【書き溜めにつき更新停止中】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜
無法都市ダルニカへの道中は、ラジオをお供に。後篇。
無法都市ダルニカへの道中は、ラジオをお供に。後篇。
『続いてのニュースです。世界的ゲームメーカーとして知られるアスセーナ社の新作発表『アスセーナ・ダイレクト』が本日二十三時より行われます。アスセーナ社の会長で自身もゲームデザイナーとして多くのタイトルを世に送り出してきた
「――ッ!? しまった、今日だったか!! 『アスセーナ・ダイレクト』」
「無縫君ってそういえばゲーム好きよね。やっぱり、アスセーナ社のゲームも遊ぶの?」
「そりゃ、もう! 大ファンだよ! ってか、ヴィオレットとシルフィア、今日だって忘れてないよな? 俺も忘れてたし、アイツらが忘れているのもあり得るだろ。……まあ、配信はいつでも見直せるし、見忘れていても後で教えればいいか。俺はしっかりとリアルタイムで見る派だけど」
「私、あんまりゲームって詳しくないのよね。無縫君、おすすめのゲームとか紹介してもらえないかしら?」
「そうだね……シルフィアとヴィオレットの方が詳しいし、今度四人でお茶でも飲みながらね。この一件が片付いてからでもいいかな?」
「まあ、そうね。まずは、この異世界でやるべきことを終わらせましょう。お茶会、楽しみにしているわ」
『本日最後のニュースです。大人気女優でアイドルの
「酷い事件だったわね。お相手の
「……まあ、特に週刊誌の連中はハイエナみたいだからね。というか、マズゴミと揶揄されるくらい最近の報道は民度が低い。自分達には報道の正義があるって勘違いして、プライベートを破壊して……本当に腹立たしいよ。瑞稀さんと霞さん……人気アイドルグループ【スターライト・トゥインクル】の二人も相当怒っていたな」
「某有名スケーターみたいな不幸な結末にはならないでもらいたいけど」
「皐月さんのファンは良き理解者が多いみたいだし、多分大丈夫だと思うよ。……まあ、でも、そうなったらアイツも怒りで我を忘れそうだな。週刊誌を発行している文屋に突撃かますとかやりそうで怖い」
『以上で本日の「ニュース振り返り」を……ッ!? 緊急ニュースです! 只今速報が入っていました!』
「ラジオパーソナリティの
『今から三十分前頃、週刊女性日和を刊行する新澄社のビルが爆破されました。詳しい情報はまだ入っておりませんが、ビルは燃え上がり、周囲のビルにも延焼しているようです。消防隊も駆けつけ必死の消火活動と救命活動が行われていますが、無数の爆弾が爆発したと思われ、生存は絶望的だという情報も入ってきております。編集長の
曲名を聞いた瞬間、無縫はラジオのチャンネルを切り替えた。
「無縫君、チャンネルを戻してくれないかしら?」
「――ぜ・っ・た・い・に・い・や!」
懇願するフィーネリアに、無縫は満面の笑みでそう応えた。
◆
珈琲を飲みつつ運転すること四時間、無縫達はログニス大迷宮のあるワイシャル砂漠までやってきた。
流石に迷宮を管理しているオアシスの国――クランチルス公国まで車で乗り込むと目立ち過ぎるため、迷宮挑戦組はこの砂漠から迷宮を目指すことになる。
「無縫君? 迷宮挑戦中もずっと珈琲飲んでいたけど、そんなに飲んで大丈夫?」
「寧ろ絶好調だよ。……これでもまだセーブしているんだけどな」
「……あれだけ飲んでセーブって。……迷宮にいる間、誰も突っ込まなかったからあれが普通なのかって一瞬納得しかけたけど、絶対におかしい量飲んでいるわよ。……というか、それだけ飲んでよく利尿作用に悩まされないわよね」
「正直、眠くならないとか利尿作用とか、そういうカフェインの効能をあまり感じたことはないんだよな。……まあ、でも魔法少女の時は完全にノーカウントだからね。魔法少女は食べたものを百パーセント、つまり完璧にエネルギーに変換できるから」
「……本当に人間離れしているわね。エネルギーに百パーセント変換するなんて自然界では絶対にできないわよ。必ずどこかでロスが生じるわ」
「まあ、睡眠を必要とせず活動できる時点で人間かどうかは怪しいと思うよ。精神的にも強化されるし、毒や酸へと耐性も獲得する。後は身体能力や五感の向上があるかな? 確かに、魔法少女化してから珈琲を飲んだ方が、より繊細な味を楽しめるし」
