四軒目にて、僕の運命が大きく変わるほどのことが・・・起ころうとしていた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます