7章 夏休みはエンドレスハーレム

第101話 優里亜のお願い♡


 愛莉と優里亜が赤点を回避したら、俺は夏休みに美少女三人衆の"言いなり"になることが決まってしまい、あれから1週間、黒木以外の逆貼り紙組の二人はまるで別人のように勉強に励んでいた。


(そこまでして夏休みに俺を扱き使いたいのだろうか?)


 昼休みも黙々と勉強する二人を見ながら、俺は思いに耽る。


(そりゃ愛莉の場合は、バイト禁止もかかっているので真剣なのが分かるが、優里亜に関してはノーリスクなわけで、そこまで本気になる必要はないと思うが……)


 まぁ何はともあれ、俺にとって夏休みに振り回されるのは、罰ゲームというよりもご褒美である。


 普通の人間なら貴重な夏休みを邪魔されるのは嫌がるのかもしれないが、俺の場合はむしろその罰ゲームを期待している。

 なぜなら俺は毎年夏休みに超自堕落な生活を送っているからだ。


 昼に起床してそのままベッドでスマホを触って過ごし、好きな時間に飯を食べ、その後もスマホを触り夜になったら就寝。

 部活のない陰キャオタクの俺はこれをほぼ毎日30日間も繰り返す。

 もはや某エ●ドレスエイトが起きていても気づかないレベルでそれを繰り返しているのだ。


 だからこそ、俺みたいな暇人を振り回すなら遠慮なく振り回してもらって構わない。しかもそれが美少女三人衆ともなればもうこれ、ただのご褒美だろ。


「ちょいちょい諒太っ」


 俺がボーッと考えていたら、左隣の優里亜が俺の左肩をツンツンしながら話しかけて来た。

 なんだろう。分からないところでもあったのか?


「どうした?」

「あのさ……放課後、時間ある?」

「放課後? 予定はないけど、どこか行くのか?」

「いや、テストまであと1週間だし勉強会とか、どうかなって」


 てっきり息抜きに隣町のゲーセンでも行くのかと思ったら、想像もしてなかった"勉強"という選択肢に驚いてしまう。


「じゃあ愛莉も! って、今日は……か、彼氏とデートあるから無理だったー」


 前の席の愛莉は、俺たちの会話に反応して振り向き様に言う。

 彼氏と……そっか、愛莉は今日バイトあるのか。


 文化祭の時に休みを多く貰っていた分、テスト期間でも週1くらいでシフトが入っていると前に言っていた。


「瑠衣ちゃんも放課後練習あるって言ってたし、優里亜と諒太、二人で勉強会するのー? いいなぁ」


 陸上部のミーティングで昼休みも忙しくしている瑠衣は、テスト期間でも放課後に練習があるらしい。

 インハイを月末に控えるらしいので、仕方ないのかもしれないが。


「てか愛莉もこの前諒太と勉強会したんしょ? あれから愛莉めっちゃ数学できるようになったし、今日はあたしも諒太から学力いっぱい吸い取ってやる」


 ニヤリと目を細めながら優里亜は言った。

 吸い取るって……な、なんかエロいな。


「変なこと考えんなし」

「いてっ」


 優里亜に思考を読まれてしまったのか、軽くチョップされた。

 さすが俺の理解者。脳内でエロ変換したことすらも読んでいるとは……いや、今のは優里亜の言い回しが誘ってんじゃん。


「ただいま。楽しそうに何を話してるのかな?」


 俺たちが話していたら、ミーティングが終わったのか、瑠衣が教室に戻って来た。


「優里亜がね、今日諒太と勉強会するんだってー」

「へー? 二人で勉強会?」

「そそ。瑠衣も忙しいし、諒太なら勉強できる上に暇そうだから色々と教えてもらおうと思って」


 なんか馬鹿にされてる気もするが、超絶暇人なのは周知の事実なので反論はできない。


(はいはい、どうせ俺は暇人でエロガキ脳の陰キャオタクですよ。ったく)


「ふーん……二人で勉強会。そっかぁ」


 瑠衣はねっとりとした相槌を打ちながらほぼ糸目になるくらい目を細める。

 な、なんだよそのリアクション。


「諒太くん?」

「ひゃっ、はい」

「優里亜のこと、よろしくね? みんなで赤点回避するのがの条件なんだもん。わたしの代わりにちゃんと教えてあげてね?」


 瑠衣は笑顔でそう言うが……やけに重たく聞こえるのは俺だけだろうか。


(自分だけ勉強会してないから怒ってる、とかではないよな? そもそも瑠衣には勉強会とか必要じゃないし……じゃあなんだこの圧は)


 相変わらず瑠衣だけは腹の内が読めなさ過ぎる。


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