私の短歌

蓮籠かなで

「隻眼のピヨ」

体ごと投げ出すように手を伸ばす先の菜の花あるいは虚空


「噛むものを食わなきゃ駄目だ」と言う父のいつも食べてるのは冷や奴


弟の洗濯物の畳み方 精神統一ばりの集中


「数量限定品です」内心でまあ全部そうだよなと思う


今までも勝ってきたから今回もイケると思ったけど負けた傘


「これどうぞ。美味しい水です」と渡された 水道水との区別がつかぬ


いつか見たサンタクロースとトナカイが夢か現かまだ悩み中


軒先で見上げた夜空に舞う雪が僕をピーターパンにしてくれる


何事があったわけではないけれど不意に口ついて出る「死んじゃえ」


母の日の贈り物する弟に「こいついつから……」と戦慄覚える


チョコの目が片っぽとれてる菓子パンのひよこ「隻眼のピヨ」と名付ける


これだけは譲れないから卵には三温糖をぶち込んで焼く


昨夜のキツネは今朝になり 赤黒赤 カラスの大群纏ってる


黒猫をめっちゃ威嚇す白猫を撫で繰り回す これが優越


この海で獲れた海老ですかと聞かれ いえ外国産ですと小声で


モンスターみたいに突然ポップした缶ビール轢き潰して帰る


折に触れ「薔薇」という字を書き付ける 特段役に立たないけれど


半分に切って匙ですくうなど邪道だと突き立てた爪に橙


「お父さん結構賢いやろ」と言う次の瞬間外れる答え


繰り返し昔見た夢では母が色とりどりの飴選ばせる

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