第2話 裏切り(安定)
小説でよく読んだ夢だった異世界転生2日目、しかもダンジョン探索が始まるというのにテンションが全く上がらない。
当たり前だ、転生してもらえるのが強いのか弱いのか分からないスキルとか絶対に強いスキルじゃなくて絶対に弱い「荷物持ち」
どうせならスキルも進化するような世界観だったら良かったけどそれもない。
昨日、部屋でスキルを乱発したけどなにもなかった。
希望も喜びもない。
そんなの関係なく王様が大きい声で告げる。
「では早速4人組でパーティーを組んでもらう。今後はその4人でダンジョンに潜るように、私は至急の用があるのでな」
王様は衛兵に耳打ちして城に戻っていった。
後ろから
「おい「荷物持ち」俺らのパーティー来いよ」
そう言ってきたのは既に偉そうな剣聖様とその一行だった。
そんな「荷物持ち」もあだ名と化してきている事に馴れてきている。
「分かったよ、それに僕みたいなのは他のパーティーにはいくら願ったって入れないだろうし」
自虐的にそう言ったが
「なんだ、よく分かってんじゃん」
そう言って3人で笑っていた。
ここから数年間、こいつらに良いように使われて使い捨てのようにポイ捨てされる。
そんな想像が軽く出来てしまう。
そう考えてた矢先だった。
背中からなにかが貫通した。
冷たくて硬い感触が気持ち悪い。
3人は相変わらず笑っている。
もちろん刺したのは
「まぁ落ち着けよ、どうせ
「良かったじゃん、運が良かったら元の世界に帰れるぜ!!」
山田は笑いを堪えながら僕を見下して苛つく笑顔で話し始めた。
「おれも転生系のアニメ見てんだよね、それでこのあとお前みたいな
そう言いながらもう一回、背中から刺してきた。
もうお腹や背中は感覚がない。
きっと
もう自分でも分からなくなってきてる。
音はもう聞こえない。
土で光が見えなくなる。
転生系のアニメだってリアタイで観てたのにここまでみたいだ。
不意に背中の土も無くなった。
死んでいくってこんな感覚かと目を閉じようとした。
けど違った。
落ちていた。
ある意味では遥か上空から。
どうやら本当に運がいいのか悪いのか穴とダンジョンは薄壁一枚で遮られてただけだったようだ。
体は重力に従って落ちていた。
ダンジョンの中は螺旋状になっていて下に行けば行くだけ敵が強くなるようだ。
ドラゴンやゴブリン、走る卵を横目に縦穴の真ん中を落ちていく。
ダンジョンの底に落ちて終わり。
運良く生き残れたとしても一番下は一番強いラスボスみたいなのが居るんだろう。
それよりも地面に叩き着けられて原型もなくなるのが容易に脳裏に浮かぶ。
どのみち現実離れした終わり方だ。
ゲスい奴らに隠蔽されて殺されるよりはマシな死に方かもしれない。
乾いた笑いさえ出ない。
最下層だろう底のような土が見えた。
着地の瞬間やけくそで転生最後で最初のスキルを発動した。
〈荷物持ち〉
自分の中の魔力が削られるのが分かる。
きっと端から見たらおかしな現象だっただろう。
ふわりと着地した。
「荷物持ち」の荷物欄は1個埋まってる。
どうやら最後にもそんなことを見れる余裕はあるのかそれとも痛すぎて麻痺しているのかお腹も背中もボロボロ穴も開いてて死にかけなのに、だ。
ちょっとの間、考える。
…空気とれた
すごい、なにこれ
よく考えたけど本当にこれなんだ?!
空欄が埋まった、てことは入ってるのはなんだ?!
とりあえず出すか…
と空中に向かって手の平を向けてそのアイテムを解放した。
と同時にお腹に穴が空いてることを思い出した。
なにか大切な物がずるりと落ちる感覚さえする。
ズキズキと痛むどころか意識が遠のいていく。
その後は何が起きたよく分からない。
起きてから分かったことは2つもある。
なんの影響かは分からない。
傷が直っていた。
まだ痛むから完璧にとは言わなくても塞がっているし充分だ。
もう1つはダンジョンの一部が隕石でもぶつけた様に抉れていた。
というよりは貫通していた。
横穴が出来ていた。
それはテンプレ過ぎるでしょ?!! 某凡人 @0729kinoko
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