「   」の記憶

琴望(ことの)

第一話 みんなのヒーロー

この世界では、人間以外にも様々な種族が存在する

妖怪、獣人、魚人、機械、リザードマンなど

種族が違えど、皆平等に、平和に暮らしていた

しかし、その中でも凶悪で、世界の敵とみなす種族がいる



大昔、天使と悪魔が種族を作り出し、この世界を作り出した

最初は皆、互いに支えあうよう協力していたらしい

だがある日、とある神によって、その糸が千切れた

その神は、悪魔族たちに加担し、この世界を壊そうと企んだ

そこまで至った理由は、未だ伝えられていない

悪魔たちは、人間問わず、様々な種族たちを襲った

しかし、肉体を食うわけではい


記憶の欠片を食らうのだ


全ての記憶は、欠片として具現化出来る

勿論、種族全てが出来ることでは無い

可能とするのは、"妖怪"、"天使"、"悪魔"の3種族のみ

その中でも強力な力を持つのが悪魔である

大昔は、どんな種族も力を合わせ、世界を回していた

幸せであったと記録されている

だが、いつしか悪魔たちは無差別に記憶の欠片を食らい始めた

原因は不明ではあるが、敵意識を持って食らっているのは事実

悪魔以外の種族は協力し、ここ千年、平和をもたらしたのだという

しかしそんな時代も、崩れ始めた

時折、小さな悪魔たちが街へ現れ、暴れ始めるように

そこで、人間、機械、妖の三種族へ、神に選ばれた者たちに力を与えた

それは、記憶の欠片を修復し、悪魔たちを倒す力


神はその力を一部の者に託すことにした


人間族には、二人の兄弟に蛇が宿す正義の力を

機械族には、全てを守る力を

妖族には、破壊の力をそれぞれ与えた

彼らのおかけで、被害は最小限に済んでいるのだ



海斗かいとside

「姉さん。朝ごはん出来てるよ?」

僕は朝の支度を終わらせて、朝食を作れば姉さんを起こす為に部屋に入る

不意に目に入った悪戯用の虫に化けた玩具はすぐに回収

そして、周りを見渡す

可愛らしい水色を強調とした部屋

勉強机に縦鏡

大切にしているウサギのぬいぐるみを抱きしめながらベッドの上で寝ている僕の姉さん

その近くには、ペットである白蛇のアルが姉さんの頭の上に乗っていた

「アルが居るなんて珍しい…姉さんを起こそうとしたの?」

アルはそれを聞いたのか、スルリと僕の肩まで登ってくる

「姉さん。姉さん!」

「んぅぅ…ねむいのぉ……」

寝ぼけている姉さん

「はぁ…姉さんの大好きな”苺パンケーキ”作ったんだけどなぁ…どうしようかなぁ」

そう言葉にすると、案の定姉さんは飛び起きる

綺麗な白髪の長い髪の毛が少しだけぼさぼさだ

後で髪をとかさないとね

「たべるぅ~…」

寝ぼけながらというもの、パンケーキには勝てないらしい

「はいはい。早く行こう。もう二人待ってるよ」

姉さんを立たせて手を引く

本当に、のんびりなんだよなぁ

リビングに着くと、既に食べ始めていた妖と機械の二人

「おはよう凛音りんね。よく眠れたかい?」

アンドロイド型の体であり、スーツを着て専用のエネルギー飲料を飲みながら笑顔で言う彼

姉さんはその言葉に反応したのか、ホワッとしながら答える

「うん~!沢山寝たよぉ」

「そうか。ならよかった」

彼は機械族

名前は№06

小さいころから世話になっている人で、優しいお兄さんのような人だ

実際、僕は兄さんって呼んでる

