第8話


結局はね、と彼女。


「去り猫は、去り猫という怪異は、未練たらたらの怪異なんだよ」


未練が_____たらたら。


「死にたいって言いながら、まだ現世にいようとするんだ。」


滑稽だね、と彼女は付け足した。


「去り猫はもう無くなったよ__亡くなった、かも」


「去り猫の、後遺症はあるの?」


「ん___。ちょっとなら妖術が使えるかも?くらい」


力だけ残る。


死んでも、ずっと現世に残り続ける。


「まあ、その時は抑えてやって、ねここ」


「……うん。」


隣で寝息を立てている少年、扇くんを指差して。


彼女は、


「きっと、まだあるよ。物語はまだまだ続くんだから___」


にこりと笑って、


こちらを見た。



これで、私の人生一片の物語。


そのひとつが、おしまい、おしまい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る