第60話 美少女たちが俺の家へ


 美少女三人衆が俺の家に来ることになってしまったことで、必然的に俺は美少女三人衆と一緒に下校することに。


(なんでこんなことに……っ)


 今から帰ったとして、部屋中にあるキモオタグッズを隠す時間はない。

 普段はラノベにカバーをしないほどオープンな俺だが、さすがに自室というプライベートな空間をこの3人に見られるのは、羞恥心を禁じ得ない。


 同級生の女子(しかも美少女)3人を自室に連れ込むという圧倒的にラブコメのハーレムシチュエーションなのに、状況が状況なだけに素直に喜べないんだよな……はぁ。


 そりゃ百歩譲ってこの3人が個々に来るとかなら、俺も胸襟を開いて気兼ねなく対応できるが……3人一気に来るとなると、ふとした拍子にこの前の買い出しの時みたいな暴露大会になるのが目に見えてる。


(とりあえず優里亜には、アニメグッズに反応を示さないように言っておかないとな)


「なんかこの4人で帰るのって新鮮だねー?」

「てかウチら3人で帰るのも久しぶりじゃね? 最近瑠衣は毎日のように練習だったし」

「いつもごめんね? わたしが陸上部で忙しいから。優里亜、寂しかったよね?」

「べ、別に寂しくないしっ」

「ふふっ……またまた」


 3人は楽しげに会話をしながら、俺の前を歩く。


 こうやって一緒に下校していると、外でもこの3人は周囲の視線を集めているのがよく分かる。

 会社帰りのサラリーマンにランニング中のおっさん、犬の散歩ネキに下校中の小学生までも、この3人とすれ違うたびに目で彼女たちを追っていた。


 それほど3人の見た目は抜きん出ており、そんな3人が集まっているこの空間は他を寄せ付けない特別感があった。


(才色兼備の黒木に爆乳美少女の海山と高校No. 1ギャルの優里亜まで揃ってれば、こうなるのも必然か)


 そんな美少女3人と一緒に下校している俺は、どうしても気が引けてしまう。

 こんなキラキラ陽キャ美少女たちの空間に、俺みたいなヌメヌメ陰キャが入れるわけがない。


 彼女たちと一緒に下校しているものの、俺は顔を俯かせながら、3人の後ろを歩くことで、他人のフリをしていた。


「ねえ諒太っ」

「ひゃ、ひゃいっ!?」


 急に海山から話しかけられ、驚いた俺はつい声が裏返ってしまう。


「ちょい諒太……なんなんその声」

「諒太くん、もしかして緊張してるの?」


 優里亜と黒木も俺の方を見てくる。


「き、緊張なんてしてないが! ただ……お前ら、本当に脚本の読み合わせするだけなんだよな? 読み合わせしたら帰ってくれるんだよな?」


「「「…………」」」


 示し合わせたかのように、3人は返答せず無言になる。

 こいつら……まさか長居するつもりなんじゃ。


「ねえねえ! 諒太の家ってピコピコあるよね? 愛莉ピコピコやりたーい!」

「おい海山っ、言ったそばから……」

「諒太怒んなし。別にゲームくらいよくね?」

「そうだよ諒太くん。せっかくみんなでんだから堅苦しいことは言わないでよ。ね?」


 ん? 今、黒木のやつ間違いなく『遊ぶ』とか言ったよな。

 もしかしてこいつら、最初ハナから脚本の読み合わせとかやるつもりないんじゃ。


「みんな! ここのコンビニ寄ってこーよー」

「そうだね。お菓子と飲み物はここで買って行こうか?」

「りょーかい。ほら諒太、行くよ」

「ええ……」


 流されるまま、俺もコンビニへ入るのだった。



 ☆☆



 コンビニに寄り道した俺たちは、買い物袋を提げながら俺の家へ到着する。


「ここが諒太くんのお家だよ?」

「わぁ〜ここが諒太のお家なんだー」

「ふーん」


 我が物顔で海山と優里亜に俺の家を紹介する黒木。

 おい、ここは俺の家なんだが……。


「あっ、諒太〜! って……なっ!」


 俺たちが家まで来た(最悪の)タイミングで、反対側の道からクソ姉が帰って来て玄関先で鉢合わせる。


(どうしてこういう時に限って、帰って来るタイミング被るんだよ……!!)


「あ、えと、ども……黒木さん、弟がいつもお世話になっております」

「もうお姉さんったら。なんで敬語なんですか?」


 俺の前ではイキリ倒してる姉だが、普通に内弁慶の陰キャなので、家族以外の前では大体こうなる。


「あと……そっちのお二人は……ってうわ、おっぱいでッッか!! 私の3倍くらいあんじゃん」

「ほへ? 愛莉のこと?」

「てかギャルもいる……太腿エロい……」

「え、あたし?」


 初対面の相手に失礼極まりないなこの姉……さっさとどっか行って欲しいんだが……。


「諒太。あんたのお姉さん、ちょっと……変わってるね」

「ちょっとどころか大分変わってるぞ」

「諒太のお姉さんって、なんか諒太に似てる〜!」

「あ、そうっすかね。えへへ……」


 海山に褒められたと思い込んで照れる姉。

 どう考えても褒め言葉じゃないだろ。


「あ、あの、私はあと1時間くらいどっか行ってるんで……その前に、諒太ちょっと来い」

「俺?」

「いいからっ」


 姉は俺の腕を掴むと、3人から少し離れた場所へ引っ張る。


「諒太!!! いい!?」

「な、なんだよ」


「ひっ! 避妊だけはしなさいッッ!!! 特にあの二人はエロすぎるッッ!!!」


「もうどっか行け今すぐに」


 ご乱心の姉は一人寂しく夕方の街へ消えて行った。





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記念すべき60話です。2ヶ月間、毎日読んでいただきありがとうございます(土下座)

これからもガンガンあげます!!

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