陰キャの俺が席替えでクラスカースト1位のS級美少女グループに囲まれてしまった件。

星野星野@2作品書籍化作業中!

第1話 席替え


 俺、泉谷諒太いずみやりょうたはクラス内ヒエラルキーで間違いなく最底辺だと思う。


 昔から目立つのが嫌いで陰キャ気質だった俺は、勉強こそ辛うじて上位をキープしているが、友人はオタク仲間の田中しかいない(しかも田中は隣のクラス)。


 恋愛経験に関しても皆無であり、生まれてこの方、彼女が居たことはない。

 また背丈や顔も平凡であることから絵に描いたような陰キャであり、2年1組のヒエラルキーにおいては最底辺に違いない。


 こんな俺だからこそ、高校1年生の時からあまり周りに干渉しないで平穏な学校生活を送ることを心掛けていた。

 出る杭にならなければ打たれることもないからだ。


 しかし、そんな俺でもを持っている人間は何人かいる。


 主にそれは、クラスカーストトップの女子グループにいるS級美少女3人であり、市之瀬いちのせ優里亜ゆりあ黒木瑠衣くろきるい海山愛莉みやまあいりのことだ。


 彼女たちは普段から一緒に行動しており、茶髪のギャルっぽい見た目をした市之瀬いちのせ優里亜ゆりあ、黒髪清楚で学級委員長も務める黒木くろき瑠衣るい、甘えた声で妹系女子と呼ばれてるエロ可愛い海山愛莉みやまあいりの3人は、クラス内でも一際目立つ存在であり誰もが認める美少女。


 そんなクラスカーストトップの彼女たちに対し、クラスカースト最底辺である俺は苦手意識を持っておりまだ会話すらしたことがない。

 人気者に近づくとロクなことにならないのは目に見えているので、陰キャの俺からしたら彼女たちは一番に避ける対象になる。


 彼女たちと距離を置くことで、陰キャの俺は平穏な暮らしができる——。


 ずっと、そう思っていた。



 ☆☆



 今日は朝からやけに嫌な予感がしていた。


 目が覚めたと思ったら急に金縛りに遭ってしまい30分のロス。

 たまたまやってたテレビの占いは、俺の射手座がダントツの最下位。

 さらに最下位のラッキーカラーは、まさかまさかの……はぁ、虹色なんて目立つから身につけられないだろ。


 そう思いながらも年始に買った福袋に入ってた虹色トランクスに履き替えていた俺は、そのせいで今にも遅刻しそうだ(何やってんだ俺は)。


 履き慣れない虹色トランクスに股を通し、股間をムズムズさせながら校門を通る。

 ただでさえクラス内では陰キャオタクとして通っているのに、遅刻なんてしたらさらに立場がなくなる。


(もう朝のHRが始まった頃合いか? だとしたらかなりヤバい!)


 クラス担任の山田は常に竹刀を持ち歩いている時代錯誤の暴力教師だ。

 遅刻したら土に埋められるかもしれない。


 俺は焦りながら2年1組の教室に飛び込む。


 すると……そこには席を移動するクラスメイトの姿があった。

 クラスメイトは皆、自分の机の中に入っていた教材を出すと腹に抱えながら移動している。


「席替えなんて今年入って初めてだよねー」

「うんうん、山田先生厳しいから席替えなんてしないと思ってたし」

「それもこれも委員長が頼んでくれたおかげだよな」


 クラス内を移動するクラスメイトの会話を聞く限り、どうやらクラス委員長の黒木が担任の山田を説得して席替えを実行したらしい。


 抽選は既に終わっているようで、それぞれが前黒板に書かれている席に移動しているみたいだ。

 前の黒板には白のチョークで綺麗に名前が並べられており、俺、泉谷諒太の名前もしっかりあった。


 席替えなんて陰キャの俺にとって何も嬉しいイベントじゃない。

 好きな相手と隣になりたいとか、友達と近い席になりたい、なんて感情を持ち合わせていないからだ。


 さて、俺の席は……ん?


 左隣には市之瀬優里亜いちのせゆりあ

 右隣は黒木瑠衣くろきるい

 さらに前には海山愛莉みやまあいり……は?


「嘘……だろ」


 クラスカースト最底辺の俺の周りにいたのは、苦手意識を持っているクラスカーストのトップ美少女3人だった。





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