第15話 決着

「ぎぎゃぁぁぁぁ!!!」

あれからルーガスは魔法陣を展開し続けている。

空中から街を見渡すと魔法陣から降り注ぐ光線によって、街の至る所で建物が崩壊していた。


「いい加減にしなさい!!!」


私はそう叫びながらルーガスの下腹部に向かって滑空し、攻撃を仕掛けた。

その瞬間ルーガスは吹き飛ばされ、街を攻撃していた魔法陣は消え去った。


「が、がが・・・」

「核は・・・あれね」


その時、ルーガスを眺めていると胸の中央に核であるコアを見つけた。

その中には奏から言われていた、魔人の少女が眠っている。

ルーガスはさっきの攻撃で動けなくなっており、核を破壊する絶好のチャンスが来た。

コアを破壊するためにイリスは右手に魔力を集める。


「貫きなさい!!!!」


しばらく魔力を貯めた後に光の魔法陣を展開し、光り輝く槍を出現させた。

その後光の槍は恐ろしい速度でルーガスに飛んでいき、そのまま体を貫いた。


「ぎぎゃぁぁぁぁ!!!!」


ルーガスは痛みに苦しんでいるが、コアを破壊出来ていなかった。

どうやら突き刺さる直前で体をそらしたらしい。

すると怒り狂ったルーガスはその場から空中にいる私に向かって飛び上がる。

あまりの速度に反応できず、そのまま地面に叩きつけられてしまった。


「あが・・・!!!」

「なんて・・・速度なの」


私はたった一度の攻撃で重傷を負ってしまい、翼をやられたせいか飛べなくなっていた。

ルーガスはすかさず、地上の私目掛けて魔法を放った。


「ぐ・・・!!!」


私は傷だらけの体を何とか動かして避けたが、そのせいでさらに傷が深くなってしまった。


「イリス!」


すると遠くからアルが駆けつけてきた。

そばには奏の姿もあり、私達を守るために植物の壁を展開している。

近くにミレニア王女がいないため、どうやら無事に城まで運べたようだ。

私は目の前のアルに必死に訴えた。


「逃げてアル、私がなんとか足止めするから・・・」

「イリスを置いて逃げられないよ!!!」

「ダメよ・・・私が足止めしないとこの国は・・・」

「でもその体じゃ・・・」

「大丈夫、すぐに治るわ」


すると竜の力の影響からかあれだけ重症だった傷が少しづつ回復している。


「次こそあいつを倒して見せるわ、だから早く逃げて」


再びルーガスのもとへ向かおうとすると、突然アルが袖をつかんできた。


「待って・・・私も行く」

「アルは普通の人間なのよ?あいつの攻撃を一撃でも受ければ致命傷になるわ」

「イリスが傷ついてるのに、何もできないのは嫌なの!」

「イリス姉、私が援護すればアル姉も戦えるでしょ?」


ずっと防壁を展開していた奏が、そう言いながら近づいてきた。


「奏まで・・・」


二人の表情から何を言っても無駄だと感じた。


「はぁ・・・分かったわ」

「もう一度さっきと同じ魔法を使うから、直前で避けられないようにしてくれる?」

「了解!」

「分かったよイリス」


その後攻撃が収まったタイミングで、反撃を開始した。

すぐさまアルと奏が敵に向かって移動し始める。


「アル姉乗って!」


奏が植物で空中に足場を作り、アルはそこに飛び乗った。

それを見たルーガスがアルに向かって魔法を放とうとするが、すぐさま奏が両腕をツタで拘束した。


「ギギィ!!!」


ルーガスは一瞬にしてツタを引きちぎったが、そこにわずかな隙が生まれる。

その隙を逃がすまいと、アルはルーガスの両目を切り裂いた。


「ガギャァァァァ!!!」


ルーガスはあまりの痛みに暴れ狂い、そのまま目を抑えながら座り込んだ。

それを見た奏は残されたすべての植物を使いルーガスを拘束する。

ようやく魔力を貯め終えた私は魔法陣を展開し、再び光の槍を出現させた。


「奏、アル、ありがとね」


私はそう言うと、ルーガスのコア目掛けて魔法を放った。

光の槍はコアに見事命中し、中にいた魔人もろとも砕け散った。

今の攻撃で体中の魔力を使い切ったらしく、そのまま私は地面に倒れこんだ。


「もう、動けないわね・・・」

「イリス!」

「アルかしら?よくやったわね」

「うぐ、うぐ・・・」


アルは泣きながら私を抱き寄せる。


「もう泣かないの」

「だって、えぐ・・・だって・・・」

「イリス姉無茶しすぎだよ」


体を引きずりながら奏が近づいてきた。


「奏も人のこと言ってられないでしょ?」

「はは、バレたか」


奏は能力を酷使しすぎたせいか、かなり体調が悪そうだ。


「実は、だいぶきつい・・・」


すると突然その場で倒れこみ、気を失ってしまった。


「奏ちゃん!」

「奏、だいぶ無茶したみたいね」

「アル、私は後回しでいいから奏を先に運んでくれる?」

「そうだね、イリスも待ってて、すぐに応援を読んでくるから」


それから私は城の兵士によって医務室に運び込まれた。

城の中では魔物に勝利したことを知った兵士たちの間で歓声が上がっている。

その後ようやく動けるようになり、奏が眠っている部屋に向かった。

その時城に避難していた街の人たちとすれ違ったため、また差別されると思っていたがそんな人は一人もいなかった。

その中には屋台で会ったおじさんもいて、私に話しかけてきた。


「嬢ちゃん、亜人だったのかい・・・」

「えぇ幻滅したかしら?」

「なわけねぇだろ!嬢ちゃんたちは俺たちを救ってくれた恩人なんだ」

「そこに亜人がどうとかいう奴は、ここには一人もいねぇ」


するとおじさんは深々と頭を下げた。


「みんなを代表するわけじゃねぇが、先にお礼をさせてくれ」

「俺たちを救ってくれてありがとう、この恩は一生忘れねぇ」


それに続くように周りにいた人たちも頭を下げている。


「ちょっと・・・もう分かったからみんな頭をあげて!」


私は突然の出来事に慌ててしまった。

これだけ大勢の人たちに頭を下げられたのは初めての経験だったからだと思う。

それから街の人たちと別れ、奏の部屋に向かうと、いつの間にか目が覚めていた。

すぐそばにはアルも居て、私が来るのを待っていたらしい。


「やっと目覚めたのね」

「さすがに無茶しすぎたよ、あれから私どれくらい寝てた?」

「ほんの数時間くらいよ」

「ユラはもう寝ちゃったかしら?」

「うん、さすがにもう夜中だからね」


窓の外を見るときれいな夜空が広がっている。


「奏ちゃん、元気になってからいいんだけど、王女様が玉座に来てほしいって言ってたよ」

「そうなの?」

「たぶん恩賞を渡したいんじゃないかな」

「なるほど、アル姉教えてくれてありがとう」

「明日には行けると思うから、王女様にそう伝えてくれるかな」

「了解」


この日はそのまま城で休んだ。

そして次の日になり、奏たちと一緒に王女が待つ玉座に向かった。



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