「えっ!? まさか、折角魔法少女になれるのに、そんなことにしか使っていないの!? だって、魔法少女よ! 全ての女の子の憧れの存在よ! もっとファンタジーなこといっぱいできるじゃない!!」
「……フィーネリアさんって、かなり乙女な趣味しているよね。うーん、別にそうご大層なものでもないと思うんだけどね。……そんなになりたいならシルフィアにお願いしてみようか?」
「えっ!? 本当にいいの!?」
途端目を輝かせるフィーネリアに「この人、やっぱり見た目と中身のギャップがあり過ぎだよね? その趣味を隠そうともしないし、だったらあんな妖艶な悪の組織の女幹部みたいな格好をせずにファンシーで乙女な格好をすればいいのに」と内心思う無縫。
まあ、無縫は基本的に他人の趣味趣向には疑問に持っても特にそれを口に出すタイプではないため、その考えを実際の言葉にすることは無かったが……。
「さて、俺はこれから一旦地球に戻り、迷宮挑戦を引き受けてくれた三人を連れてくる」
「分かったわ。その間に私はこの莫迦を叩き起こしておけばいいのね?」
「そうしてくれると助かる。……まあ、帰ってきてから俺が叩き起こしてもいいんだけどね。それじゃあ、ちょっと行ってくるよ」
◆
それから十分後、無縫は予告通り三人……ではなく四人の男女を連れて戻ってきた。
比率的には一人が男性、三人が女性という割合だ。
「……ああ、まだ起きていないのか?」
「この人、そういえば一度寝るとなかなか起きないってガラウスが愚痴っていたことがあったわ。……今のうちに顔合わせ、済ませちゃいましょうか? と言っても、私は今回、無縫君に同行するつもりで迷宮に挑むつもりはないのだけど」
「そういえば、三人ともフィーネリアさんと面識は無かったっけ? じゃあ、一人ずつ紹介していこうか? まず、巫女服のような装束を纏って太刀を佩刀している女性が桃沢真由美さん。鬼や妖怪――我が国の闇を跋扈していた者達から人々を守ってきた二大巨頭の一角――鬼斬機関で局長をしている。俺に鬼斬の技を教えてくれた内務省に出向している鬼斬の
「そういえば、無縫君には私が戦っている姿を見せたことがなかったわね。初めまして……フィーネリアさんだったかしら? 悪の秘密結社の女幹部の?」
敵意の篭った鋭い眼光を向けられ、フィーネリアは僅かにたじろぐ。
まさに、仙姿玉質という言葉が似合うほど美しい女性だ。戦装束に隠れていても分かる形の整った大きな胸に、艶かしくくびれた腰つき。それでいて、すらっとした体型をしており、同性でも見惚れてしまうほどボンキュボンがしっかりと揃っている。
決して武人とは思えない白い肌を持ち、容貌も端麗。これで鬼斬としても優秀なのだから、まさに天が二物以上を与えたと表現すべき人物だ。
「まあまあ、その辺にしておきましょう。彼女は無縫殿のご友人……ここで敵意を向けるべき相手ではないでしょう。それに、彼女は鬼でも妖怪でもない、我々の管轄の外にいるものです。治外法権という奴ですよ」
「で、その糸目のなんだか胡散臭そうな眼鏡の男性が賀茂幸成さん」
「だーれーが、胡散臭いですか!? 無縫君、もっとしっかり紹介してください! って、真由美、貴女なんで笑っているんですか!? 他人事みたいに」
「だって本当に他人事だもの」
一方、眼鏡を掛けた糸目の男は狩衣に烏帽子という典型的な陰陽師の服装をしていた。背中に背負う陰陽師の装束とミスマッチなリュックの口は開き、中からは無造作に突っ込まれた無数の呪符が顔を覗かせている。
まあ、フィーネリアは大日本皇国の文化に深い造詣がある訳でもなければ、陰陽師に対して詳しい訳でもないので服装を見ても陰陽師であると見抜けなかった訳だが。
「彼はこんなに胡散臭いけど、一応陰陽連のトップである陰陽頭を務めている。実家はあの安倍晴明に陰陽術を教えたという賀茂忠行と賀茂保憲を輩出した賀茂家。安倍晴明が祖となる安倍氏流土御門家と賀茂家は二大陰陽道宗家として陰陽師を引っ張ってきた。……まあ、今代の当主殿はなんでこいつが陰陽頭になれたんだ? って疑問になるくらいてきとーな性格をしているんだけどね」
「無縫君! 一々酷くないですか! 言葉に棘があり過ぎですよ!!」
無縫から散々な紹介をされ、幸成はとうとう開眼をして突っ込みを入れる。
「陰陽師とか、よく分からないけど……折角の糸目キャラなのに、そんなつまらないことで開眼して勿体無いんじゃないかしら?」と人知れず呟くフィーネリアだった。
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