沈黙せしミランダの献身
泡野瑤子
ロサ・テクノロジーズによる診断結果
ロサ・テクノロジーズによる診断結果・1
ご依頼人 アンドレア・ベラ・レオンドール様
毎度弊社製品をお引き立ていただきありがとうございます。
株式会社ロサ・テクノロジーズの主任技術者、エリザベス・ヴィロンと申します。
先日ご依頼いただきました弊社製品の修理につきまして、診断結果をお伝えいたします。
【ご依頼詳細】
二年前、ご依頼人様のご友人様が、弊社製品「コミュニケーション型AI《M‐140》」が搭載された中古品の女性型人造人間「ミランダ」(以下、「ミランダ」、三人称「彼女」とする。)を購入。
「ミランダ」は、株式会社Fファクトリーにて当初顧客への性的奉仕を目的として開発された製品だが、ご友人様はこれを家庭用へと調整しつつご利用なさっていた。
ご購入から二ヶ月後、AI研究者であるご依頼人様のカスタマイズで「ミランダ」に歌唱機能を追加。
二年ほどは問題なく動作していたが、「ミランダ」は突然動作を停止してしまった。
ご依頼人様は念のため躯体のオーバーホールを行い、機能上は動作可能であると確認できたものの、事象は解決しなかったため、《M‐140》側に異常があるものと推測される。
彼女が動かなくなった原因を調査し、再び歌えるように修理してほしい。
【診断結果】
結論から申し上げますと、「ミランダ」は
彼女が動かなくなったのは、これまでの学習結果によって導き出された合理的判断です。
人間に例えれば―そう、「ミランダ」は自らの意志で動作しないことを選んだ、ということになります。
もちろん「ミランダ」に調整を加えて、強引に起動させることは、技術的には可能です。
しかしながら、依頼者様はその是非を判断なさる前に、「ミランダ」が自ら動作を停止した理由をお知りになるべきかと存じます。
添付のレポートをご一読いただけますでしょうか。
これは「ミランダ」よりエクスポートした記録データを、彼女の独白形式で記述、再構成したものです。
なお、「ミランダ」は人造人間ですので当然人格はございませんが、文書内では便宜上一人称「私」となっております。
ご査収のほど、よろしくお願いいたします。
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