匍匐飛行 ~ヘリコプターパイロットの細腕戦記~

梅小路 双月

第1部 プロローグ

 本書を、空に魅せられた全ての仲間達に捧げる。


 この大空には人生を懸ける価値が確かに有り、情熱の日々は決して色褪せない。



 

 パイロットにとって最大の敵は、目の前を飛行する敵機ではない、パニックだ。                                       

                              ルフトヴァッフェ                                          



 私は今空中にいる。

 そして私の目の前には飛行場が広がっている。

 正確に言うと滑走路だ。更に言うと、その滑走路がどんどん近づいてくる。

 いや正確では無かった。滑走路が近づいてくるのではなくて、こっちが滑走路に向かって降下しているのだ。

『いいぞジュリエット、そのまま降下しろ』

 無線が私に呼び掛けてくる、私の名前はジュリエットじゃない。ジュリエットじゃないんだけど今は何故かそう呼ばれている。

 てか、問題はそこじゃない。

 私は今、ヘリコプターの操縦席に座っていて、

 現在進行形で滑走路に向け着陸進入中で、

 そして私はパイロットじゃないって事!

 重要だからもう一度言うわよ。今このヘリコプターの操縦席に座って、まさに飛行場へと向かっている私はパイロットなんかじゃ無いの!

 ヘリコプターに乗ったのも今日が初めてなの!

 ああっ!私、ただの女子高生なのよ~。

 なのに、なのに何で!

 何で、ヘリコプターを操縦してるの!

 何で? 何で飛行場にアプローチすることになってるの!

 ねえ、どうして?どうして、こうなっちゃったの!

『ジュリエット、高度が下がってるぞ』

 もう!何なのよ~。

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