第15話 窓際にて②
『やれやれ、本当にみんな護衛能力がないわね』
「あなたがそれを言いますか」
若葉は半ば呆れた目線で、窓際のカーテンを見やる。彼女に関して言えば、さっきの岸よりも隠れ方が酷い。
聖はオフィスのカーテンの裏に隠れただけ。つまり、下部分から足が丸見えである。
「そんなんじゃ、すぐバレますよ」
『案外見つからないものよ。それに、あなたと近ければ近いほど、護衛は完璧に近づくものよ』
そういうものだろうか。やってることで見れば、これまでの二人と比べても明らかにポンコツ臭がする。
「ここでもし、矢崎さんが来たりしたら」
一瞬でバレてしまうだろう──ちら、と矢崎の席を見た若葉は「あれ」と声を漏らし、
「矢崎さんが、トイレから戻ってきていません」
『矢崎?誰よそれ』
「先輩です」
『私はあくまで、あなたの護衛が任務。他のことに気を取られれば、足元をすくわれるわ』
「……まさか、神龍の人たちに!」
『心配いらないわ。狙っているのはあなただもの』
「で、ですが、私をおびき寄せるために、矢崎さんを捕まえている可能性も」
『だったら尚更、心配しないほうが利口よ。動けば奴らの思う壺だわ』
うう──と、ズボンを掴む若葉。チェスを中断して閉じると、すっと立ち上がる。
『何をする気?』
「見てきます!」
『は、はあっ?あなた、話聞いてなかったの?動けば思う壺だって──』
「しかし矢崎さんを、放ってはおけません!嫌味ばっかり言ってくるけど、大事な先輩なんです!」
『ちょっと!』
聖の静止も聞かず、若葉は椅子を蹴るように立ち上がると、そのまま事務室を出て行った。
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