機械族は大体、片言で喋るのだが、№06は珍しい個体で、とても人間に近しい話し方をするのだ

「あれれ??なんで平然としてるの????」

予想外の展開に驚いている妖

マネキンに憑依し、自らの姿を変えることが出来る彼女

現在では、体は人間型のマネキンであり、シンプルな白いノンスリーブのワンピースを着て過ごしている

彼女の名前は、かさねがみ

悪戯が大好きで、よくいろんな人に悪戯をするらしい

姉さんに毎度毎度やってくるので、僕としては次したらただじゃすまないと思っていた

が、やりすぎは良くないと姉さんから言われたので、我慢しているといっても過言でなはい

それとめんどくさいので、かさねで呼び名を統一している

「やっぱりかさねじゃん。次やったら容赦しないから」

僕は彼女に向かって睨みつけながらそう言った

「怖いって!!!あんたの弟でしょ?何とかしてよぉ…」

かさねはそう大声で言いながら、姉さんの後ろに隠れる

「かいとぉ~!パンケーキ!!」

当然、姉さんはフル無視

今の姉さんには、パンケーキにしか目がないようだ

「はいはい。ちょっと待っててね姉さん」

「酷くない?この馬鹿兄弟」

「まぁまぁ…早く食べなさい」


・・・・・・・・・・・・



姉さんは僕の作った苺パンケーキを幸せそうに頬張る

同時に僕も、今日の朝ごはんであるサンドウィッチを食べていた

「なぁ二人とも、今日はかさねがみと少し買い物に行こうと思ってるんだが…来るか?」

兄さんがそう言えば、姉さんは口の中に含んでいた食べ物を飲み込む

「珍しいねぇ。お兄から買い物誘ってくれるだなんて」

「たまにはと思ってな。それに食材も切らしそうだろ?」

兄さんの言う通り、冷蔵庫にはあまり食材がない

「確かに、そろそろ買い物しなきゃね。あと新しい本も欲しい」

僕がそういえば、かさねが嫌な顔をして僕を見る

「またあの小難しい本が増えんの??よく読めるよねぇ……」

「かさねみたいに、頭は馬鹿じゃないからね」

「次言ったら呪うよ???」

少しの口論になったが、姉さんと兄さんが止めに入る

予定通りに、みんなでショッピングを楽しむことにした








ケルト音楽が、街中で流れる

レンガで出来た建物が立ち並び、人々は今日も生活していた

この場所では音楽が主流で、必ずと言っていい程、誰しもが楽器などを持っている

すぐ近くには、港があり、船からはたまに海賊たちが来航してくるのだとか



凛音りんねside

みんなが選んでくれた服を着ている

可愛く、お洒落なピンクベージュのシンプルなワンピースに、白くと透明感のある羽織を肩にかけた

大事なペンダントとアルも忘れずに

太陽の光が強く差し込む

「相変わらず、ここは賑やかだねぇ」

かさねちゃんがそう言えば、お兄も頷く

「平和の証だな。さて、ある程度の物は買えた感じかな?」

これは帰ってしまう流れだ

けど、私はまだ行きたいところがある

「お兄!私カルア姉さんの所行きたい!」

「カルア?あぁ……そうか。今日だったな」

お兄は納得した様子で、次はカルア姉さんの所に行くことになった

「ええぇ……あたし早く帰りたいんだけどぉ…??」

買い物の荷物を両手で持つのではなく、ほかのマネキン人形に持たせているかさねちゃん

「自分で持ってないのに、よく言うね」

「これでも沢山妖力使ってんのよっっ!!!」

そんな時だ


ウゥーーー!


