第13話 通勤路にて
『兵頭は無事、運ばれたそうですわよ』
「よかったです……」
電話での久院の連絡に、胸を撫で下ろす若葉に『ふんっ』と鼻を鳴らし、
『兵頭よりも、自分のことを心配すべきですわ。神龍の追手は、おそらくあなたを追っているでしょう』
「そんな──」
『でも心配しないでくださいまし。あなたの護衛は既に、そちらに到着しておりますわ』
「それって」
ちら──と、背後を見る。
電柱に潜む細長い人影。
若葉が少し歩くと、しゅたたたたっと次の電柱に高速で移動した。
若葉の嫌な予感が正しければ、あれが次の護衛で間違いないだろう。
「大丈夫なんですか?あれ」
『彼女は忍びの一族。今を生きるくノ一のエリートですわ』
「うさんくさいですね」
『あなた、急に失礼になりましたわね』
「だって、バレバレなんだも──ひゃぁああああっ!?」
しゅたたたたっ!と彼女は素早く若葉の眼前にまでやってくる。
「野窓若葉」
「は、はいっ!」
「貴様にはあえて見えるように護衛しているのだ。断じて胡散臭くなどない」
さっきの発言が気に障ったのだろうか。鼻息荒くポニーテールを揺らしながら睨んでくる。
「す、すみません」
「分かればよかろう」
彼女は再びしゅたたたっと電柱に忍んだ。救出課は曲者揃いのようだ。
『岸は身を守る護衛術をいくつも身につけているわ。安心しなさいませ』
「は、はぁ」
ぷつん、と電話が切れる。
「不安だ」
しゅたたたっ!
「私がいるのに、不安とはなんだ」
「す、すみません」
「分かればよかろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます