「みく」の灯火
まさきたま(サンキューカッス)
第1話
「大学落ちた……」
やっべー。人生詰んだ。
日本と言う国は少々器量が狭い。高度経済成長を乗り越えた日本人は、先達に倣い勤勉で真面目であることを少年少女に強要している。
親も例に漏れず日本人らしかったウチの家系は、高いお金を払って学習塾に俺を通わせ、進学校へ入学し有名大学を受験すると言う愚策を取った。
俺の親は馬鹿だ。
自分はたいした大学に行ってない癖に、どうして自分の子供は成功すると思ったのか。
学習塾で俺の成績は振るわず、学校でも落ちこぼれ側としてヘラヘラ生きて。その癖にプライドは高かったのか、滑り止めすら俺の偏差値以上の大学ばかりに願書を出すことになった。
何で俺達、そんな無謀な出願を敢行したのか。
「せっかく●●を出てるんだから、そんな程度の低い大学に入るなんて負けたようなものじゃない」
それは親は俺がまぐれで受かった進学校のブランドを過信していたかららしい。その結果が、この様である。
「何かの間違いで、実は合格でしたって手紙来ねぇかなぁ」
等とぼやいてみたものの、補欠の紙すら届いていないのにそんな奇跡がある訳無い。
そこそこの大学に進学した高校の友人達は、SNSで幸せなキャンパスライフを送っている事が分かった。俺は、二度とSNSを開かないことにした。
「何でもっと頑張らなかったの!!」
親は、まさか俺が浪人すると思っていなかったらしい。俺よりも親の方が取り乱していた。頭悪いのは、お前らの子だからだぞ。
小遣いも貰えなくなったのでコンビニバイトを始めてみたが、バイトの先輩は自己愛性障害の入った頭のおかしいパワハラ野郎だった。
来る日も来る日も言い掛かりに近い罵声を浴びせられ、数日で病みそうになったのでバックレた。
「詰みだな」
俺はこれから生きていて、何が有るのだろう。
きっと来年に分相応な大学に入ったとしても、年上だとからかわれたりハブられたりするに違いない。
コンビニですらろくにバイトをこなせない俺が、進学せず働きに出ても録なことにはならないだろう。
終わり、終わり。俺の人生は、終わってしまった。
「────次はまともな頭を持って、まともな親の元で生まれたいなぁ」
俺は絶望の縁で、そんなことを呟いた。
眼前に広がる、灰色のビル群。
見上げる青空には無理やり放り出したようなウンコの形をした雲が俺を見下している。
セキュリティのガバガバな入ったこともないオンボロビルの階段を上る事、数階。俺は、無事に誰にも見つからず人気のないビルの屋上へと忍び込むことに成功していた。
「万が一にも生き残ってしまったら最悪だ。確実に死なないとな」
6階建てのビルからダイブすれば、きっと助からない筈。だけど万が一がある、脚からではなく頭から飛び降りるべきだろう。
俺は綺麗に靴を揃え、世の中への不平不満を書きなぐった遺書を挟み込み。
「
怖いので目を閉じたまま、俺は浮遊感に身を任せた。
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