第4話

話は、16時間前のことであった。


場所は、国鉄松山駅のすぐ近くにあるキスケビル(複合レジャー施設)にて…


私は、一階にあるパチンコ屋(キスケパオ)にいた。


大きなモップを持っている私は、ひとことも言わずにフロアー清掃に取り組んでいた。


(チーンジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…)


時は、午前11時半頃であった。


一階のパチンコ店におおぜいの人たちがいた。


店内にパチスロの電子音と大きめのスピーカーから大音量で流れている歌が響いた。


スピーカーから荻野目洋子さんの歌で『ダンシングヒーロー』が流れていた。


私はこの時、店内にある男子トイレで清掃作業をしていた。


トイレのあちらこちらに客が捨てた吸い殻が落ちていた。


私は、ひとことも言わずに火ばさみで吸いがらをつまんだあとビニール袋に入れた。


時は、午後1時過ぎであった。


ところ変わって、従業員口の付近にある休憩所にて…


ベンチに座っている私は、セブンスターをくゆらせながら考え事をしていた。


店内のユーセンのスピーカーから流れている歌が休憩所にも聞こえていた。


今流れている曲は、渡辺美里さんの歌で『Myrevolution』(マイレボリューション)である。


私は、灰皿に吸いかけのたばこを押さえつけて火を消したあとベンチから立とうとした。


そこへ、委託会社の清掃員のおばちゃん(58歳)が私のもとにやって来た。


おばちゃんは、私に『一緒にかまん?』と声をかけた。


私は『あっ、はい。』と答えた。


おばちゃんは、私の右となりに座ったあとポーチの中からキャメルのロゴ入りのたばこの箱とマゼンタのダンヒルのライターを取り出した。


(カチッ…)


おばちゃんは、ダンヒルのライターで点火したあと口にくわえているたばこに火をつけた。


おばちゃんは、たばこをいっぷくくゆらせたあと私に対してものすごくあつかましい声で言うた。


「あんた!!」

「はい?」

「あんたは、なんで大学に行かなかったの?」

「はっ?」

「なんで大学に行かなかったのって聞いてるのよ!!」


そんなに怒りをこめて言わなくてもいいじゃないか…


私は、ものすごくしんどい表情でつぶやいた。


おばちゃんは、なおもあつかましい声で私に言うた。


「あんた!!」

「はい?」

「うちの声が聞こえないの!?」


聞こえてますよ~…


ものすごくめんどくさい表情を浮かべている私は、テキトーに答えた。


「頭が悪いから行けなかった…」

「ウソ言われん!!」

「ですから…担任センコーが私に『ヘンサチが39以下だからあきらめろ…』と言うたので、進学をあきらめました。」


おばちゃんは、あつかましい声で『分かったわよ〜』と言うたあとたばこをいっぷくくゆらせた。


その後、おばちゃんはものすごくあつかましい声で私に言うた。


「あんた!!」

「はい?」

「あんたは、なんとも思わないの!?」

「はっ?」

「あんたのドーキューセーは、いい人生を送っているみたいね!!」


だからなんだと言いたいのだ…


私は、めんどくさい表情でつぶやいたあとおばちゃんに言うた。


「おばちゃん。」

「なによ!?」

「おばちゃんは、ドーキューセーと違う生き方をするなと言うのですか?」

「いかんからいかんと言うたのよ!!」

「あの〜」

「なによ!?」

「おばちゃんが言うドーキューセーと同じ生き方とはなんでしょうか?」

「幼稚園から大学まで同じガッコーに通う…大学卒業後は同じ会社に就職するよ!!」


おばちゃんが言うドーキューセーと同じことはその程度か…


全く理解できない…


幼稚園〜小学校〜中学校〜高校〜大学までドーキューセーと同じガッコーに通う…


大学卒業後に就職する会社も同じ企業…


そして、結婚する時期も一児の親になる時期も一緒…


そんな生き方は、ものすごくうざいわ(大激怒)


ドーキューセーと違うガッコーへ通うのがそんなにいかんのか!?


ドーキューセーと違う職業についたらいかんのか!?


ドーキューセーと言う言葉を聞くだけでもヘドが出る!!


私は、怒りがフンシュツしそうになった。


ますますはぐいたらしくなったわ!!


思い切りブチ切れた私は『帰る!!』と言うたあと休憩所から出た。


おばちゃんは、にえきらない表情で私の背中を見つめながらつぶやいた。


なにひとりで怒っているのよ…


おばちゃんは、そんなつもりで言うたのじゃないのに…


時は、午後2時頃であった。


ところ変わって、路面電車トラムの道後温泉駅の前の広場にて…


私は、駅の入口にあるベンチにこしかけていた。


私は、ショルダーバッグに入っていた小さなノートとセーラー万年筆を取り出した。


私は、うらみ言葉をノートにつづった。


5月29日・曇り


おばちゃんが言うた言葉は理解できない!!


