第7話 ミャーコの秘密(1)
自分が眩いばかりの光を放ったと聞いて、ミャーコは悩んでいた。
そこへ、昨日診察を受けたドクトル爺さんがやって来た。
「元気そうじゃな、ミャーコ」
「ドクトルお爺ちゃん!」
ミャーコは驚いた表情で反応する。
「ミャーコ、少し話はいいかの?」
玄関に立つドクトル爺さんは、ミャーコに質問をする。特に断る理由のないミャーコは、ドクトル爺さんの申し出を了承する。
「実はな、これからわしと一緒に村長のところに行ってもらいたい。構わんか?」
村長のところに行くと聞いて、ミャーコは少し体を強張らせた。どうも警戒をしているようである。
「そこまで警戒せんでも良い。今のお前さんを見ていると、どうやら目的は分かっておるようじゃな」
ミャーコは首を縦に振る。すると、ドクトル爺さんはミャーコに背中を見せて話を続けた。
「無理にとは言わん。だが、お前さんにとっては重要な話になるじゃろう」
思わせぶりな言葉に、ミャーコは思わず反応する。きっと行かなければ後悔するんじゃないか、そういう感覚をハーフキャットの勘が告げているようだ。
「分かりました。村長のところに行きます」
ミャーコは覚悟を決めたように答えるのだった。
ミャーコは、ドクトル爺さんに連れられて、村長の家へとやって来た。
「よく来たな、ミャーコ」
村長はにこやかな笑顔でミャーコを出迎える。
「こんにちは、村長」
ミャーコは軽くお辞儀をする。
家の中に招かれたミャーコは、客室の椅子に座る。部屋の中の装飾は、さすがに村長の家とあってかなり立派なものだ。
落ち着かない様子でしばらく待っていると、村長とドクトル爺さん、それと村で司祭を務める人間の男性のシキが入ってきた。
「シキさんまで。私に話って一体何なんでしょう」
ミャーコは思わず立ち上がって質問をしてしまう。だが、三人はミャーコを制止して、大人しく椅子に座るように言ってきた。ミャーコはそれに従い、大人しく座る。
「今日呼んだのはな、昨日の事なんだよ」
村長が話を切り出すが、村長は今も悩んでいるのだろう。頭の長い耳がさっきから、しきりに左右に揺れているのだ。それでも、意を決したようにミャーコに話し始めた。
「ミャーコ、すまない。君を村に置いておく事ができなくなるかも知れない」
「それはどういう事ですか?」
ミャーコは、ひどく驚いた。
それもそうだろう。生まれ育った村を出ていかねばならないなど、誰が簡単に受け入れられるものだろうか。
「落ち着いて下さい、ミャーコ殿」
口を挟むのは、司祭のシキだ。村だけの話であれば、彼はこの場には必要ない人物である。
「ミャーコ殿、落ち着いて私の話を聞いて下さい」
シキは、必死にミャーコを説得しようとしている。そのかいあってか、次第にミャーコは大人しくなっていった。
「取り乱しました、ごめんなさい」
素直に謝るミャーコ。
だが、ミャーコの態度に、村長たちは何やら違和感を感じているようだ。
「ふむ、やはりミャーコは普通のハーフキャットとは違うようだな」
「そのようですな」
村長たちの話が分からない。ミャーコは一体どういう事なのか尋ねてみる。
「ハーフキャットは、本来かなり気ままな気質なのじゃ。お前さんのように聞き分けのいい態度を取る者はほぼ居ないと言っても良いじゃろう」
ミャーコは驚いた。まさか自分が特殊な存在だったとは、少しも思わなかったからだ。
「そこでな、今日はお前さんにごく限られた者しか知らぬ話をしようと思うのじゃ」
ドクトル爺さんは、おもむろに村長の家の本棚から一冊の本を取り出してきた。
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