第2話 異世界の少女

「グギャ、グギャ」


ゲラゲラと笑うゴブリンを横目に、少しずつ少女たちが捕えられている建物に近づく。

何故か俺がゴブリン達にいくら近づいても一切バレなかったためこの状態を活用している。


「ここだな」


扉は気が朽ちており鍵もかかっていなかったため、簡単に開けることが出来た。

中に入るとそこには10人以上の少女たちが鎖に繋がれていた。


「女の子?」


一人の赤毛の少女がこちらに気付き、声を発した。


「誰かな?」

「みなさん早く逃げてください、今助けます」

「だめだよ、君も捕まっちゃうよ?」


少女たちに繋がれた鎖を見ると、鍵がかかっておりなかなか開けられない。


「ふんぬ!!!」


むかついたので思いっきり引っ張ると、鎖をつないでいた板が破損し拘束を解くことが出来た。


「えぇ・・・」


まあ俺も驚いたよ、うん・・・こんな細腕で出せる力じゃないよね。

その後少女はしばらく呆気に取られていたが、奏がすべての拘束を解いたところで話しかけてきた。


「あの、君は何者かな?」

「えっと・・・ちょっと力が強い迷子かな」

「嘘だよね?ここは魔獣の森とよばれる魔境。君みたいな小さい子供が迷ったら

一瞬で魔物に襲われちゃうよ?」


ですよね!・・・うん

目の前のお姉さんはよほど怪しいと思っているのか、めちゃくちゃ睨みつけてきた。

しばらく言い訳を考えていると、少女の後ろにいた金髪の少女が話しかけてきた。


「アル、そのくらいにしたら?、一応そんな怪しい見た目でも恩人なんだから問い詰めるのは失礼よ」

「あ・・・分かったよイリス、君も問い詰めてごめんね、それと助けてくれてありがとう」


アルと呼ばれていた少女はとても申し訳なさそうにしていた。

なんだか今にも泣きそうにしていたため、こっちもすこし心苦しくなってしまう。


「いや、気にしないでほしいかな、あいつらにさらわれて気が動転しただけだと思うから」

「うん・・・」

「俺、いや私は奏っていうんだ」

イリスと呼ばれていた少女は不思議そうな顔をしていた。

「そう、それにしても奏はどうやってここに来たの?」


それについては俺も疑問に思っている。

あのゴブリンたちの反応は気が付かないというより、俺に興味がないように思えた。

ここは適当に話を取り繕うことにした。


「背が低くて見つかりにくかったのと、なぜかかなり近づいてもバレなかったので簡単に来れました」

「なるほどね、でも私たちは出れそうにないわね」

「え・・・イリスちゃん本当なの?」

「ゴブリンは人間の女の匂いに敏感なの、例えここから出られてもすぐに見つかるわ」

「そうなったら何されるか分かったもんじゃないわ」

「嘘・・・それじゃ私たち助からないの・・・」


他に捕まっていた一人の少女がポツリとつぶやく。

その瞬間部屋中に重い空気がのしかかった。


「あの・・・」

「なにかしら?奏」

「一応秘策があります、ただみんなには少し我慢してほしいんだけど・・・」


それから俺は近くにいたゴブリンを奇襲し、部屋の中で解体した。

その時部屋の中にいた少女たちが少しというかかなりひいていた気がするが、見なかったことにする。


「みなさんには、これをかぶってもらいます」

「それって・・・」


まあ、そんな反応だよね。

俺が考えた作戦はとてもシンプルなものだ。

まずは俺がゴブリンを殺し、解体して後、血やら臓物やらを入手する。

その後ゴブリンの血を頭からかぶって、女性の臭いをかき消すという方法だった。


以前読んでいた小説で得たヒントだが、臭いをかき消してゴブリンに奇襲されないように対策していた話があったため、今回はそれを参考にした。

結果思いのほかこの作戦はうまくいき、ゴブリンの村から全員無事に脱出することに成功した。


「うえ、絶対落ちないでしょこの匂い・・・」


イリスの見た目は完全にゾンビ映画に出てくるグロテスクな女ゾンビにしか見えなかった。

さらにゴブリンの死臭も相まって、よりゾンビらしくなっている。


「まあまあイリス、助かったんだからいいじゃん、街に戻ったら一緒に洗いっこすればいいんだし」

「アルはあんな目にあったのによくそんなに元気ね」


しばらくイリスたちと森を歩いているとようやく平原にたどり着いた

その後街へと続く道路上で、イリスに突然頭を深く下げられてしまった。


「奏、今回は助かったわ」

「頭をあげてよイリス」

それに女の子を助けるのは紳士の役割だからね」

「ふふ、あなたは女の子でしょ?」

「それに街へ戻ったら奏に何かお礼がしたいの」

「よかったら一緒に来てくれる?」

「本当!?良かった、ずっと独りぼっちだったから退屈だったんだよ」


やった、異世界の街なんて楽しみすぎる!!!

新しい世界に、新しい街俺の心の中はわくわくでいっぱいである。

その後イリスたちと共にゲインという町にたどり着いた。


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