第17話 ダンジョン踏破
先へと続く扉から次の部屋に足を踏み入れた瞬間、背後から魔物に襲われた。
だけど、ヘッドスライディングの形で間一髪のところで躱すことができたんだ。タダの偶然なんだけど、襲撃者はそのまま僕の前方へ飛んで行った。
更に襲って来ると思ったけど、立ち上がって身構えた僕の脇をすり抜けて行った。あれっ?見えなかったけど、風切音と言うか、空気の動きで分かった。
もしもナイフを持って額に突っ込んできていたら、間違いなく僕は死んでいたと思う。
ドアの方へと逃げる魔物の後を追ったけど、どうやら扉は開かないようで、扉を開けるのを諦めて僕から距離を置こうと、扉から離れていった。
ボス部屋はどちらかが倒れない限り開かないというルールを思い出す。
この行動パターンは主?扉が開かなく、ムササビのような形の魔物はこの部屋が何か分からなかったのか、僕を殺す隙を見て失念したのか間抜けな行動をしている。
その時、白いサイクロプスが現れた。一体どういうことだろう?ボス部屋と思われる場所にボスが2体もいるなんて。
てっきりあのムササビのような魔物がボスだと思ったのだけど、サイクロプスの現れ方はボスのそれだ。
逃げた魔物を追おうとすると、サイクロプスがその魔物を庇うように立ちはだかる。理由は分からないけどサイクロプスとの戦い、特にその攻撃を躱すことを重点に集中する。
その間、逃げた魔物は壁に擬態したようで、ぱっと見では見えなくなっていた。
でも、その瞬間を見たからどこにいるのか把握はできた。
サイクロプスとの戦闘は激しく、その巨体から繰り出される斧の一撃一撃は、地を揺るがすほどの力があった。多分3mはあると思われるその膂力は当たれば致命傷になりかねない。
しかし、僕は俊敏性を活かし、サイクロプスの攻撃をかわしつつ、隙を見ては反撃を加える。剣を振るうたびに斧で防がれて火花が散る。
その繰り返しで40合ほど打ち合ったころだろうか、僕の放った渾身の一撃がサイクロプスの防御を突破する。
斧を持った腕を弾き、隙が出来た。
僕は肩で息をしていて、最後の力を振り絞ってサイクロプスの足元に大きな一撃を加えると、太い脚が半ば切断され、体を支えられずその巨体が倒れた。
僕は態勢を整えサイクロプスに止めを刺そうと剣を構えると、擬態していた魔物が突如襲いかかってきた。反射的に剣を振り下ろし、その魔物を半ば両断した。
そして返す剣でサイクロプスの脳天を貫いた。
すると、先にサイクロプスが霧散し、アイテムと魔核をドロップした。
ムササビのような魔物は数秒ほどピクピクし、やがて動かなくなる。
そして霧散して、魔核とアイテムをドロップした。
ドロップアイテムはサイクロプスからは【古代の戦士の盾】と【魔力を帯びた大剣】、擬態していた魔物からは、ひときわ大きく輝く魔核、そして【スキルオーブ】だった。
詳しい内容は鑑定しないと分からない。
サイクロプスの魔核をカバンに入れ、ドロップを抱え、次にムササビのような魔物のドロップアイテムをカバンに入れた。
そしてその魔核をカバンに入れると、一瞬光りに包まれ、次の瞬間いつの間にか外に出ていた。
周囲にいる人々は唖然としており、そんな中の誰かが叫んだ。
「おいおいおいおい!誰かがダンジョンをクリアしやがったぞ!」
その声を聞いて、僕はやらかしたのだと悟る。
ダンジョン踏破報酬が倍になるまでまだ数日有り、それだと目的の金額には届かなくなる可能性がかなり高くなる。
その事実に唖然となり、僕はその場に崩れ落ちた。しかし、手に入れたアイテムと経験は、これからの冒険において計り知れない価値があると確信したが、アイテムを換金できれば目標の額に届くだろう。
しかし、通常ダンジョン踏破時に得たアイテムは売りに出されず、売られてもオークションに掛けられるのが通例で、下手をすればお金を得るのは数ヶ月先のことになる。
僕はどうすれば良いのか考えがまとまらず、暫くの間その場にへたり込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます