【書き溜めにつき更新停止中】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜
「再戦! 侵略種デモニック・ネメシス!」後篇。
「再戦! 侵略種デモニック・ネメシス!」後篇。
「
デモニック・ネメシスを一体引き受けた魔法少女プリンセス・カレントディーヴァだったが、龍吾達のグループと同様に状況は芳しいものではなかった。
水の魔力で即座に水の縄のようなものを生成してデモニック・ネメシスを捕らえる……までは毎回成功するのだが、
まあ、魔法少女プリンセス・カレントディーヴァの攻撃テンポはかなり早く、デモニック・ネメシス側もなかなか反撃に移れない状況が続いているので、龍吾達ほど追い詰められている訳ではないのだが。
とはいえ、千日手状態をいつまでも続けてもジリ貧である。
「こうなったら、【波動砲】スキルを使うわ!!」
業を煮やした魔法少女プリンセス・カレントディーヴァは【波動砲】スキルを発動して、波動砲を生成。宇宙人狼の某村でメンバー二人が起こした事件みたく銃を乱射し、デモニック・ネメシスに容赦なく波動砲を連発した。
僅かな隙も逃さず、小さな銀河を二つ生成し、敵を挟み込むように銀河面吸収帯を衝突させることで敵を粉砕する擬似的なグレート・アトラクターを発生させようとしていたデモニック・ネメシスだったが、魔法の発動よりも先に波動エネルギーの奔流が迫り、慌ててグレート・アトラクターの発動を中止する。
降り注ぐ無数の水の槍に、乱射される【波動砲】――更に苛烈さを増した魔法少女プリンセス・カレントディーヴァの攻撃に、グレート・アトラクターは少しずつだが確実に追い詰められていった。
発動までに時間を要するグレート・アトラクターなどの大技はリスクが大きい。そのため、デモニック・ネメシスは半月状の斬撃や太陽と見紛う無数の巨大火球で攻撃を仕掛けてくるが、前者は魔法少女プリンセス・カレントディーヴァの動体視力でも回避できるレベルの攻撃であり、後者は魔法少女プリンセス・カレントディーヴァの得意属性の水とは相性最悪の炎である。
無数の槍を回避され、火球を全て消火され、デモニック・ネメシスは徐々に、徐々に、壁際へと追い詰められていった。
そして――。
「【極大波動砲】!!」
魔法少女プリンセス・カレントディーヴァが生成した巨大な波動砲から放たれた波動エネルギーの奔流がデモニック・ネメシスの胴体を消し飛ばした。
◆
「初手『
並外れた幸運と魔法少女の動体視力でデモニック・ネメシスの攻撃を躱し続けてきた魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスは観察によってこれ以上の情報収集はできないと判断すると、防戦を切り上げて『
『
流石に自分の技を自分に跳ね返されるとは考えてもみなかったのだろう。デモニック・ネメシスは無防備を晒したまま自らの攻撃をその身に受け、肉片の一部を残して焼失した。
「――ッ!?