「「「「?!」」」」

街に警報が鳴り響く

このサイレンは、悪魔族が現れたことを指す

全ての種族が、避難所まで逃げてゆく

私たちは、その反対方向に体を向けた

「ありゃりゃ……このタイミングで来るのぉ??」

かさねちゃんの言う通り、目の前には憎たらしい悪魔族達が現れる

「……カルアの所に行くのは、こいつらを片してからにしよう」

お兄がそう言えば、みんな同意した

「アル。行くよ」

私の肩に乗っている白蛇のアル

アルはコクリと頷き、私の首に付けていたペンダントを近づけた

アルがツンと顔にペンダントを当てると、アルはペンダントに吸い込まれて行く

すると、ペンダントの後ろを固定していた場所がパキッと外れ、空中に浮かんだ

かさねちゃんは、自身の持っている式神をひとつ浮かし、右手の人差し指と中指で挟む

すると、式神に文字が現れる

お兄と海斗は、ライダーベルトを取り出し、装着した


さぁ……行こう



「「「「変身」」」」








皆それぞれ逃げていくが、悪魔族は記憶の欠片を抜き取り、捕食する

捕食された者はその場に倒れこむ

当然だが、人々は逃げだし、身の安全を確保することだろう

種族の中でも逃走が困難なのは人間族だ

暴れている悪魔族は、建物までも崩壊させ始めた

レンガでできた建物が崩れ始める

人間の子供たちの頭上には、レンガの欠片であろう岩が見えた

押しつぶされそうになったその時、誰かの声が聞こえる

「危なっかしいねぇ…人の子っていうのはさぁ」

子供たちはゆっくりと目を開く

そこには、綺麗な黒髪で、日本人形のような見た目をしている女性が立っていた

先ほどまで見えていた岩は、粉々に砕かれている

「…!”つきかげ”だぁ!!」

子供たちは、笑顔でそういう

「なんで呼び捨てなのかねぇ……まぁいいんだけどさ。早く逃げなさいよ」

月影はそう言いながら、片手に式神の紙人形を持つ

目を瞑り、祈っていると、沢山の紙人形が竜巻のように回る

周りには既に、小さな悪魔たちが徘徊していた

「悪い子は、もう寝る時間だよぉ?」

月影はそう言いながら、紙人形たちを四方八方に飛ばす

紙人形たちは、小さな悪魔たちにそれぞれペタリと張り付き…

「……”祟れよ”」

そう一言発すると、悪魔たちの体は全身燃え広がり、やがては灰になり、消えていった




月影side

悪魔たちは、本当に数が多い

変身した状態で戦っているとはいえ、未だ慣れないのが正直なところだ

「相変わらず容赦ないね。月影」

後ろから声が聞こえ、振り返る

そこには、見知った者が立っていた

「あれれ??珍しい…あんた一人だなんてね。あの馬鹿兄弟のとこに行かなくていいの?」

毎度ムカつく機械族№06こと、玄兎げんと

彼はあの兄弟を小さい頃から見てきた機械族だ

機械族には珍しく、とても人間族に近い生活や考えを持っている

まぁ、それらの話は、また後にしよう

あたしがそう言えば、彼はため息を吐く

「行けない。という方が正しいよ。あの状態になったら、僕は何もできやしない。それに、巻き込まれるだけだ」

そう言って、玄兎は親指を立て、後ろを指す

あたしが目線を向けると同時に、爆発音が鳴り響いた

「あー……なるほどね。そりゃ無理だ…じゃあ、あたしらはここら辺にいる奴らを片せばいいって感じ??」

周りを見渡せば、小さな悪魔族だらけ

「うん。そういうこと。行くよ月影」

「へいへーい」

あたしは紙人形を構え、玄兎は両腕を鋭い剣と盾に変形させる

二人で背中を合わせ、ニタリと微笑むあたし

「足引っ張らないでよ??」

そういっても、じじぃは静かに返事を返してくる

「君もね」



イルルside

泣いている小さな少女に、癒しの力をかける

すると、傷が見る見る治り、元通りになっていった

「これで大丈夫。ここは危ないですから、早く非難してくださいね」

僕がそう親御さんに伝えると、その子のお母さんが子供を抱えながら感謝を伝えてきた

「ありがとうございますっ…!貴方も気を付けて…」

彼女はそう言って、その場を後にする

大きな爆発音が聞こえ、後ろを振り返った

そこには、いつも通り悪魔たちを勢いよく倒していくヴァイパーの姿

彼女の能力はポイズン

様々な毒を生成し具現化することが出来る能力

空気も液体でさえも毒に変換することも可能なもの

