第2話 再び戦いの舞台へ
次に目を覚ました時、俺は白い世界にいた。
「ユート⋯⋯再びあなたに会えて嬉しいです」
目の前で光が集まる。
そして光が収まると、そこには白い装束を着た女性が⋯⋯女神セレスティアがいた。
「ですが悲しくもあります。命を失ってしまったのですね」
ここに来るのは二度目だ。一度目は日本で死んだ時。おそらく今回も死んでこの場所に来てしまったようだ。
「申し訳ありません」
「いいえ、あなたは本当によくやってくれました」
「でも、世界を救うことは出来ませんでした」
「そのようなことはありません。あなたは魔王を倒したではありませんか」
俺は日本で死んだ後。白い空間に飛ばされて、女神様からこの世界、エンド・アースを救ってほしいと言われたのだ。
「⋯⋯それなら俺が死んだ後の世界がどうなったか教えて下さい」
「⋯⋯⋯⋯」
無言ということは、やっぱり人類は滅んでしまったのか。これじゃあ何のために戦ったのかわからないな。
「私の力が現世に介入出来ないばかりに、あなたには辛いことをさせてしまいました」
「いえ、最初は何故俺がと思ったことがありましたが⋯⋯この世界、エンド・アースのことが好きだから、だから⋯⋯」
世界を救いたかった。
でも悲しみが大きすぎて俺は言葉に出すことが出来ない。
俺をそんな気持ちにさせたのは友人や仲間、愛する人達だ。
しかし最後には全てを失ってしまった。
結局俺は何も出来なかったんだ。
「ユート⋯⋯私はあなたには感謝の気持ちしかありません。そのお礼と言うわけではありませんが、何か願いを言って下さい」
「それなら⋯⋯亡くなった人達を生き返らすことは出来ますか?」
「⋯⋯申し訳ありません。それは私の力の範囲外になってしまいます」
「そう⋯⋯ですか」
いくら女神様でも、何でもありという訳にいかないか。
「あなたは命を失った後でも、大切な人達を幸せにしたいと願っているのですね」
「はい⋯⋯」
「一つだけ⋯⋯一つだけ方法があります」
「えっ?」
みんなを救う方法があるというのか?
俺はその方法が知りたくて、女神様に詰め寄る。
「それはあなたが過去に戻り、未来を変えることです」
「過去に? そのようなことが出来るのですか?」
「過去と言っても、五年程前に精神を飛ばすことが出来るだけです」
「精神を飛ばす⋯⋯ですか」
「簡単に言ってしまうと、記憶を持ったまま五年前に戻れるということです」
五年前か⋯⋯確か戦いが始まり、疫病が拡がる前だよな。
もし過去に戻れるなら上手く立ち回ることで、死ぬはずだった人達を助けることが出来る。だけど記憶だけじゃなく、確実にみんなを救える力が欲しい。その力は⋯⋯
「過去に戻ることともう一つ⋯⋯傷や毒を治す回復術師の力を授かることは出来ませんか?」
「それは可能です。あなたが望むならその力を授けましょう」
女神様は俺の額に手を当てる。
思い出した。前に死んでここに来た時も手を当てられて、戦う力を授かったんだ。
そして女神様から光が溢れだすと、俺の意識は段々と薄れていく。
「仲間を失い傷ついたあなたに、もう一度戦ってほしいなど言葉にすることは出来ませんでした。今こうして力を授けたことも正しいのか、私にはわかりません」
女神様が悲しそうな瞳で俺を見つめる。
そもそも俺は女神様の力で異世界転生し、このエンド・アースで戦うことになったんだ。責任を感じるのは無理もない。
「セレスティア様。確かに前回は俺の意志はなく、流されるまま生きていました。でも今は違う⋯⋯俺は大切な仲間と最高の結末を向かえるために、あの世界に戻るんです。その機会をくれたセレスティア様には感謝しかありません」
「ありがとう。ユートがこの世界に来てくれて良かった。ユートの幸せを私もここから祈りましょう」
セレスティア様の祝福の言葉が終ると、意識は完全に途切れてしまった。
そして次に目が覚めた時、俺はベッドの上だった。
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