一度、死んだ男
ほにゃら
序章 培養槽から飛び出すとき
「・・・・・・私には、さっぱり理解できませんね」
マウンダー聾学校教諭職に就くエジンバラ=グレアムは、ラフな姿勢でソファに座り、教え子の著したレポートに目を通していた。
題名は『変光のメカニズム』。
「えぇっと・・・『
天才とはこの事を
聾学校の一レポートで終らせるには、勿体無い気がした。脳の休憩に、グレアムはレポートと引き換えにカルテを見る。『猩紅熱』『化膿レンサ球菌』『発疹性伝染病』による『聾』『伝音性』―――こちらにも、何だかよく解らない言葉が並んでいるが、彼にとっては休憩になるのだろう。
カルテの左上に「エボラクム・グッドリック」とある。グレアムは思いを馳せた―――そういえば、かれは著名な物理・数学者のアンドレアス教諭に師事をしていましたね。
何やら、部屋の外が慌しい。グレアムは息を吐いてカルテを仕舞った。レポートを机の真中に置いて、彼は部屋のドアを開けた。聞えないと解っていながら、どたどたと音のする階段上に向って声を掛ける。
「どうしたのです、グッドリック君」
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