さっきの爆発は、敵の体内に毒を打ち込み、周囲を巻き込みさせる爆発を仕向けたものだろう

本当に、凄い能力だ

しかし長時間行うと、暴走し、動けなくなってしまう

少し眺めていれば、彼女がこちらに向かってくるのがわかる

「ヴァイパー。結構時間たっているけど、大丈夫?」

僕がそう聞けば、少し間が空いた後…

「平気だ。人も居ない。イルル。手伝え」

いつもの姉さんとは思えない話し方

でも、もう慣れた

「分かったよ。じゃあこっちを片そう。向こうは玄兎たちがやってくれているっぽいし」

「俺の後ろ、任せてもいいか?」

「もちろん。あ、ちょっと待って。その前に、手出して」

ヴァイパーは両手を僕に差し出す

見てみれば、彼女の手のひらはボロボロ

せっかくの綺麗な手が台無しだ

傷もできてしまっている

僕は彼女の手を握りしめ、目を瞑り──

「”クラティアン”」

唱える

すると、彼女の怪我は徐々に治っていった

これが僕の能力

欠片を修復すること

記憶の欠片は、記憶を具現化するものでもあるんだけど、人によっては、身体にも影響を及ぼす

欠片が一部割れてしまえば、本人の身体の一部が欠けてしまう、とかね

まぁ、回数は限られているから、あまり使わないんだけど

「……お前も、無理はするな」

「分かってるよ」

理解していることを伝え、後に、悪魔たちを僕たちで倒していった



──いつ、この地獄が終わるのだろうか



玄兎side

「ほらほらほら!!!さっさと……寝なさいよ!!!」

式神から生み出した刀を使い、悪魔たちを破壊へ導く

刺しては崩れ、切り刻んでは崩れの繰り返し

いつの間にか、彼女の後ろに2体の悪魔が攻撃を仕掛ける

僕は地面を蹴りあげ、大盾を取り出し、防ぐ

「お?助かるよぉ~じじぃ」

にへらと笑う月影

「もう少し、周りを警戒してよ」

僕は、そのカバーだ

「いいじゃーん。じじぃを信頼しての事だしぃ〜」

そう言いながら、5……8…………12…

どんどんと悪魔たちを破壊していく

「君はやりすぎ。カバーが間に合わなくなるから」

僕はそれでも、彼女について行った

「これで…………最後!!」

最後の1匹を破壊する

周りをもう一度見渡すが、残っている悪魔はいないようだ

反対側も、ある程度片付いたのか、こちらに合流し、人気のない場所で、変身を解く

「みんな。お疲れ様」

変身が解かれ、通常に戻る俺たち

アルも同時に元の姿に戻り、凛音の肩に乗る

俺がそう言えば、かさねがみは地面に座り込んだ

「疲れたぁぁ…」

彼女は自身の変身を解くと、今朝と同じ白いワンピースを着たマネキン姿になる……かと思いきや、体力の使い過ぎで紙人形状態になっていた

それもそうだ

あれだけの数を、大体一人で倒してしまったから、無理はないだろう

「かさねちゃん。どのくらい倒してたの??」

凛音が彼女に、少しばかり心配そうに聞いてくる

案の定疲れ果てて答えない

だから、俺から伝えることにした

「…俺が目視出来ている数で、92」

「え??」

「あらら……」

兄弟仲良く唖然

「あまり長く使いすぎると、体が持たないぞ」

俺はそう言いながら、紙人形をてのひらに乗せる

「た…楽しくなっちゃって……つい…」

声の雰囲気からして、これは何も考えないで突っ込んだな

「そっか。かさねちゃんは変身すると、気持ちがたかぶるんだっけ」

「そー…長期戦するのはめんどくさいって思ってるのに、不思議と上がるんだよぉ…」

俺と海斗以外の二人は、変身すれば少しばかり本人に悪影響を及ぼす

凛音は海斗がちゃんと計算し、考えているおかげか、今回はあまり影響が来ていないようだ

かさねがみの場合、今回ははしゃぎすぎていたのと、俺があまりカバーが出来なかったのが原因だ

「すまん。俺がもう少し動けば良かった」

「いーや大丈夫。あたしも、一瞬だけ理性失ってたし」

そう彼女と話していると、一匹のふくろうが飛んできた

梟の首元をよく見れば、キラリとネックレスが光っているのが見える

「あれ?カルア姉さんの梟じゃない?」

海斗の言う通り、あの梟はカルアのだ

俺が口笛を吹けば、俺の腕に乗ってくる

体は機械であるから、ダメージはない

赤色に染まるペンダントから、光が差し込み、カルアの姿が映った

彼女は獣人族であり、唯一の黒猫