しかし、ここで魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスの想定していなかった事態が発生する。龍吾達と戦っていた筈のデモニック・ネメシスが魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスの前に現れたのである。
デモニック・ネメシスは魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスに一瞥も与えず肉片を飲み込むと、再び転移――瞬く間に残るデモニック・ネメシス二体の遺骸を喰らってしまった。
『ヒュラララーン!!』
見た目こそ変化していないが、魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスはデモニック・ネメシスの魔力がこれまでとは比べ物にならないほど高まっていることを感じ取った。
「さあ! 第二ラウンドと行きましょうか! ――内藤さん、ここからは俺に任せてください!」
「了解です。さあ、みなさん下がって……無縫君の邪魔にならないように」
デモニック・ネメシスは最早魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカス以外は眼中にないとばかりに吠えると、大きく羽搏いて地上を睥睨した。
「
魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスも魔法少女の杖に横乗りして飛翔、デモニック・ネメシスと同じ高度に留まってデモニック・ネメシスと対峙する。
百層での戦いはデモニック・ネメシスに見下される構図だったが、今回は魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスとデモニック・ネメシスの高さは同じである。そこには、実力を全て出し切って対等に戦うという魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスの意思が現れていた。
デモニック・ネメシスの全身が炎を帯びる。燃え盛る炎をその身に纏ったデモニック・ネメシスは無数の巨体火球を従えるように配置して『
『
魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスが魔法少女としての固有魔法「
膨大なエネルギーは空間を捻じ曲げるほどの超重力の力場を発生させ、マイクロブラックホールと化してデモニック・ネメシスの身体を呑み込んでいく。
反撃も脱出もできないままデモニック・ネメシスは暗黒天体に飲み込まれて消滅し、デモニック・ネメシスが倒されたことで二つの門が同時に開いた。
◆
八百層のエリアボスの間を抜けると、そこには小部屋があった。
これまでの洞窟のような雰囲気から一変し、壁には奇妙な光が幾筋も走り、どことなく近未来の世界を感じさせる空間である。
中心にはこれまた奇妙な金属製の機械のようなものが置かれていた。
高さ二メートルで横幅一メートルほど、明らかに古代の迷宮にそぐわない装置に無縫は躊躇なく近づいた。
『八百層攻略オメデトウゴザイマス』
「……人感センサーのようなものがついているようですね」
「人感センサーって……ここって古代の迷宮じゃないの? なんでSFみたいな装置が出てくるのよ?」
「いや、俺に聞かれても知らんよ」
みんなの疑問を代表するように口にした魔法少女プリンセス・カレントディーヴァの言葉に、魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスが「俺が知る訳ねぇだろ? 阿呆じゃねぇの?」と言いたげな雰囲気を醸し出し、再び魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカスと魔法少女プリンセス・カレントディーヴァのしょうもない喧嘩が始まりそうになったのだが、その喧嘩は謎の機械が次に発した言葉によって防がれることとなった。
『ミナサマノ情報ヲ記録致シマシタ。転送装置ガ使用可能ニナリマス』
「……転送装置ですか。まあ、確かに八百層以上ある迷宮であれば、あってくれた方がありがたいですね。無縫君、詳細は分かりましたか?」
「どうやら、一層、百層、二百層、三百層、四百層、五百層、六百層、七百層、八百層、九百層、一千層にそれぞれ転送装置が置かれているようですね。転送装置のある階層に到達することでそれ以前に通過した全ての階層との行き来が可能になるようです。ただし、この感じだとボスを倒さない限り扉は開かないので、ボスを倒さない限りは転送先の小部屋から出られないという状況になりそうですが。……しかし、転送装置なんて全く記憶にないですが、もしかしたら一層に巧妙に隠されていたのかもしれませんね」
小部屋の先の扉は開き、ボスの間の入り口から小部屋の先――八百一層へと続く階段がある小部屋まで全てが開放されている。
しかし、開放条件がボスの討伐であった場合、転送先の扉が全てアンロックされている可能性が高い。
まあ、そもそも無縫達に上の階層に戻る必要などないのだが。
寧ろ、無縫が死亡していないということを悟られないよう迷宮が未攻略のまま保持される方が都合がいい。
「無縫君? モールさん達の依頼だけど、今後は共闘せずに部屋の外で待ってもらった方がいいんじゃないかしら? 今回みたいに扉が全て開放される仕組みなら、わざわざ危険を冒す必要はないでしょうし」
「フィーネリアさんの言う通りですね。モールの皆様、それで大丈夫でしょうか?」
『ももも、もふふもふふ!』
「ええっと……そういうことなら、私達は一旦集落に戻ると言っています。全ての部屋を攻略してから集落に来て頂けたら報酬をお支払いしたいということです」
モール達は魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカス達に伝えることだけ伝えると来た道を戻っていった。
デモニック・ネメシス相手には全く歯が立たないが、他の魔物であれば討伐できる実力があるモール達であれば心配はないだろう。
「では、みなさん。気を取り直して先に進みましょうか?」
魔法少女ラピスラズリ=フィロソフィカス達はモール達と分かれ、迷宮の新たな階層へと足を踏み入れた。
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