たつやゴースト
第9話
神崎達也は僕の親友だ。
小学以前からの付き合いで、
いわゆる幼馴染ってやつだ。
明るめの黒髪に、吸い込まれそうな蒼い目、
低身長の僕より遥かに高い身長。
優しく、それとは逆に明るく、明瞭な彼は、
運動神経抜群で、
賢く成績もいい。
そして顔もいいので、
女子から人気である。
もっとも、彼は彼女はいらないみたいなので、
その手の話は全部断っているようだが。
いやはや、彼が昼休憩に運動なんかしたら。
それを見る女子で一杯になりそうなほどだ。
ちなみに、声もすごい。
どこから出ているのか、悲鳴がすごく聞こえる。
「なあ、ミヤ」
「ん〜、カタカナにすると誰かわかんなくなっちゃうよ」
「でもひらがなだと読みづらくないか?」
「まあそれはそう」
ミヤ、というのは僕の
猫宮扇の、”宮”をとったようだ。
「昔は猫宮だったろ、だからちょっと変えてみた」
「なつかしーなあ、それ最初の頃でしょ?」
小学校までは、よくみゃーくんと呼ばれていた僕。
中学校では、猫宮だったり扇だったり。
「でもさ、やっぱりオウガが良くね?」
「一番本名から離れてるよ?かっこいいけどさ?」
誰だよ、オウガって。
「あ、次の授業移動教室だよな」
「理科は第一理科室だね、行こっか」
***
「扇くん、教室の席と同じ場所に座れってさ」
「そっか、ありがと!」
あ、いい感じに月見さんと席が離れちゃった。
残念だなあ…
僕と一緒の班になったのは、
女子一人に対して男子三人とかいう
男女比を考えられてない構成だったが、
教室の席順なのでしょうがないだろう。
「起立、姿勢、礼」
クラスの代議員は正直褒められないような号令をしたが、
先生は満足そうににこりと笑った。
いや、そこは怒らないといけないと思うんだけれど。
まあ、いいのかな。
先生だし。
「じゃあ今日は、実際に重力加速度を求めていきましょう」
先生が授業を始める。
キレイな先生だからか、
大体の生徒は静かに先生を見ている。
「求める方法は、さっき配布したプリントに載ってるからね」
じゃあ、スタート、と。
先生のなんとも大雑把な説明に驚きながらも、
とりあえず実験の準備をする。
まあ、前の授業で散々やり方をやったので方法はわかるが。
実際やるのと紙で見るのでは、全然違うものだ。
「へえ、タイマーを使って計測するんだ」
「いや、加速度なんだから使うわよ」
と、内田さん。
凛とした瞳に長い髪は、
美しく、様になっている。
「……って、内田さん?!ちょ、待って」
「え?どうかしたかしら」
「いや、そのものさし長すぎない?!」
「ああ、これね。一メートルものさしと書いてあったからよ」
「どう見ても三メートルはあるよ!?」
なんということか、内田さんが持っていたものさしは、
教室の床から天井まで届きそうな程長い代物だった。
どこにあるんだよそんなの…
ていうかそれ、計測できるの?
「内田さん、消しゴム落ちたよ」
「あら、ありがとう秋雨くん」
秋雨くんは、メガネをかけた内気な男子。
枯れ葉色の髪の毛に、黄金の目をした彼は、
僕がじっと見ていることに気付いたのか、
バッとそっぽを向いてしまった。
と。
話しかけられた内田さんが、
秋雨くんの方を向こうと、
こちらに背を向けようとして____
「って、待ってぇ?!」
まずい、そのままだと僕はものさしビンタをくらってしまう!
絶対的に痛いよ、そんなの!
「内田さん、そのものさし持ったまま振り向いちゃダメ!」
「もう、分かったわよ。一旦このものさしは折っておくわ」
「いや折っちゃダメだし?!」
「じゃあどうしろって言うのよ。これしかない以上、これでやるしかないでしょう」
「ま、まあそれはそうだけど…」
「じゃあ先生に攻撃してその衝撃でいい感じに折ったらどうだ」
「それも結局折ってるんじゃん?!先生も攻撃しちゃダメ!」
__波乱万丈な理科の実験となり、
僕は三メートルのものさしが当たって保健室送りとなった。
……なんて一日だよ、本当に。
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