瞳は深緑に染まっており、猫としてはとても美人な猫だ

「カルア。君から連絡をくれるなんて珍しいね」

俺がそう言えば、カルアはニコリと笑う

「そうね。いつもなら、あなた達から来るけど…今そこに、馬鹿兄弟は居るかしら」

「「誰が馬鹿兄弟だ/よ」」

はやり仲良しな二人だ

「丁度この後、君の所へ行こうとしてたところだ。悪魔たちが現れたもんだから、少し手間取ったけど」

先ほどの状況を説明し、カルアの所へ行くことも伝える

「そう、ならよかった。忘れてたのかと思っていたけど…お菓子を用意して待ってるわね」

彼女が笑顔で答えると、そのまま連絡は途切れ、彼女の梟も飛び去った




北に位置する暗い森

中心部にたたずむ大きな城に、悪魔たちは住み着いていた

その場所は永遠と夜であり、光が当たることなどない

広々とした食堂に、四名の大悪魔が、皿に乗っている記憶の欠片を食べていた

「おいバル。てめぇの欠片レア物ばっかじゃねぇか。一つ寄こせ」

彼はそう言いながら、片手でヒョイッと記憶の欠片を投げて、自身の口に放り込む

灰色の狼人間の姿であり、黄色い瞳がキラリと光る

左頭に羊のような角を生やしている悪魔

名をセクメト

彼は破壊の悪魔

全てを破壊出来る程の力を持っている

「えぇ~??ずるいよぉメトちゃん!私も欲しいのにぃ。ボティスも欲しいよね」

彼女も同じことを思っていたのか、駄々を捏ねながら、静かに本を読んでいる蛇の悪魔に声を掛けた

ピンクのツインテールに、小さな銀の王冠を乗せ、悪魔の小さな角と羽を生やし可愛らしい黒ベースのゴスロリファッションで過ごしている彼女

名をイポス

彼女は色欲の悪魔

相手の心情を読み取ることが可能

「いらない。勝手に決めつけないでくれる?私はそこまで食べれないから」

「えぇ…」

冷たい言葉を吐き、イポスは少しばかりしょげてしまう

ハーフアップの髪型は赤色に染まっている

水色の瞳は、何やら海の中に沈んでいるような色合いだ

下半身は蛇であり、上半身は人間で、肩を出している涼しげな服装

名をボティス

彼女は時を知る悪魔

過去を目視することが可能

そんな中、優雅に、そして静かに欠片を食べる一人の男

キラキラと輝く記憶の欠片が皿に乗っているのを、少しばかり眺める

「…足りないな」

ボソッと呟くと、ボティスは溜息をした

「ここ千年は動けなかったのだから、仕方のないことでしょ」

本を読みながらそう答えるボティス

「そうそう!!私ももっと欲しい!」

その隣で、バンバンと子供のように笑顔で言うイポス


コンコン…


そんな時、扉のノック音が部屋に響く

「バル様。バシンでございます」

お爺さんの声でありながら、丁寧な口調で申し出る一人の悪魔

「入れ」

バルがそう言えば、バシンは失礼しますと言いながら部屋に入ってくる

白い手袋に執事の服装をした老人

左手を前にして腹部に当て、右手は後ろに回し、1度礼をする

ゆっくりとバルの近くまで歩き、耳打ちを始めた

「…そうか。”また”現れたのか」

不機嫌な様子になるバル

「なーにそんなピリピリしてんのぉ?なんかあったぁ?」

イポスはバルの顔にズイッと近づけ、パタパタと羽を動かしながらバルの膝の上で笑う

「…イポス。失礼よ」

本を閉じ、彼女を睨みながら言うボティス

「構わん。少し、厄介なゴミが現れたことに苛立っているだけだ」

バルがそう言えば、ボティスは溜息をして、また本の続きを読み始める

「おい。まさか喧嘩事か?」

先ほどとは変わり、セクメトは少し楽しそうな様子で言う

「お前たちも、この欠片が欲しいのなら手伝え」

バル以外の三人はその言葉を理解し、ニタリと笑い、彼を見る

バシンはバルに水晶を渡すと、ゆらりと何かが映り始めた

そこには、楽し気に過ごす街の住民を守る四人の影

彼らは呑気に歩いている様子が、水晶に映りこむ

バルもまた、ニタリと微笑み、こういった


「──正義狩りにな」























…To be continued

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「   」の記憶 琴望(ことの) @kotonoignisu

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