第21話 田中を探して
——翌日の早朝。
どんよりした曇り空の下を歩きながら、早めに高校へ登校した俺は、"ヤツ"がいる場所へ足を向かわせる。
俺の目的は、オタク友達で同じ中学出身の
「田中はいつも朝早くに登校して、HRの前はあそこにいるんだよな……?」
田中奏は俺と同じ陰キャのオタクだ。
背は周りよりも低くてその長い前髪で目を隠し、陽キャの前ではボソボソした小声で喋る大の内弁慶。
(俺とオタ話をしている時は、漫談師くらいベラベラ喋るのだが……)
田中は黒木と同様に数少ない俺と同じ中学出身者で、尚且つ学力だけなら黒木瑠衣に匹敵するほど優秀な生徒なのである。
(俺がこの高校を受けると決めた時には、田中と一緒によく二人で勉強したものだ)
田中と俺は同じ陰キャとして中学3年間、同じクラスで気楽に趣味について話せる仲だった。
しかし高校に入ってからは2年連続で違うクラスになってしまい、会話も必然的に減っている。
「よし、着いた」
金網に囲まれた高校の屋上。
昼休みは人気のスポットだが、朝イチだと誰もいないので陰キャにとっては絶好のスポットなのだ。
俺は屋上の塔屋の上へとハシゴで上る。
(なんかここに来るのは久しぶりだな……)
「……よ、田中」
「えっ」
塔屋の上には——小柄な女子生徒が座ってスマホをいじっていた。
最初は驚いた表情をしていたが、次第にニヤケ出す。
「オホォ〜っ、諒太くんじゃないですか! おひさですねっ!」
「開口一番でオホ声出すな田中」
「おっ、オホ声って! べ、別に私はそんなつもりはなかったのですが……!」
前髪に隠れた赤縁眼鏡。
身体が小さいのに、成長するのを見込んで(見栄を張って)大きめの制服を買ったらしく、2年生になっても萌え袖みたいに袖がダボダボしている。
見た目はロリっ子。中身はオタク……救いようのない工藤新●である。
「お久しぶりです、諒太くん」
「ああ。久しぶりだな、田中」
田中奏——彼女こそ、俺の唯一のオタク友達なのだ。
さて、本題に入ろうか。
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