空虚な家
@tasakiboy
第1話
雨が降っている。
いや、現実的に雨が降り注いでるわけではなく、心の雨である。
空虚な気持ちを表す適切なメタファーとして「雨」という言葉が多用されるケースは小説やドラマでも多い理由は恐らくブルーなイメージを想起させるような部分を孕んでいるからだろう。g.w初日の気分としては最悪だ。
世間の人は日頃のつまらないブルシットジョブの憂さ晴らしに家族やカップルでアウトレットでも行っているのだろう。勿論俺には全く縁もゆかりもない話だ。
街行く一般peopleらは何かしらの単一化した目的を果たす為、忙しなく、何処かに向かっている。人生を着実に前に進めている証左である。実にめでたい事だ。赤羽駅のカフェの片隅でアイスコーヒーを飲みながら、メタ的に世間を批判的な視線で横目に見て、悲観的なことを考えてみたものの、全く人生の新しい一歩の手掛かりを掴めないまま、20代の貴重な連休初日の午前中の時間が消失していく…一体何をすれば良い…
まあ、世間的に見たらよくいるポストモダン時代に産み落とされた大きな物語の消滅と共に、自分の存在意義が見出せない若者ということになるが、そういった社会的背景を理解しながらも、打開策となるキーが自分の頭の中には全く見つからない。いっそのこと、脳死して資本主義的に成功する為に、相対的に工数を増やして試行錯誤を繰り返し、会社のソルジャー要員としてガムシャラに働いて、キャッシュリッチを目指すか?
いや、冗談じゃない。
冒頭、カントの永劫回帰の否定から始まるクンデラの小説のように、この不確実性が高い世の中をドライブする為に、自分の中でどうにかして答えを見つけてやる。腑に落ちる理由を必要としている人間がその答えを知る故の権利を得る適切な行動は自考するに限る。
この小説は俺の体験考えを具現化するプロセスの流れを記述することを通して、読者自身へ自己の回復を導く糧となれば幸いである。
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