ドーキューセーと違う生き方をしたらケーサツに逮捕されるなど…わけの分からない言葉をグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダグダ…


ふざけるな!!


幼稚園〜小学校〜中学校〜高校〜大学・短大または専門学校まで同じガッコーに通う…


卒業後に就職する会社もドーキューセーと一緒…


ドーキューセーと言う言葉自体がうざいわ!!


私は、きちんとした理由があるから『うざい!!』と言うた。


それは分かってほしい…


小学校から高校までの間、親しい友人はいなかった…


その前に、幼稚園に行ったけど数日でやめた…


その元凶は、養父母りょうしんと二番目の義姉あねと不仲であったこと…


他にも、元凶は数え切れないほどある。


どうしておばちゃんは、頭ごなしに私を否定したのだ!?


絶対に許さない!!


(パタン…)


私は、ノートを閉じたあと全身をぶるぶると震わせながら怒り狂った。


この時私は、1969年のあの日を思い出した。


あの日は…


黛ジュンさんの歌で『雲にのりたい』のシングルレコードが発売された6月1日であった。


…………


時は、1969年6月1日の夜遅くだった。


ところ変わって、かつて暮らしていた借家いえにて…


借家いえの広間に雅俊まさとし宏美ひろみとよしみの3人がいた。


小学4年生の私は、自分の部屋にいた。


この日、よしみのフリン相手の妻の両親おやきょうだいたちが裁判所にテイソした。


前日の夜に、よしみのフリン相手の妻子が国鉄波方駅なみかたえきのプラットホームを通過した貨物列車に飛び込んで命を絶った事故が発生した。


そのまた上に、命を絶った妻の大学生の妹さんが交際相手の友人たち(ボーソーゾク)からレイプの被害を受けたことを苦に小部おおべの漁港で投身して沈んだ…不幸事がつづいた。


レッカのごとく怒り狂った遺族たちは、よしみひとりに対して1億円以上の損害賠償請求のソショウを起こすと訣意けついした。


それを聞いた雅俊まさとし宏美ひろみは、よりし烈な怒りに震えた。


雅俊まさとしは、よりするどい目つきでよしみをにらみつけながら言うた。


「オドレよしみ!!…なんだその顔は!?…オドレはいつから親をにらみつけるようになったのだ!?」


クソナマイキな表情を浮かべているよしみは、雅俊まさとしに対して『あんたはなにが言いたいのよ!?』とつぶやいた。


宏美ひろみは、ものすごく困った表情でよしみに言うた。


「よしみ…よしみ!!…おかーさんはものすごく困っているのよ…よしみ!!」


よしみがクソナマイキな表情で『なによ!!』と言うた。


思い切りブチ切れた雅俊まさとしは、怒鳴り声をあげながら近くに置かれていた氷が入っている入れ物をよしみに投げつけた。


「オドレはうざいんだよ!!」


(ガーン!!)


よしみの右肩に氷入れがぶつかった。


氷入れに入っていた氷が床にサンランした。


(ガツーン!!ガツーン!!ガツーン!!)


雅俊まさとしは、クソナマイキな表情を浮かべていたよしみの顔をグーで3回殴りつけた。


よしみをグーで殴りつけた雅俊まさとしは、全身をぶるぶると震わせた。


「よしみ!!」


(パチーン!!パチーン!!パチーン!!)


宏美ひろみは、よりし烈な怒りを込めながらよしみの顔を平手打ちで叩いた。


その後、宏美ひろみは怒った声でよしみに言うた。


「サイアク…サイアクだわ…こんなことになるのだったら…よしみを産むのじゃなかったわ…サイアクだわ!!…ボウコウ魔の子を産んで大失敗したわ!!…よしみをホンドへ連れて帰るのじゃなかったわ!!よしみはボウコウ魔の子だからフリンをしたのよ!!」


宏美ひろみは、怒鳴り声をあげながらわけの分からない言葉を言いまくった。


宏美ひろみの怒鳴り声が私のいる部屋に響いた。


ふとんの中にいる私は、シュラバがおさまるのを待つしかなかった。


部屋にいる私は、ふとんの中にもぐり込んだ。


よしみの実父はボウコウ魔だった?


ホンドに連れて帰るのじゃなかった?


宏美ひろみが言うた言葉の意味が理解できない…


雅俊まさとしは、なにが気に入らないのだ…


サイアクだ…


私は、来た家を間違えたようだ…


………


場面は変わって、伊予港の内港の岸壁にて…


時は、5月30日の深夜1時頃だった。


私は、夜の海を見つめながら考え事をしていた。


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れた私は、のみかけの山丹正宗やまたんが入っているワンカップのびんを叩き落とした。


ワンカップのびんは、こなごなにわれて砕け散った。


私は、全身をぶるぶると震わせながら泣いた。


「うううううううううううううう…」


つらい…


かなしい…


どうして私は…


都倉ぼろの家の養子になったのだ…


ものすごくつらい…





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