第90話 デカパイSDGS
屋上ではすでに何人かの生徒たちが、校庭のキャンプファイヤーを屋上から見るために集まっていた。
エプロンを着けたままの生徒もいるので、店の商品が完売したとかで、もう片付けが終わって一息ついているのだろう。
さてと……俺たちも場所取りしないとな。
「場所は隅っこの方でいいよな? 黒木も海山も優里亜も、みんな揃ってるとなおさら目立つし」
俺はこれ以上周りの視線を集めたくないので、屋上の隅っこにしようと提案する。
「め、目立つって……まぁ、諒太が気になるなら別にいいけど」
俺の良き理解者こと優里亜は、俺の提案にすんなり頷いてくれた。
黒木と海山が来るのを待ちながら、俺と優里亜はキャンプファイヤーの準備をしているグラウンドの様子を眺めていた。
「そういや優里亜はキャンプファイヤーの準備に行かなくていいのか? 実行委員だろ?」
「キャンプファイヤーの準備は男性教師と実行委員の男子たちでやるみたいだからあたしらは自由時間なの。その分、文化祭が全部終わった後の備品確認とか会計とか、地味な作業はあたしらが担当だからさ」
「へぇ、そうなんだな」
確かによく見てみると、グラウンドで準備をしているのは男子しかいない。
「そもそも優里亜ってさ、なんで文化祭実行委員になったんだ? あんまりそういうのをやるタイプじゃないと思うんだが」
「なんそれ。あたしやる時はやる女だし!」
「……下ネタか?」
「違げぇし! 諒太と同じにすんな!」
優里亜はキレ気味に突っ込んで来る。
俺と同じって……まるで俺の存在自体が下ネタみたいに言いやがって。
「あ、あたしが実行委員になったのは……瑠衣が実行委員を任されそうになったからで」
「黒木が?」
「うちのクラスの奴らって、いつも瑠衣瑠衣って、なんでもかんでも仕事押し付けるっしょ? そりゃ瑠衣はなんでもできるし、何やらせても完璧だけど……絶対大変だと思う。だからあたしがやるって言えば、瑠衣の負担減らせるかもって」
黒木のために……か。
そういえば優里亜が王子役に立候補したのも、黒木の負担を減らしたいって話だったな。
まぁ、結局劇の方はダブルキャストになってしまったんだが……。
「ちょい諒太、なんでニヤけてんの?」
「いや、なんていうかさ……優里亜は友達想いだなって」
「なっ、なんそれ……褒めてる?」
「ああ。そもそも俺の場合はロクに友達できたことないし、友達のためにそこまで出来る自信がないっつうか……」
俺が優里亜の立場だったら、そこまで自己犠牲を払うことはできないかもしれない。
だからこそ、優里亜のことを心から尊敬している。
「んじゃ、例えばだけど田中が実行委員を任されそうになったら?」
「田中にやらせる」
「ひっど」
「あいつはもう少し社交性を高めた方がいいからな」
「それは同感」
「おーい、二人ともーお待たせー」
田中をいじり倒していたら、屋上の入り口から黒木と海山が現れ……って。
「お、おい、なんだその量」
黒木と海山は、両手のビニール袋いっぱいに何やら買い込んで屋上にやって来たのだ。
「余って半額セールになってたもの全部買い占めて来たの! SDG、なんたらだね!」
「だからって……おいおい」
そりゃSDGSなのかもしれないが、山ほど食べることで、これ以上海山の胸がデカくなったら、必然的にティッシュの消費量が増えるんだからプラマイゼロだろ……?
「キャンプファイヤー始まるまで、みんなで食べよ食べよー」
ま、爆乳がさらにデカくなるなら何でもいいか。
デカパイが見れたら何でも良いので、俺は考えるのをやめた。
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