第12話

(ミーンミンミンミンミンミーン…ジーッ…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…キーッ…プシュー…カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン…)


時は、午後1時過ぎであった。


ところ変わって、路面電車トラムといよてつ高浜線の古町駅にて…


駅のプラットホームに国鉄松山駅から木屋町きやちょう鉄砲町てっぽうちょう・赤十字病院方面行きの路面電車トラムが到着した。


ショルダーバッグを持って路面電車トラムから降りた私は、いよてつ高浜線の電車に乗り換えた。


時は、午後2時10分頃であった。


いよてつ高浜駅で電車を降りた私は、海沿いの県道を歩いて松山観光港へ向かった。


この日のお昼のニュースで西日本の広範囲で梅雨明けの発表があったことが伝えられた。


太平洋高気圧の張り出しがより強いために、予想最高気温が35度を超える猛暑日がつづくと聞いたので心身ともにへたばりそうだ。


(ジャーーーーーーーン!!ジャーーーーーーーーーーーーーーン!!)


時は、夕方4時半頃であった。


ところ変わって、松山観光港にて…


出航5分前の銅鑼ドラが鳴り響いた。


私は、瀬戸内海汽船のフェリーの甲板デッキにいた。


甲板デッキにいる私は、山丹正宗やまたんのワンカップ酒をのみながら観光港みなとの風景をながめていた。


私はこの日、職場からカイコ予告を出されたことを理由にバイトをやめた。


ケイヤク期間は8月末日であるが、最終日まで出勤することがめんどくさいからすぐにやめた…


職場にあいさつに行こうと思ったが、それもめんどくさいから行くのをやめた…


………


なんで私は、ひとつのお仕事が長くつづかないのか?


…と考えたくなった。


(ボーッ、ボーッ、ボーッ…)


それから5分後であった。


広島宇品港行ひろしまいきのフェリーが汽笛をあげながら岸壁を離れた。


甲板デッキにいる私は、酒をのみながら観光港みなとの風景をながめていた。


時は、夜7時20分頃であった。


フェリーが広島宇品港うじなに到着した。


ショルダーバッグを持ってフェリーから降りた私は、路面電車トラムの乗り場へ向かった。


(ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)


私は、宇品港みなとから国電広島駅方面行きの路面電車トラムに乗って紙屋町かみやちょう電停えきまで行った。


紙屋町かみやちょう電停えき路面電車トラムを降りたあと広電宮島口行みやじまぐちいきの路面電車トラムに乗り換えた。


広電宮島口駅みやじまぐちに到着したのは、夜9時に3分前だった。


ショルダーバッグを持って路面電車トラムを降りた私は、歩いて国道2号線へ向かった。


時は、夜9時半過ぎであった。


ところ変わって、国道沿いにある終夜営業のラーメン屋にて…


私は、ぎょうざダブルとおでんで晩ごはんを食べていた。


この時間、店にいたのは私ひとりだけであった。


店に置かれているナショナルα2000の21型のテレビの画面はテレビ新広島が映っていた。


この時間は『夜のヒットスタジオデラックス』が放送されていた。


テレビの画面に、ショートボブで白いワンピースを着ている長山洋子さんが映っていた。


同時に『雲にのりたい』の曲がかかった。


晩ごはんを食べていた私は、食べかけのだいこんのおでんを白いごはんの上にのせたあと食事の手を止めたあと震える声で泣いた。


「うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…」


私は…


オギャーと生まれた時から、身寄りがいなかった…


都倉とくらの家の人たちと不仲だったので、家に居場所がなかった…


ごはんを食べるのもお風呂に入るのも…


寝起きする場所も…


なんで山尾よその家でしていたのか?


なんで山尾よその家でテレビを見たのか?


親類関係がない山尾よそさまの家にも居場所がないことが分かっているのに…


山尾よそさまの家にイソンした私は、ドサイテーだ…


私は、歌が終わるまでのあいだ泣くだけ泣いた。


けど、心は晴れなかった。

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